第28話 晩御飯
「私、カミトに一目惚れした。ヒーローのように助けてくれたカミトのことが好きになった」
「「えぇぇぇーっ!」」
またしても俺とソラさんの声が響き渡る。
「返事はいつでもいい。まずは私のことを知ってもらう必要があるから」
「さすが私の娘ね。その調子でカミトさんを堕とすのよ」
「頑張って!お姉ちゃん!」
「ん、頑張る」
両手を体の前で握り込むセリアさん。
(ど、どうすればいいんだ?返事はいつでもいいって言ってるが……いつまで待たせるとアウトなんだ!?)
人生初めての告白でテンパる俺。
「あ、そういえばソラもカミトに言いたいことがあるらしい」
「ふぇっ!?」
そんな俺にソラさんから言いたいことがあるとのことで、俺はソラさんの方を向く。
「ソラさん、俺に何か言いたいことがあるのか?」
「え、えーっと……じ、実は私もカミトくんのことが……って、こんなところで言えるわけないよ!カミトくんのバカっ!」
「なんで!?」
どうやら俺を罵倒したかったようだ。
「「はぁ」」
その様子を見てクレアとセリアさんがため息をつく。
「ふふっ、青春してるわね」
そして、お母さんが笑顔で俺たちの様子を見守っていた。
その後、色々あって何故か晩御飯をセリアさん宅でいただくこととなった。
お母さんが晩御飯を準備している間、セリアさんと妹ちゃんが自己紹介を始める。
「私はセリア。歳は22歳でソラとパーティーを組んで冒険者として働いてる。階級はA級冒険者。よろしく」
「ウチは冒険者学校に通っているシャルです!歳は16歳!冒険者学校の中ではトップ5に入る実力を持ってます!よろしくお願いします!」
セリアさんは黒髪を腰まで伸ばした美女で、シャルちゃんは黒髪をショートカットにしている美少女。
また、セリアさんは表情の変化が少なく口数も少ないが、シャルちゃんは笑顔が可愛らしく元気いっぱいの女の子だ。
(胸は……シャルちゃんの方が大きいな。これ以上大きくなったらセリアさん、泣くぞ?)
16歳で22歳のセリアさんよりも立派な物を持っているシャルちゃん。
「あ、じゃあシャルちゃんは私よりも年下なんだ!妹ができたみたいだよ!」
そう言ってクレアがシャルちゃんを抱きしめる。
そして仲睦まじく2人がじゃれ合う。
その様子を眺めていると、セリアさんから話しかけられる。
「そういえばカミトは何しに王都に来たの?もしかして私に会いに来たとか?」
「い、いえ。セリアさんと会うことになったのは偶然なんです。だからセリアさんに会いに来たわけじゃないんですよ」
「むぅ。そこは嘘でも私に会いに来たと言ってほしかった」
そう言って頬を膨らませる。
「………すみません」
頬を膨らませて怒ってるようなので、とりあえず謝る。
「まぁいい。なら、カミトは何しに王都へ来たの?」
「あ、はい。俺たち今日から王都で暮らすことにしたんです。リブロでは生活しにくくなって」
「なるほど。じゃあ、これからは王都で冒険者をするの?」
「その予定です。クレアは商人として働けるスキルを持ってますので、商人を育成する学校に通う予定です」
「ってことはクレアさんとウチは同じ学校に通うんですね!」
クレアとじゃれ合っていたシャルちゃんが突然声を出す。
「同じ学校?シャルちゃんは冒険者学校に通ってるんだろ?」
「はい!王都では商人の技術を学ぶ学校と冒険者の技術を学ぶ学校が併設されてます!授業の内容は違いますけど、年に何回か交流もあるんですよ!」
「へー、そうなんだ」
「わー!シャルちゃんと同じ学校なのは嬉しいよ!」
クレアが心の底から嬉しそうに喜ぶ。
リブロにも冒険者学校はあったが商人の学校と併設はしてなかった。
ちなみに、冒険者学校も商人を育成する学校も5年間在籍することができ、一般的にスキルを獲得する12歳から17歳までが通っている。
そんな話をしていると、お母さんが料理を手に持って現れる。
「そういえばカミトさんとソラちゃんは今日の宿を見つけてるの?」
「あ、いえ。まだ見つけてないんですよ。ご飯をいただいた後、探す予定です」
「私もご飯をいただいた後、探します」
「そう。ならウチに泊まりなさい。部屋はたくさん空いてるから」
「「いいんですか!?」」
俺とソラさんの声が被る。
「えぇ。ソラちゃんもセリアとたくさんお話ししたいことがあると思うし、セリアはカミトさんと離れたくないと思うから」
「ん、さすが母さん。よく分かってる」
「あはは……ならお言葉に甘えて、今日は泊めていただきます」
「私もお言葉に甘えて一泊させていただきます」
「なら、お布団の準備もしないといけないわね。久々に賑やかになるわ」
15日間はセリアさんが寝込んでいたこともあり、賑やかな日々を送ることができなかったはずだ。
(今日は賑やかな夜を迎えることができそうだな)
そんなことを思いつつ、俺たちは晩御飯をいただいた。
「えっ!おばあちゃんのアパートに暮らしてたんですか!?」
「うん!アムネシアさんには色々と助けてもらったんだ!」
シャルちゃんとクレアの会話から、アムネシアさんの名前が出てくる。
「なるほど。おばあちゃんの手紙に書かれていた兄妹ってカミトとクレアのことだったんだ。おばあちゃんが2人のことを絶賛してたから、いつか会いたいって思ってた」
「どんなことが書かれていたのか気になりますね」
絶賛ということから悪いことは書かれていないと思うが、内容がとても気になる。
「悪いことは書かれてないから気にしないで。でも、手紙に書いてた男の子がカミトさんね……ますます娘と結婚してほしくなったわ。セリアだけじゃなくてシャルもお嫁にどうかしら?」
「え、えーっと……」
「ふふっ、半分冗談よ」
「あ、半分は本気なんですね」
(アムネシアさん、手紙で褒めすぎです。マジで手紙の内容が気になりますよ)
心の中でアムネシアさんに向けて呟く。
「ウチら、なかなかリブロに行けなくておばあちゃんに全然会ってないんです!おばあちゃんは元気してましたか!?」
「うん!アパート周りの掃除や料理を毎日欠かさずやってたよ!それに、私たちには毎日お裾分けまでしてくれたんだ!」
「正直、アムネシアさんのお裾分けはありがたかったです。とても美味しかったので、俺たちはアムネシアさんのお裾分けが毎日楽しみでした」
「ふふっ、お母さんらしいわ」
アムネシアさんの娘であるお母さんが笑う。
その後もアムネシアさんのお話で盛り上がりつつ、晩御飯をいただいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます