三ツ星クッキング☆チャンネル
夜桜くらは
第一回【オムレツ】
【キッチンにて】
飯塚「……おい」
三ツ星「さーて始まりました、ドタバタクッキング! 記念すべき第一回は……」
飯塚「待て、三ツ星。なんなんだこれは?」
三ツ星「何って、タイトルコールだよ飯塚ぁ! 料理系ユーチューバーとして、これは外せないでしょ!?」
飯塚「いや、聞いてんのはそこじゃねえよ……。この状況をちゃんと説明してくれ……」
三ツ星「え、見ての通りだけど?」
飯塚「だからなんでお前が俺んちでこんなことしてんのかを聞いてるんだよ! つーかお前がユーチューバー目指してること自体初耳だわ!!」
三ツ星「あれ、言ってなかったっけ? ごめんごめん、うっとりしてた!」
飯塚「それを言うならうっかりだろ! 何に見とれてんだよ……」
三ツ星「ボウルに映った自分に?」
飯塚「やかましいわ! そんなの見飽きるくらい見てるだろうが!」
三ツ星「いや~、このアングルから見るあたしもなかなかいいね! 視聴者さんが沸いちゃうかも!」
飯塚「沸いてんのはお前の頭ん中だ! いいからとっとと説明しろ! お前なんでここにいるんだ!?」
三ツ星「やだなぁ言ったじゃ~ん! あたしの苗字は『三ツ星』だから、料理系ユーチューバーになったら人気出るはずだって!」
飯塚「だから聞いてねーんだよそんなこと! やるんなら一人で勝手にやれよ! なんで俺が巻き込まれなきゃいけねーんだって聞いてんだ!」
三ツ星「それはもちろん飯塚にあやかりたいからだよ!」
飯塚「はぁ?」
三ツ星「だって『飯塚』だよ?『
飯塚「どういう理屈だよそれ……。つーか俺は料理人でもなんでもねえぞ」
三ツ星「大丈夫大丈夫、あたしがメインで進めるからさ! 飯塚にはアシスタントをしてもらうだけだから!」
飯塚「そもそも俺はやる気なんか
三ツ星「歩きなんでニンジンいらない?」
飯塚「言ってねーよ! 徒歩だから持って帰れないってか? じゃなくて俺はやる気なんかないっつってんだよ!」
三ツ星「まぁまぁ、そう言わずに~。とりあえずエプロン着けて~」
飯塚「エプロンてお前……これフリフリじゃねーか!」
三ツ星「かわいいっしょ? 特注でオーダーしたんだけど、サイズぴったりだったね!」
飯塚「わざわざオーダーしたんかい! ったく、何が悲しくて男の俺がこんな格好しなきゃならねーんだか……」
三ツ星「似合ってるのにぃ」
飯塚「嬉しくねーわ! あーもう、付き合ってられねぇ……」
三ツ星「あたしのは色違いなんだよ! ほら見て見て!」
飯塚「はいはい、ピンクな。どうでもいいからさっさと始めてくれ……」
三ツ星「はーい、それじゃあ飯塚もやる気になったところでぇ~、早速作っていきまっしょい!」
飯塚「テンション高ぇなオイ……」
三ツ星「記念すべき第一回目はこちら! オムレツです!」
飯塚「オムレツなぁ……まあ無難だな」
三ツ星「それでは、材料を見ていきましょう! まずは卵!」
飯塚「卵な。これがないと始まらないよな」
三ツ星「こちらなんですけど、最近お高くなってますよね~」
飯塚「あー……確かに。でも仕方ねーよな、今は」
三ツ星「そんな時は、ウズラの卵を使えば大丈夫!」
飯塚「いや何個使うつもりだよ……。一パック使っても一人分にもならんだろうが」
三ツ星「そこはほら、二パック以上買っていただいて……」
飯塚「余計高上がりだろそれ! 良いんだよ普通の卵で!」
三ツ星「はい。あたしたちは予算が限られてますので、スーパーで一番安い卵を買いました! もうね、安いので良いんです」
飯塚「高いやつを提案しておいてよく言うぜ……」
三ツ星「はーい。じゃあ次行きまーす! 白き大地の恵みだぁー!」
飯塚「牛乳だろ牛乳! 厨二っぽい言い回しすんな!」
三ツ星「やだなぁ飯塚、あたしは高二だよ? 同級生じゃ~ん!」
飯塚「腹立つなー……」
三ツ星「白き恵みはほんのちょっとで十分! 多すぎる恵みは時として悲劇を生むのです!」
飯塚「なんの話だよ……」
三ツ星「どんどんいきましょ~! お次はバターです!」
飯塚「おお、王道だな。これはマーガリンとかでもいいのか?」
三ツ星「マーガリン!? 貴様、それでも人間かッ!?」
飯塚「急にどうした!?」
三ツ星「あたしはマーガリンなんて認めんぞぉお!」
