星夜炎上
月見 夕
田舎の焚き火はよく燃える
あたし、田舎って本当嫌い。
闇夜に煌々と燃え盛る火柱と化したそれを前に、改めてそう思う。
田舎は何も無い。遊ぶところもゲーセンもスタバも、青春を形作るものは大体全部ショッピングモールにしかない。
田舎は働き口がない。全国規模の巨大資本を前に、商店街は軒並み淘汰された。この辺で賑わってんのは場末のパチ屋とショッピングモールだけだ。
田舎は噂が出回るのが早い。日常にスパイスの効いたイベントなんて何も無いから、一番の娯楽は他人の挙動だ。暇さえあればフードコートで共有されている「どこどこさん家の誰それに彼氏できた」だのは、地元じゃワイドショー並の認知度を誇る。
いい迷惑だ、本当に。
「危ないから離れて!」と叫ぶ消防士の言葉にやけに現実味を感じなくて、その背景で燃える外壁をぼんやりと眺めた。いま、靴屋の黄色い看板が燃え落ちたとこ。
流れてくる真っ黒い煙に顔を顰めて、それでもあたしは目を逸らさなかった。
田舎は嫌だって言った。ショッピングモールに娯楽も経済も全振りの地元が嫌いだって、確かに言ったよ、あたし。
でもさ――誰が燃やせっつったよ。
轟々と音を立てて燃える、地元で唯一の巨大ショッピングモールを見上げて。もうヤケクソで甦れとすら思った。灰から生まれる不死鳥のように。
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