最強のゲーマーはその座をだれにも渡さない

ねこくま

第1話 最強のゲーマー

「白、スタンスキルあと三秒でクール上がる」

「わかりました。黒に任せます」

 

五分間のバトルで、相手チームと、ステージ上に配置された3つの拠点を奪い合い、最終的に制圧した拠点の多かったチームが勝利となる。陣取りバトルゲーム。

 フルダイブプレイヤームーブメントアナリシスゲーム、巷ではピーマグと呼ばれるゲームの大会。

 その最高峰を決める試合が行われていた。


「そっちに敵飛ばす!」

「わかりました。サポートは任せます黒」

 『白』と『黒』。

 その二人のプレイングに会場は圧倒されていた。


「オイッ、今何が起こった!?」

「知るか! 深く考えてる時間ない! 目の前に集中しろ!」


 二人は戦慄してた。

 トッププレイヤーの高すぎる壁に。

 なんとなく、戦ってみればいい勝負出来るだとか。

 あわよくば勝てるんじじゃないかとか。

 しかし、そんな考えは一掃された。

 白黒無情。その無情の一端に今触れている。


「うっそだろおい、なんだよあの動きどうなあってんだよ!」

 目の前を黒い稲妻が走り抜ける。

 もちろん。実際に稲妻が走っているわけじゃなく、黒が使っているキャラの黒いスキンが、残像となってそう見えているに過ぎない。

 しかし、頭でわかっていても対応ができない。


「おいおいマジかよッ」

 相方の断末魔と共に体力が消し飛ぶ。

 ここまで来ると恐怖が逆に笑えてくる。

 間違いなくこの二人は最強だ、天才だ。敵うわけない。

 頭が勝手に判断してしまう。

 そんな中、走馬灯のように思い出した話が合った。

 白黒無情と当たったら、運が悪かったとあきらめろ。

 なぜなら、あいつらは正真正銘バケモノなのだから。

 だからこそ思ってしまった。

 勝てるわけない、こんなバケモノ。

 伝説は、本当だったんだと。


伝説とは、事実として人々が言い伝える話。


 それは、ゲームのキャラの強さの象徴として。

 あるいは、神が使っていた武器として。

 またあるいは、この世界にいない。異形の姿のものに。


 もう一度言おう。

 伝説とは、事実として人々が言い伝える話である。

 なのに、人々は空想の中で伝説という言葉を使う。

 もしかしたら、そんなことはないのかもしれないが。

 だがあえて言おう、空想の産物であると。

 対人フルダイブゲームで、伝説のゲーマーの話がある。

 そのゲームをやっているプレイヤーで語られていた伝説。

 

一、一心同体を体現しているプレイング。

二、相手に勝てる希望すら持たせないプレイングから『白黒無情』と呼ばれている。

三、勝率驚異の九割。

四、寧ろ当たったら幸運であると。

エトセトラ。


しかし、最初に言ったようにこれは、伝説。

 誰かがおもしろくあってほしいと、考ええた空想の産物かもしれない。

 多くのプレイヤーは詳細を忘れ、数少ない二人と関わったプレイヤーだけは忘れない。

 そんな伝説。

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