飯塚「別にお前が認めてなくても構わんのだが……」
三ツ星「飯塚、マーガリンはね、脂肪の塊なんだよ? あんなカロリーの塊を体に取り入れるなんて、正気の沙汰じゃないよ!」
飯塚「脂肪の塊言うな。あとマーガリン好きに謝れ」
三ツ星「というわけで、バターにしましょう! ちゃんと適量を使うんですよー?」
飯塚「はいはい、分かったよ……。あとは塩と胡椒だな」
三ツ星「はい、その通りです! さすが胡椒顔、よくご存じで!」
飯塚「誰が胡椒顔だ! つーかなんだよそれ……」
三ツ星「え、知らないの? 見てるとくしゃみが出そうになる顔のことだけど……?」
飯塚「知らねーよ! そんな妖怪みたいなやつがいてたまるか!」
三ツ星「いるじゃん、ここに!」
飯塚「やかましいわ!」
三ツ星「さーて材料も揃ったところで調理開始でーす!」
飯塚「……ようやくかよ」
三ツ星「まずはボウルに卵を割って入れます! せいっ!……あっ」
飯塚「思いっ切り殻入ったな……」
三ツ星「あちゃ~、失敗しちゃいましたぁ~。でも大丈夫! こちらに前もって割ってもらった卵がありますので、これを使いましょう!」
飯塚「あらかじめ用意してたのか……。用意周到だなオイ」
三ツ星「お隣の
飯塚「待て待て、なに人んちのご近所さんに頼んでんだよお前は!」
三ツ星「大丈夫だよ飯塚! ちゃんと出演許可は取ったから!」
飯塚「そういう問題じゃねーだろ! あぁ、佐々木さん……何でOKしちゃったんですか……」
三ツ星「さあ、気を取り直していきますよ~! 次に
飯塚「白恵ってなんだよ白恵って。どんどん短くなってんじゃねーか。もはや牛乳の原形留めてねえぞそれ」
三ツ星「そして
飯塚「塩と胡椒のことモブって言うなや! こいつらだって味の要なんだからよ!」
三ツ星「お次はフライパンを温めまして、バターを入れまーす! じゅわー!」
飯塚「あーすげぇ……これだけでめちゃくちゃ良い匂いするな……」
三ツ星「そこに溶いた卵を流し込みまーっす! だばぁ~……どぅぶぁ~」
飯塚「擬音語が汚ねぇ! せめてもっと上品に言え!」
三ツ星「そしたら、どぅるどぅるの卵をヘラで混ぜながら焼いていきまーす!」
飯塚「だから汚いって……」
三ツ星「そろそろ焼けてきたかなー? あ、いい感じですねー!」
飯塚「おー、美味そうだな」
三ツ星「美味しそうじゃなくて美味しいのだよワトソン君」
飯塚「誰がワトソンだ誰が」
三ツ星「さて、そろそろひっくり返しましょーか! ということで飯塚、頼んだ!」
飯塚「俺かよ! ったく、しょうがねぇな……よっと」
三ツ星「おぉ~……見事な回転……! これは高得点が期待できそうですね!」
飯塚「なんの採点だよ……」
三ツ星「世界オムレツ回転選手権、優勝候補筆頭ですよ飯塚選手!」
飯塚「聞いたことねーよそんな大会! つーか勝手にエントリーさせんな!」
三ツ星「審査員はあたしと、世界中のオムレツを愛する皆さんでお送りしまーす!」
飯塚「全世界を巻き込むな!」
三ツ星「さぁ、いよいよオムレツが完成に近づいてまいりました! 飯塚選手の技も素晴らしいですが、ここで時間切れです!」
飯塚「誰目線なんだよお前は……」
三ツ星「お皿に移しまして~、はい、出来上がりでーす!」
飯塚「やっとか……。何かすごい疲れたぜ……」
三ツ星「ではさっそく実食していきま
飯塚「どうなんだよ?」
三ツ星「美味しいぃ~! 卵が卵してて……とにかく卵! って感じ!」
飯塚「どんな感想だよそれは!? 食リポ下手か!」
三ツ星「飯塚も食べてみなよ! 絶対感動するから!」
飯塚「はいはい、分かったよ……。それじゃあ俺も一口……おっ、確かに美味いなこれ! 卵がとろふわだ……」
三ツ星「でしょ~! これで飯塚もオムレツマスターだね!」
飯塚「なんだその称号は!? いらねーよそんなもん!」
三ツ星「というわけで第一回目はオムレツでした! 次回もお楽しみに~!」
飯塚「次があんのかよ!? 今回きりじゃねーのか!?」
三ツ星「それではまた~! ばいばーい!」
飯塚「おい待て! どうなんだよ!」
三ツ星「ばいばーい!」
飯塚「こら、逃げるなー!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます