第二回【唐揚げ】
【
飯塚「……」
三ツ星「三ツ星&飯塚の~?……ほらほら、飯塚も一緒に言ってよ!」
飯塚「お前なぁ……人んちに来て何かやってると思ったら、また料理番組ごっこかよ。自分ちでやれっつうの」
三ツ星「えぇ~! そんな寂しいこと言わないでよぉ……。前回言ったじゃん『次回もまたやるからよろしくね』って」
飯塚「……そんな言い方だったか?」
三ツ星「細かいことは気にしない気にしなーい♪ ってことで、もっかいタイトルコール行くよー?」
飯塚「はぁ……もう好きにしてくれ」
三ツ星「せーの!」
三ツ星・飯塚「三ツ星&飯塚の~? ドタバタクッキング~!」
三ツ星「イェーイ! やっぱこうでなくっちゃね♪」
飯塚「俺はまったくテンション上がんねーけどな……」
三ツ星「テンション低いなー飯塚は。もうちょっと上げてかないとダメだぞー?」
飯塚「お前のせいだろ……」
三ツ星「でも大丈夫! 今回の料理はそんな飯塚のテンションも爆上げ間違いなしだから!」
飯塚「へぇ……何作るんだ?」
三ツ星「ふっふーん、よくぞ聞いてくれました! 第二回のテーマはこちら! 唐揚げです!」
飯塚「おお、揚げ物か。それなら確かにテンション上がるかもな」
三ツ星「そう! テンション上げ上げ唐揚げちゃんだよ!」
飯塚「テンション上げ上げ唐揚げちゃん……」
三ツ星「さあ早速エプロンを着けて、レーッツクッキン!」
飯塚「やっぱフリフリなのな……。次からは自分のを用意しよう……」
三ツ星「えっ、そんな!」
飯塚「なんだよ、なんか文句あるか?」
三ツ星「次って言った! 今、次って言ったよね飯塚!?」
飯塚「うげっ、しまった……」
三ツ星「いやぁん嬉しい~♪ そんなにあたしのこと考えてくれてたなんてぇ~!」
飯塚「ちげーよバカ! ああもう、とっとと始めんぞ!」
三ツ星「はーい! じゃあまずは材料の紹介です!」
飯塚「材料って言っても、肉と調味料くらいだろ?」
三ツ星「ハッ……! なぜそれを知っている!?」
飯塚「逆になんで知らないと思ったんだよ!? 普通分かるだろうがこのくらいの材料なら!」
三ツ星「馬鹿な……飯塚が鋭いだと……? さては貴様、偽物だな!?」
飯塚「本物だよアホ! 偽物が居て堪るか!」
三ツ星「それでは、材料の紹介行きまーす! まずは鶏肉!」
飯塚「唐揚げと言ったら、鶏モモ肉だよな」
三ツ星「そうそう! 桃色のお肉!」
飯塚「モモ肉ってそういう意味じゃないからな!? つーか、それだとほとんどの肉がモモ肉ってことになんぞ!」
三ツ星「え、そうなの? ピンクじゃないの……?」
飯塚「当たり前だろ! お前の脳内ピンク色かよ!」
三ツ星「やだぁ、飯塚ってばえっちなんだからぁ~!」
飯塚「やめろやめろ! そんな目で見るな! 俺はそういう意味で言ったんじゃないからな!?」
三ツ星「え~、ほんとでござるかぁ~?」
飯塚「くっそムカつくなオイ!」
三ツ星「はーい、続き行きますよー。続いて生姜でーす!」
飯塚「お、おう。チューブとかじゃなくて、すりおろしで入れるのか」
三ツ星「イエス! 生のすりおろした方が香りが出るからね!」
飯塚「なるほどな。生姜の香りって食欲そそるよなー。あ、でも入れすぎるなよ? 入れ過ぎると辛くなるからな」
三ツ星「生姜のスパイシーアタック! 略してSSAだね!」
飯塚「なんで略した!? だいたい生姜はジンジャーなんだからGSAだろ!」
三ツ星「おぉ~」
飯塚「感心してんじゃねーよ!」
三ツ星「さあ、どんどんいくよ! 次にソイソース!」
飯塚「そ……ああ、醤油のことな。ジンジャーに引っ張られて変な勘違いしちまったぜ……」
三ツ星「そして最後は片栗粉! バラエティー番組なんかで大量に消費されているアレです!」
飯塚「いや言い方! まあ間違ってはねーけど!」
三ツ星「以上で材料紹介終わります! では調理開始と行きましょうか!」
飯塚「へいへい、分かりましたよ……」
三ツ星「まずは鶏肉から! こちら、室温に戻しておくと良い感じになります」
飯塚「へぇ、そうなのか。なんでだ?」
三ツ星「それは鶏の気持ちになって考えれば分かります!」
飯塚「鶏の気持ち?」
三ツ星「そうです! さあ、想像してみてください。冷たいケージに閉じ込められて、ずーっと放置されてる可哀想な鶏を……」
飯塚「おい、いきなり重い話になったぞ……」
三ツ星「するとどうでしょう! 何だかとっても悲しくなってきませんか!?」
飯塚「悲しいっつーか、切なくなるな……。で、それが室温に戻しておく理由とどう繋がるんだ?」
三ツ星「え? 別に関係ないよ? ただ火を通しやすくするためだけど」
飯塚「お前なあ……。一瞬、真剣に聞いちまったじゃねえかよ……。この切なさはどうすりゃいいんだ……」
三ツ星「あ、じゃあ切るのやってよ! その切なさを包丁に乗せて断ち切るんだ!」
飯塚「断ち切んの鶏肉じゃねーか……。余計辛いわ……」
三ツ星「まーまー、やってみてよ! 飯塚の腕が本物かどうか、あたしが見極めてあげるからさ!」
飯塚「誰目線だよお前は……ったく、しょうがねえな……」
三ツ星「おおっと、ここで飯塚選手、見事な手さばきを披露しております! お見事ですねぇ~!」
飯塚「誰が解説しろっつったよ!? お前は黙って見てろ!」
三ツ星「はいはーい。だいたい一口大に切れたら、下味を付けまーす。ささ……殿、こちらのポリ袋にどうぞお納めください……」
飯塚「うむ、苦しゅうない」
三ツ星「ありがたき幸せ……」
飯塚「なんだこの茶番は……。いつの時代だよ……」
三ツ星「これに、醤油とすりおろした生姜を入れて混ぜ合わせまーす! もみもみタイム、スタートです!」
飯塚「ポリ袋の上から揉むんだな」
三ツ星「そう……しっかり揉み込んで……。情熱的に、激しく……! あぁんっ……」
飯塚「鶏肉だからな!? いかがわしく聞こえるような言い回しすんなよ!?」
三ツ星「はい、馴染んだらそのまま十五分くらい置いておきまーす」
飯塚「冷蔵庫とかには入れなくて良いのか?」
三ツ星「えぇっ!? あんな冷たい監獄に閉じ込めるつもりなの!?」
飯塚「そこまで言うのかよ!?」
三ツ星「そんな酷いことを考えるなんて……飯塚、見損なったよ……。仕方ない、こうなったら実力行使だ……!」
飯塚「ちょ、待てお前、何するつもり……ぎゃーっ!!」
【しばらくお待ちください】
三ツ星「さーて、十五分経ったので次の工程に進みたいと思います!」
飯塚「あぁ~……首が、首が冷える……」
三ツ星「どう? 濡らしたタオル、気持ち良いでしょ~! 揚げ物をする時は首に巻くといいんです!」
飯塚「だったら普通に渡せよ……急に押さえつけやがって……」
三ツ星「だって、こうでもしないと逃げちゃうじゃん?」
飯塚「俺は野生動物か何かか!」
三ツ星「ほら、さっさと行くよー! 次はいよいよ衣を付けていきます!」
飯塚「へいへい……片栗粉を付けるんだよな。ポリ袋だと手が汚れなくて良いなこれ」
三ツ星「でしょ? 手を汚さずとも、こうして事を成せるのです!」
飯塚「表現が物騒だぞオイ……」
三ツ星「ちなみに今回は片栗粉だけでやりますが、小麦粉を混ぜてもOKです! あたしは心が広いので許可します!」
飯塚「お前の許可は要らん!」
三ツ星「この間に、フライパンに油を入れて温めておきます! 温度は170度くらいでいいかな」
飯塚「……よし、こっちは終わったぞ。あとは揚げるだけだな」
三ツ星「では揚げていきましょー! レッツ揚げ上げターイム!」
飯塚「おい、あんまりはしゃぐなよ? 油が跳ねるかもしれないし……」
三ツ星「大丈夫大丈夫! あたしにまっかせなさーい! さあ飯塚、あたしの前に立って! 油からあたしを守って!」
飯塚「人を盾扱いすんな! はぁ……まったく……。そっと入れれば大丈夫だろ、ほら」
三ツ星「おぉ~……さすが飯塚、油の使い手!」
飯塚「なんか嫌な異名だなそれ……俺が脂ぎってるみたいじゃねえか」
三ツ星「違うの?」
飯塚「違ぇよ!」
三ツ星「あっ、お肉を入れたら火を強めてくださーい! あ、強すぎちゃダメだよ?」
飯塚「はいはい、分かったよ……」
三ツ星「今回は二度揚げするので、三分くらい経ったら一度上げてくださいねー? そして五分くらい休めるのです!」
飯塚「了解っと。にしても、唐揚げって意外と手間かかるもんなんだな……」
三ツ星「そりゃあそうだよー。油という脅威と戦いながら、最高の状態に仕上げなきゃいけないんだから! これが結構大変なのです!」
飯塚「俺を盾にしといてよく言うなお前……」
【数分後】
三ツ星「さてさて、二回目を高温で揚げたら出来上がりです! 油を切ってお皿に盛り付けましょう!」
飯塚「おーし……めちゃくちゃ良い匂いするな……」
三ツ星「当然だよ! なんてったって、このあたしが作ったんだからね!」
飯塚「材料紹介くらいしかしてないけどな」
三ツ星「それは言わないお約束だよ飯塚さんや」
飯塚「お前とはもう長い付き合いだが、未だにお前のテンションが分からん時があるわ……」
三ツ星「まあまあ、お待ちかねの実食タイムですよ! 飯塚、準備はよろしいかな!?」
飯塚「なんで武士口調なんだよ……。まあ、もう良いか……食ってみようぜ」
三ツ星「それでは、いっただっきまーす!……う~ん、美味し~い!」
飯塚「おお、マジで美味いなこれ! 外はカリッと、中はジューシーで最高だ!」
三ツ星「ぷぷっ……ありきたりな感想乙でーす」
飯塚「うっせえな……こういう素直な感想が一番だろうが」
三ツ星「はーい、飯塚のベタな感想が出たところで……また次回! チャンネル登録もよろしくねー!」
飯塚「……なあ、これマジで撮ってんのか?」
三ツ星「まったね~!」
飯塚「ちょっ、せめて答えろよ! おーい!」
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