第25話 王都へ 3
休憩後、ルーリエさんとソラさんが馬車の運転を名乗り出たため、俺は馬車の中で休憩する。
馬車の中ではクレアとソフィアさんの3人で談笑し、1日目は盗賊や山賊、モンスターに襲われることなく夜を迎えた。
「見張りは戦うことのできるアタシとソラ、カミトくんの3人が交代で行う」
「えっ!ソフィアさんも見張りをするんですか!?というより、戦うことできるんですか!?」
鑑定スキルを持っていることから非戦闘員かと思っていたため、驚く。
「カミトくん、アタシはダンジョン協会の会長だぞ?A級モンスターくらいなら1人で倒せる実力は持ってるぞ」
「た、確かに。会長という立場からすれば、実力者でないと務まらないか」
そう言われると納得してしまう。
「王都からリブロへ行く時は私と会長の2人だけだったから、交互に見張りしてたんだよ!」
「そうか。2人での旅だと交互に仮眠を取らないといけないのか」
「なかなかハードだったけどな」
「うん。猫の手も借りたいって思ったね」
その時のことを思い出してか、2人とも表情が曇る。
「そ、そうですか」
触れない方がいいと思い、俺は話を広げず終わらせる。
「すみません、会長。それにソラちゃんとカミトくんも。見張りを手伝うことができず……」
「ごめんね、お兄ちゃん。私たち、戦う力を持ってないから……」
すると、ルーリエさんとクレアが申し訳なさそうな表情で俺たちに言う。
「気にするな。2人は料理を頑張ってるんだから」
「うんうん!会長の言う通りだよ!だから見張りは私たちに任せて!」
「ソフィアさんとソラさんもそう言ってるんだ。気にすることはないぞ」
そう言って俺はクレアの頭を優しく撫でる。
「うん。ありがと、お兄ちゃん」
「ルーリエさんも気にしないで……って何か俺の顔に付いてますか?」
「い、いえ!みなさん、ありがとうございます!」
「……?」
ルーリエさんの視線が気になったが、深くは追求せず、俺はクレアの頭を撫で続ける。
その様子をルーリエさんとソラさんが羨ましそうに見てたことに、俺は最後まで気づかなかった。
クレアとルーリエさんが準備してくれた晩御飯を食べ、見張りの順番を決め、順番はソフィアさん→俺→ソラさんとなった。
今回、野宿するためにテントを2つ用意しており、俺はクレアと一緒のテントを使い、残り1つのテントをソフィアさんたちが使うこととなった。
「俺は途中で起きるが、クレアは気にせず寝てていいからな」
「うん。ごめんね、お兄ちゃん」
「だから謝らなくていいって言ってるだろ?」
「そ、そうだった。ありがと、お兄ちゃん」
「おう!」
そんな会話をして、俺とクレアはボロアパートよりも狭い場所で寝る。
普段から寝相の悪いクレアと、ボロアパートよりも狭い場所で寝ることになるので…
「お兄ちゃん……むにゃむにゃ……」
“むにゅっ”
(うぉぉぉっ!クレアのEカップがぁぁぁ!!!)
寝入って早々、クレアが俺の腕に抱きついてくる。
(おおお落ち着け!毎夜のことだろ!)
俺は毎夜行っている呪文を唱えることで気にしないようにする。
そしてクレアに抱きつかれたまま、いつものように睡眠を取る。
そのため…
「で、カミトくんは妹の胸を堪能しながら熟睡してたというわけか。さぞ幸せな夢だったんだろうな」
「違うんです。これには深い理由があるんです」
見張りの交代を知らせるために俺たちのテントに来たソフィアさんが、クレアから抱きつかれたまま寝ている俺を見て、ツッコミを入れる。
俺はクレアを起こさないよう注意しつつ抜け出し、ソフィアさんと共に外へ出る。
ちなみに、ソフィアさんが訪れてもクレアは起きなかった。
「まぁいい。君たち兄妹の仲が良いのはいいことだからな。一応、ソラとルーリエには黙っとくよ」
「ありがとうございます。知られると2人から変態お兄ちゃんと思われてしまいますので」
「そうはならないと思うが……まぁいいや。アタシは眠いから寝るぞ」
「はい!おやすみなさい!」
俺はソフィアさんに黙ってるようお願いし、見張りを変わる。
その後、時間まで見張りを行い、ソラさんとバトンタッチして再び眠りについた。
そんな感じで何事も無く5日が経過し、昼の間に王都へ到着する。
「おー!ここが王都か!賑わってるな!」
「だね!リブロとは大違いだよ!」
王都に初めて来た俺とクレアは王都の街並みを見て驚く。
リブロよりも大きな建物が多く、人通りの多い道では屋台が並んでいる。
そして1番の違いは人が多いことだ。
「じゃあ、アタシはダンジョン協会に戻るから」
「あ、私も協会に行きます!」
「私はセリアさんに会ってくるよ。カミトくんから貰った『希望の花』で、セリアさんを目覚めさせることができると思うから」
とのことで、この場でみんなと一度お別れになる。
「カミトくん。明日、王都のダンジョン協会に来てくれ。そこで今後のことを話そう」
「カミトさん!また明日、会いましょう!」
「はい!」
俺は返事をしてソフィアさんとルーリエさんを見送る。
「じゃあ、俺とクレアは今日の宿を探すので」
「あ、ちょっと待って!」
俺たちが宿屋を探すため動き出そうとした時、ソラさんからストップがかかる。
「あ、あのね。今からセリアさんを助けに行こうと思うんだけど、カミトくんとクレアちゃんも一緒に来てほしいんだ」
「俺たちも?」
「うん。命の恩人ってことを伝えたくて」
真剣な眼差しでソラさんがお願いしてくる。
「私は行ってもいいよ!時間はまだあるから!」
「そうだな。偶然とはいえ、セリアさんはアムネシアさんの孫なんだ。一言くらい挨拶した方がいいかもしれない」
ということで、俺たちは王都について早々、セリアさんへ会いに行くこととなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます