闇から月へ、星を照らす。

u03u

第1話

◇星のような君◇



私は、この屋上から飛び降りた__。


私はつまらない日々を生きてきた。

例えるなら、闇だ。

貴方たちのような星や月を輝かせるための、暗闇。

今日も貴方たちを輝かせるために、目立たないように生きて貴方たちを輝かせる。


今日から高校生活が始まる。

どうにか闇を抜け出したい。

まあ、どうせ半年後には死ぬけど。


あぁ、自己紹介からやらかした。

結局私は闇を抜け出すことはできない。


ある日突然、君は現れた。

月に照らされた夜桜と共に輝いているような、星のような君。

私は君を照らし一番星にしたい。

君を照らす月になりたい。


屋上から校庭を見下ろす。

野球部の君は、部活が終わってからも一人自主練を続ける。

君が体育倉庫の壁にぶつけるボールは、リズム良く跳ねてその音が校庭中に鳴り響く。

あぁ、やっぱり君は美しい。

近くにいるのに届かない星のような君は、まだ輝きが少し足りなくて、でもどこか力強さある君を、私がもっと君を輝かせたい。


どうせ、あと半年の命だ。

病気なんかで死ぬのは嫌だ。

なんて闇のくせして変なプライドもってるけど。

今世で関わった人とは来世でも関わる、なんて言うでしょ。

だから私は今、君と来世でも巡り逢うために君の目の前で死にたい。

なんて考えていたら、先に身体は動いていたようで。

私は、この屋上から飛び降りた。











◇新たな世界◇



僕の周りには太陽のような人で溢れている。

でも僕は全てにおいて自信が無い。

なぜなら前世がそうだったから。

病弱で特技などなくて、臆病で友達などいなかった。

前世は確か女だったが、今世は男みたいだ。

でも今世は少し違う気がする。

闇の中にいるようだけど、太陽たちが僕を照らしてくれる。

僕は月になれたのかもしれない。

たしか僕は前世で大切な人がいた、一方的にだが。











◇君にまた出会う◇



「会いたかった!」

僕は生まれ変わった君を偶然みつけて、思わず叫んだ。

『君は、一度俺の目の前で死んだことがあるか?』

僕は驚いた。

会いたかった、なんて言ったが相手は僕のことを知るはずがないと思っていた。

そもそも彼だって、生まれ変わっている。

僕は一方的に彼を知っていて、雰囲気とかでなんとなくわかったものの、なんで彼が僕のことを知っているのか、不思議でしかない。

「僕のこと、わかるのか?」

『あぁ、前世で高校時代に俺の目の前で一人の女子が屋上から飛び降りた。それは俺が一目惚れして片思いをしていた子で、正直衝撃と悲しみでその後は少しの間気が抜けていた。それである日、俺は交通事故にあった。ずっと上の空で、赤信号に気づかずに道路に飛び出した。今世で生まれ変わって、ほとんど前世と変わらない生活をしてた。勉強して、野球して。それである日ふと思った。また同じ高校に行けば、君に会えるんじゃないか、って。そしたらほんとに会えた。』

彼も前世の記憶があったなんて。

しかも僕のことを知っていたなんて、思ってもいなかった。

「君は前世と変わらず星みたいだね。」

『星?』

君は少し笑いながら尋ねてくる。

「そう、星。輝いてるけど、でも少し輝きが足りなくて、一番星にはなれないって感じの。僕思ってたんだ、死ぬ前に。また来世で君に出会って、月になって君を照らしたい。君を一番星にしたいって。」

『なんか、嬉しいな。そんな風に思ってくれてて。』

「でも、もう君は一番星だ。今世では自力で一番星になったんだね。すごく輝いて見える。今世の君をなにか知ってる訳じゃないから、あんまり説得力とかはないと思うけど。だからもう、君に僕は必要ない。」

どこか悲しみに包まれた僕は、またあの屋上に向かう。

役目が無くなった僕は校庭に背を向けて、またこの屋上から飛び降りた。

すると君は、落ちた僕の身体を拾うように、僕の右腕を必死に掴む。

『なんでまた俺の前で死ぬんだ。せっかくまた会えたのになんで死のうとするんだよ。』

君は僕を引き上げる。

「ごめ、なさい、でも、もう僕は、必要ないから。」

『必要だよ、俺はお前が必要だ。勝手に決めつけんな。言っただろ、お前が死んでから俺はいつも上の空で、お前が死んだせいで俺も死んだの。だからもう、自分から死ぬなんてやめてくれ。俺の生きる意味がなくなる。』

「ごめん、そっか。ありがと、そんな風に言ってくれて。すごい嬉しいよ。」

『俺はお前が男になってもまだお前のことが好きだ。』

「僕も、僕も好きだよ。前世の時もずっと好きで、いつも屋上から君を見てた。今世は男として生まれたけど、僕もまだ君が好きだ。」


性別なんて関係ない。

男になった今も、僕は君が好きだ。

僕の生きる意味は、君だけだ。


闇から月になった今、僕は僕にとって一番星の君を照らし続ける。

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