溶けて、溶ける。
春色の雪解け。
序章 向坂唯斗の人間論
必要とされる人間と、必要とされない人間。
世の中の人間は二通りに分けられる。
この場合自分は間違いなく後者であって、誰かに求められている、なんてあまったるい妄想は夢見ることすら叶わない。
第一、根暗と自己否定を極限まで拗らせたような性格をしている人間が、誰かと関わりを持つこと自体ありはしないのだ。
高校生になった今でもそれは変わることはなく、幼い頃からの習慣にならって相変わらず幸薄そうな顔でのうのうと生きている。
目元を隠すように伸びた前髪と、裏切られても傷つかないように心を閉ざす鉄壁の精神。
くだらないことこのうえない。
それでも、誰かこの退屈と苦痛に溢れた人生をぶち壊してくれはしないかと、俺はまだ夢見ている。
そんなこと、ありはしないとわかっているのに。
いつか誰かと共にいる未来を、まだきっと。
諦めきれていないんだ。
溶けて、溶ける。 春色の雪解け。 @Haruiro143
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