第60話 2人目と3人目

 無事、セリアさんと恋人になる。


「それでリーシャ様とレオノーラ様からの告白はどうするの?」


 そのまま別れるのが惜しかった俺たちは、誰もいないベンチに腰掛け談笑する。


『ちなみに、私は第3夫人でも構わない』


 これはデート開始前にセリアさんが言った言葉。


 それを踏まえた上で、俺はセリアさんに自分の想いを伝える。


「俺はリーシャ様とレオノーラ様のことも好きです。セリアさんと同じくらい愛しています。だから俺はリーシャ様とレオノーラ様、2人とも恋人になりたいです」


 俺は真っ直ぐな目でセリアさんを見る。


「私は構わない。元々、カミトを独占するなんて無理なことは分かってた」


 セリアさんは嫌な表情を一つもすることなく言う。


「だから私のこともみんなと同じように愛してほしい」


「はい!セリアさんのことを放置するなんてしませんから!」


「ん、言質とったから」


 そう言って微笑むセリアさん。


 その後も俺たちは手を繋ぎ、他愛のない話で盛り上がった。




 セリアさんと恋人になって数日後。


 俺は王宮で女王陛下と謁見していた。


 部屋にはワルダックの悪事に加担しなかった家臣や貴族が控えている。


 そして、リーシャ様とレオノーラ様が俺のことを固唾を飲んで見守っていた。


「それで、今日は何の話かしら?」


「はい」


 そう返事をして一拍置く。


 そして自分の想いを伝える。


「今日はリーシャ様とレオノーラ様に婚約の申し込みに来ました」


「「カミト様……」」


 2人が口に手を当てて涙を流す。


「俺はリーシャ様とレオノーラ様のことが好きです。絶対、2人を幸せにしてみせます。リーシャ様とレオノーラ様、2人と婚約させてください!」


 そして母親でなく王都の長である女王陛下に決意を伝える。


「リーシャやレオノーラを貰うという意味をしっかりと理解したのね?」


「はい。いずれ女王陛下となるリーシャ様と第二王女であるレオノーラ様を貰う意味は理解してます」


 好きだから付き合うというだけでは、リーシャ様たちとは付き合えない。


 それ相応の覚悟が必要となる。


「俺はこの国が大好きです。ワルダック達がいなくなった今、国民からは笑顔が絶えません。そんな国を俺も守りたいと思いました。リーシャ様やレオノーラ様と一緒に」


 俺は自分の覚悟が伝わるよう、女王陛下を真っ直ぐ見る。


 数秒の沈黙が訪れた後、女王陛下が口を開く。


「わかったわ。リーシャとレオノーラの婚約を認めるわ」


「「お母様っ!」」


 女王陛下の返答を聞いて2人が喜ぶ。


(ふぅ。無事、2人とも貰うことができた)


 そのことに一安心する。


 以前、女王陛下の立場ではなく2人の母親としての立場では、俺がリーシャ様たちを貰うことに賛成してくれた。


 だから今回は王女2人を貰う覚悟を示す必要があった。


 女王陛下という立場から2人を貰うことへの了承を得る必要があった。


「カミトがリーシャとレオノーラを貰うと言い、私が同意したわ」


 女王陛下が周りに控えている家臣や貴族たちに聞こえるように言う。


「今後、カミトはリーシャとレオノーラの婚約者となり、リーシャが冒険者学校を卒業して18歳となった日に2人と結婚してもらうわ。それで構わないよね?」


「はい!」


「いい返事ね。2人のこと、よろしく頼むわ」


「任せてください!絶対、幸せにしてみせます!」


 この日、俺はリーシャ様とレオノーラ様の2人と婚約した。




 S級冒険者で『英雄』と呼ばれる俺がリーシャ様とレオノーラ様の2人と婚約した話は一夜にして街中に広まった。


「リーシャ様とレオノーラ様がカミト様と婚約したらしいぞ!」


「つまりS級冒険者であるカミトさんが王都に住んでくれるってことだ!王都は最強の守護者をゲットしたぜ!」


「あぁ!リーシャ様とレオノーラ様がカミト様を堕としてくださったんだ!何でも、2人がカミト様に告白したらしいぞ!」


「リーシャ様とレオノーラ様から告白されたのかー!くぅーっ!羨ましいぜ!」


「王女様のおかげで国は安泰よ!リーシャ様、万歳!レオノーラ様、万歳!」


 等々が街中で騒がれていた。


 その様子を王宮のテラスから眺めながら、俺はリーシャ様、レオノーラ様と談笑していた。


「あはは……嘘は広まってなさそうですが、さすがに恥ずかしいですね。話題になりすぎですよ」


「S級冒険者で国の英雄であるカミト様とわたくし達の婚約は国にとって良いことしかありません。話題になるのも仕方ありませんわ」


「おかげで私たち王族の株も上がってます。そんなことのためにカミト様と婚約したわけじゃないのですが」


「その通りですわ。わたくし達は本気でカミト様のことを愛しておりますのに」


 2人が頬を膨らませながら可愛く訴える。


 そんな2人の態度を俺は嬉しく思う。


「わかってますよ。2人が王族の評価を上げるために告白してないことは。だから周りの声は気にしなくていいですよ。むしろ王族の評価を上げることができて嬉しいくらいです」


「それなら安心ですわ!」


「はい!カミト様に私たちが偽りの愛で告白したと思ってほしくありませんから!」


 俺の返答に2人は安心したのだろう。


 今日会った時にはなかった笑顔が溢れている。


 そんな2人を見つつ…


「俺はリーシャ様とレオノーラ様のことが好きです。これからの人生、2人と一緒に過ごしたいと思いました。こんな俺ですが、よろしくお願いします」


 俺はもう一度想いを伝える。


 すると…


「はい!よろしくお願いしますわ!」


「もちろんです!カミト様っ!」


 今まで見たことない眩しい笑顔で応えてくれた。

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