第23話 キメラの長
ハルト達が入った商会の中は、ハルトが想像しているよりも静かな空間だった。
もっと職員が慌ただしく仕事をしているイメージだったが、意外にそうでもない。
窓口には人が少し並んでいるが、1つだけ空いている窓口があったのでハルト達はそこへ歩いた。
「すみません、グローリア王国のとある商人から手紙を預かってまして…」
セミロングの女性が対応する。耳が尖っていたので恐らくエルフ族だろう。
「当商会宛ての手紙ですね!お預かりします〜」
ハルトはエルフの女性に手紙を渡した後、アイテムボックスからミーシャが倒したグリフォンの魔石、羽根を出した。
「──これ、ここで売れたりしないですか?」
その素材を見た女性は声を上げて驚いた。
「グ、グリフォンの素材ですか?…えーと、冒険者カードはお持ちでしょうか?」
冒険者ギルドには入ったこともないので、カードは持っていない。
さらに魔物の素材の買取は冒険者ギルドでやっているらしく、そっちのほうが多少いい値がつくそうだ。
エルフの声を聞いた瞬間、窓口の奥から40代後半だろう髭を生やした男が出てきた。
服装が他の職員とは明らかに違うので、会長などであろう。
「──お、お前、グリフォンと言ったのか?お前が討伐したのか…?」
その男がエルフの女性と受付を交代して、ハルト討伐したのかと訊いてきた。
「ええ、人が襲われていましたから」
「…冗談だろ?こんな奴にグリフォンが倒せる訳…」
リリからしてもグリフォンなどは雑魚も同然だか、普通の冒険者からするとかなり凶暴で単独討伐はAランク相当だという。
「──ま、まあいい。倒した証拠はちゃんとここにあるからな…」
素材を確認したのちにその男はハルトたちに向き直り、名乗った。
「すまない、名乗りが遅れてしまった。俺はマーティス・ヴァシルだ。ここの商会の会長をやっている」
やはりヴァシル商会の会長だったようだ。他の者とは一風変わった雰囲気を放っている。ひとつひとつのその動作に気品が感じられる。
「じゃあ君たちに、その実力を見込んで頼みたい事があるんだが…いいか?」
「…聞きましょう?」
「──ここ最近、“キングキメラ”っていうヤバい魔物が鉱山付近に住み着いてな…」
その名前を聞いたリリはほぅ、と息を漏らす。出会ったことがあるのだろうか。
男が冷や汗を額に浮かべながら、真剣な表情でハルト達に説明する。
「このままでは近寄れなくて採掘できないんだ…なんとかキングキメラを討伐してくれないか?もちろん望む報酬は用意する!」
キメラは知っている。ライオンの頭、蛇の尾、山羊の胴をもち、口から火を吐くというギリシャ神話の獣である。
さらにキングというのはどんなサイズなのだろうか。
報酬としてミーシャの故郷の手掛かりを聞けるかもしれないのでハルトはその依頼を受ける事にした。
「分かりました、受けましょう。ちなみに”キングキメラ”というのはどのような魔物なのですか?」
ハルトの居た世界とこの世界でのキメラは全く違うかもしれないので、一応聞いておく。
「――あ、ああ。奴を見たものは誰も帰ってこないから報告は少ないのだが、獅子の頭を持ち様々な動物の体をしているというキメラの長だ」
断られて当然、と思っていたがあっさりと快諾されきょとんとするヴァシルさん。
おおよそハルトの世界と解釈は同じであったようだ。
「そういえば先ほど、冒険者カードを持っていないと言っていたな。その実力では何とも珍しいが、私がギルドに推薦状を出そう」
ヴァシルさんが言うには、Aランクになるには最低でも5年冒険者を続ける条件があるらしく、推薦状があれば特例でAランクから始めることが出来るかも知れないそうだ。
さらに冒険者ランクが上がると様々な恩恵が受けられるらしく、素材の買取価格が上がったり、お食事券が貰えたりするそうだ。
なんとも冒険者に優しい社会だ。
「わかりました。では行ってまいります、素材か何かを持ち帰れば良いですか?」
「ああ、命が一番大事だ。ヤバかったらすぐに
今のステータスで勝てない魔物は探すほうが難しいだろうが、肝に銘じておこう。
ハルトたち御一行はヴァシル商会を後にし、件の鉱山へと出向いた。
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ご愛読ありがとうございます!
お久しぶりです。。。
読みなおして色々と気になったので修正してみました!
これからはゆっくりと更新していきたいなと思いますm(__)m
これからもこの作品をよろしくお願いいたします!
では!
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