第12話

レオンさまのお仕置きは碌なことが起こった試しがない。


 ある時はわたくしが隻眼故に暗い空間では動けないのを知っていて真っ暗なレオンさまのお部屋に置き去りにされたし、またある時は1時間もこしょこしょとくすぐられて正気を失わされたし、またある時は王太子妃教育の食事マナーで出てくる食べ物をわたくしの大嫌いなピーマン祭りにされたし、またある時はわたくしが彼の顔と声に弱いのを利用して2時間もお父さまやお母さま、国王陛下や王妃陛下の前でお膝の上に乗せられて頭を撫でられ続けた。その時はレオンさま手ずからわたくしのお口にあーんとお菓子を食べさせられ、飲み物を飲ませられたために、本当に居た堪れなくて死にそうだったのを覚えている。もうあんな目にだけは会いたくない。


 わたくしは床に座り込んだまま彼の真っ白なスラックスを軽く引っ張りながら、涙によって濡れ、恐怖によって震える身体で彼を見上げながら意図せず悲痛な声をあげてしまう。


「れ、レオンハルト王太子、」

「あれ?僕の可愛い可愛いエリーはもぉーっとお仕置きを受けたいのかな?」

「ひいぃっ、れ、レオンさま。………お、お仕置きはヤです。お願いします、後生だから………、ね?」

「ふふっ、そうだなぁ。あんまりやっても可哀想だし、執務中4時間僕のお膝の上で啼いてくれたら許そうかな」

「いやああああぁぁぁぁぁ!!」


 あまりのことに絶叫したわたくしを、レオンさまは軽々と抱き上げた。


「ははっ、かぁーわいぃ」


 ちゅっという可愛らしい音を立てながらわたくしの顔中にキスを落とすこのキス魔をどうにかする術なんて、わたくしには持ち合わせていない。だからだろうか。わたくしは1番行ってはいけない選択肢をとってしまった。されるがままに彼にキスをされ、目の前で怒りによって震えているアイーシャに手を伸ばしてしまったのだ。

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