第63話 鈍感お兄ちゃん
「カミトくんに7人の女の子と婚約してもらう!ぜーったい、婚約させるから!」
そう言ってヨルカさんが可愛く笑う。
すると、側で聞いていたクレアが口を開く。
「ねぇ、お兄ちゃん。7人の女の子と婚約ってなに?」
「えーっと……」
クレアから質問されたため返答しようとするが…
(あれ?よくよく考えたらセリアさんたちに言うべきことじゃなくね?)
ふとそう思う。
なぜなら『俺、未来で7人も婚約者がいるらしい!だから、婚約者を7人作ることになりそうだ!これから婚約者が増えるけどよろしくねー!』と言うようなものだ。
そう言われてセリアさんたちはどう思うだろう。
『3人で飽き足らず、あと4人も増やすなんて』と、幻滅されるに決まっている。
そのため、必死に不確定な未来であることを伝える。
「な、7人の婚約者というのは未来の話だ!これから起こり得る未来ではない!あと4人も増えるなんて俺の方が驚いてるくらいだから!」
俺は必死に弁明するが…
「そう思ってるのはカミトだけ」
「そうですわ。あと4人も増えるかは分かりませんが、少なくとも数人は増えると思ってます」
「だから、未来でカミト様の婚約者が7人いることに驚きなんてありません」
怒る素振りなど見せず、まるで分かりきったことのように婚約者3人が話す。
「……あれ?」
「お兄ちゃん、冷静に考えて。そもそも、未来で7人も婚約者がいるんだから、セリアさんやリーシャ様、レオノーラ様が怒るなんてことあり得ないよ」
「た、確かに……」
3人が婚約者が増えることに抵抗していたら7人に増えるなんてあり得ない。
「私の見立てではあと3人は増える」
「わたくしの見立てだと1人しか思い浮かばないのですが素晴らしいことですわ!」
「はい!カミト様の魅力が私たちにしか伝わらないなんておかしいですから!」
「……え、もしかして3人は婚約者が増えることに賛成なのか?」
みんなの態度が予想の斜め上だったため、質問をする。
「大喜びとまではいかないけど、私はカミトのことを好きな人をあと3人知ってる。そして、その人たちともカミトを支えることができれば良いと思ってる」
「わたくしも否定なんてしませんわ!」
「カミト様はわたくし達が独占すべきような人ではありません!だから7人も婚約者を貰っても驚きはしませんよ!」
「うんうん!さすがカミトくんの婚約者たちだよ!良い子すぎる!」
「お兄ちゃんに7人もお嫁さんがいるなんて!つまりお兄ちゃんの魅力に気づいてる女の子が7人もいる!私、とても嬉しいよ!」
「あはは……」
婚約者3人とクレアが賛同し、ヨルカさんの後押しもあって、どうやら俺は婚約者を増やしても問題ないらしい。
(だからと言ってあと4人も増やすつもりはないが……1人は増えるかもしれないな)
ある日を境に俺の心の中ではとある人物が忘れられない。
(俺はこの人のこともセリアさんたちのように守りたいと思ってしまった。セリアさんたちのように好きになってしまった)
みんなから許可をもらった今、諦めていた想いをこの場にいるみんなへ伝える。
セリアさんたちと同じくらい守りたい人ができたこと。
この人とも婚約したいという想いを。
「ん、良いと思う。カミトが決めたなら」
「はい!わたくしも賛成ですわ!お会いしたことはありませんが、カミト様が好きな人ならとても良い方と思いますので!」
「私も賛成です!」
「よく言った、カミトくん!ウチ、全力で応援するから!未来で見たことある人だから成功すると思うけど!」
「うぅ……鈍感お兄ちゃんがそんなこと言うなんて。成長したね」
「誰目線だよ」
クレアが泣きマネをしながら訳のわからないことを呟く。
だが、今はみんなからの言葉がとても嬉しい。
「ごめん、みんな。さっそく婚約者が増えるかもしれないけど」
「気にしなくていい。あの娘は自分に自信がないからカミトが想いを伝えないとダメ」
「あはは。そうですね」
前回の会話を思い出すと、セリアさんの発言を否定できない。
「未来では婚約者が7人いると言われましたが、これ以上は婚約者が増えないと思ってます」
「「はぁ…」」
「あれ?そこってため息の場面なの?」
クレアとヨルカさんのため息が被る。
「さっきの感動を返してほしいよ、鈍感お兄ちゃん」
「カミトくんの婚約者を増やすって、なかなか大変なことかも……」
「私、可哀想に思えてきた。あんなにカミトのことを想ってるのに伝わってないなんて」
「わたくしも同意見ですわ」
「カミト様は女心というものを勉強した方がいいと思います」
そんなことを呟かれる。
(俺のことを想ってくれる人が他にもいるのか?ソラさんしか思いつかないが……)
「ダメだ、ピンと来てなさそうだよ」
「先は長そうだね」
呆れるような声色で言ったクレアとヨルカさんの言葉が俺の耳に届いた。
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