夏休み

アキノリ@pokkey11.1

愛している

貴方は幸せになって下さい。

i love you

20年前の友山桜という少女。

俺の幼馴染の少女はとにかく学校一の美少女だった。


肩までの黒い髪の毛で泣きぼくろ。

幼馴染の大好きだった女の子だった。

本当に物凄く可愛かったと思う。


代わりに俺は桜が好きだった何処にでも居る平凡な男子生徒。

県立高校3年生の油画宏太(ゆがこうた)という。

でもあくまで俺が惹かれたのは美少女とかそこじゃない。

お淑やかな性格で常に柔和な笑顔の絶えない少女で図書室好き。

だから好きだった。


俺はその姿を見るのが好きで桜の居る図書室に別クラスだったから高校に入学したての頃、放課後に会いに行くのが本当に好きだった。

だが桜はもう居ない。

トラックに跳ねられて事故死したから。


だけど桜は今、霊になってこの図書館にいる。

高校1年生の姿のまま成仏しきれずに、であるが。

何故桜がこの場所に居るのかは分からないと桜も言っている。


他の人にも桜は見えない様だ。

俺以外は。

そんな桜に驚きながら会い続けて進級して春夏秋冬巡り2年と3年。

ずっと毎日欠かさずに桜が亡くなっても図書室に通い続ける。

それから人目を気にしながらだったが霊になっている桜と話していた。


『有難うね。宏太。.....ねえ』

「何だ?桜」

『もう3年目の八月だね』

「そうだな。大学の受験勉強もしててさ.....俺、臨床心理の道に進むよ」

『.....!.....そうなんだね。頑張ってほしいな』


今日は8月である夏休みだが勝手に図書室に入った。

鍵を掛けて霊の桜と話している。

俺が桜と一緒に居れるのは.....残り6ヶ月ちょいだ。


来年で卒業するのだ。

それを過ぎれば俺は部外者。

普通ならこの場所に入れないと思う。


因みに桜だが。

謎の呪縛で図書室から出れない。

彼女にとっては図書室しか居れない様だった。


俺はその事に少しだけショックだったが。

まあそれも運命か、と諦めていた。

すると.....そう考えていると一緒に本を眺めていたのだが。

桜が泣き始めた。


『寂しいなぁ.....半年後には一緒に居れなくなるの』

「.....泣くなよ。頼む.....俺も泣いてしまう。悲しいよ」

『悲しいって言ってくれるんだね。有難うね。あ。そうだ。宏太。この半年で1つだけ願いを叶えてほしいの』

「.....願い?」


キョトンとする俺。

その願いはね、えっと、とモジモジする桜。

俺は「?」を浮かべながら桜を見る。

そして桜は見上げてくる。

潤んだ瞳で。


『私。最後に成仏したいんだ。この3年間頑張ってきてくれた分の恩返し。成仏して.....来年の卒業までに天国に行きたんだ』

「.....桜.....冗談だろ。居れば良いじゃ無いか。この場所に」

『そういう訳にもいかないでしょ?.....きっと何かあるんだよ。私がこの場所に居るの。きっと悪い意味でね。私は死人。だから成仏して生まれ変わりたい』


俺は目に涙を浮かばせる。

それから俺は歯を食いしばる。

実はそんなに時間も無いかもだけどね、と切り出す桜。

俺はまた「?」を浮かべながら桜を見る。

桜は、私の体.....段々薄くなってきているから、と話した。


『多分来年まで保たない』

「.....桜。俺は.....お前が居なくなったら嫌なんだが。話し相手も居なくなる」

『大丈夫だよ。宏太。私はもう死人だけど。.....貴方が好きになった相手との間に生まれてくるよ。だから宏太。私に執着して恋人を作らないなんて言わないでね』

「そんなの無理に決まっているだろ。俺は」


俺はお前が好きだ、とは言い出せなかった。

それを言ってしまうと傷付ける恐れも感じたから。

そう思いながら必死に飲み込み。

そして桜を見る。

桜は「?」を浮かべて首を傾げていた。


「聞いても驚かないか」

『うん。どうしたの?』

「どうせ消えてしまうんなら俺の最後の気持ちを伝えたい」


俺はガタンと椅子を立ってから桜の肩を抱いた。

それからこんな事をして良いのか分からないが桜にキスをする。

桜は「!!!!!」と浮かべて涙を浮かべた。

そして泣き始める。


『宏太.....』

「俺はお前が好き。大好きだ。世界で一番好きだ」

『.....そんな告白されたら私は.....どうしたら.....良いの?もう私、成仏したく無くなるじゃん』

「ははは」


そして俺は笑ってから真っ赤になっている桜を見る。

すると桜は、私も好きだよ。.....君が、と告げてきた。

俺は予想外の言葉に真っ赤になる。

え!?、と思いながら。


『中学時代から好きでした。大好きでした』

「.....桜.....嘘だろ.....?」

『嘘で告白なんかしないよ。女の子は。.....大好きだったよ。宏太』


すると.....いきなり桜の体が光り始めた。

俺は、え?、と思いながら桜を見る。

その様子に驚きながらも桜は、ああ。そうか、と反応した。

それから俺に涙を流しながら笑みを浮かべる。


『これが願い事だったんだ。成仏の魔法だったんだ。私が.....何で図書室で待っていたのか.....』

「さ、桜。嘘だろ。成仏するなよ!!!!!俺を残して.....そんなの!」

『駄目だよ。宏太。貴方は私を忘れて幸せになって。.....大好きだよ。宏太』


そしてそれが桜の最後の言葉になった。

笑顔となった。

魂はその場から消え。


天にうっすら登って行った桜。

それを見送りながら俺は所構わず絶叫した。

桜!!!!!、と。

叫ばずに居られなかった.....。



あれから20年近く経過した。

俺は図書室を高校のオープンスクールで見学する彼女を見る。

彼女の名前は油画サクラ(ゆがさくら)という。


大切な俺の娘だ。

そして笑顔で、パパ。こっちは?、と聞いてくる。

俺は、ああ。それはな、と説明しながら。

図書室を見渡す。


あの日。

桜と一緒に話していた事は今の嫁にも話した。

そしてサクラという名前を付けようって事になったのだ。


「パパ?」

「.....あ?.....ああ。すまないな」

「もー。しっかりして」


娘から怒られた。

俺は慌てて引っ張って行くサクラを見る。

そして俺は本棚を見渡す。

相変わらずだな。

配置が変わってない。


「.....あの夏の日のままか」


俺は思いながら居ると。

本棚の奥から栞が出てきた。

俺は何気にそれを見ると.....それは。

それは。


「.....これ.....桜の文字?」


しわくちゃの栞。

愕然としながら本のタイトルを見る。

本のタイトル。


それは、手に届かない相手の男性をどう幸せに出来るか、というタイトルだった。

俺はその事に。

涙が止まらなくなった。


桜はずっと考えて。

俺を待っていてくれたんだなって。

涙が止まらなかった。


「パパ.....?」

「ああ。ゴメンな。ちょっと思い出して涙が出た。.....もう大丈夫だ。サクラ」


そうだ。

俺はもう大丈夫だ。

お前がくれたんだから。


この大切な娘も。

そして家族も。

そして.....この空間も。

ロスになるのを防いでくれたって信じている。


有難う桜。

俺がもし家族より先に死んだら。

お前に真っ先に挨拶をするからな。

それまで歳を取るまで。

待っていてくれ。


Fin

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