思わせぶりな彼女は全然振り向いてくれません

マキマキ(更新停止中)

第1話 思わせぶりな彼女

れん、一緒にお昼食べよ!」


「またかよ佳由かゆ、他の女子と食べなよ、友達たくさんいるだろ」


「友達はたくさんいるけど…廉と一緒にたべたいの!」


「っ!」


今日も…今日も彼女に思わせぶりな態度を取られている!




***




「見て! 今日、自分でお弁当作ってきたの!」


「へぇ〜、佳由、料理できないのによく作れたな」


「うるさい! そこは素直に褒めればいいの!」


「はいはい、すごいすごい」


「心がこもってない!」


「へぶっ!」


彼女に頭を軽く叩かれる。


「心を込めて、もう一度!」


「いったいなぁ、すぐ暴力を振るう女はモテないぞ」


「うるさいなぁ、廉よりはモテてるんだから別にいいし!」


「うっ!」


痛いところをついてくる。僕は彼女よりもモテないのではなく、まったくモテないのだ! 彼女とは天と地ほどの差がある。thanで表してはいけない。いや競うことすらできない。同じ土俵にすら立てないくらいだ。


「は! や! く!」


「料理できないなりによく頑張りました」


結構、嫌味なことを言ったつもりだったので、また怒られると思ったが…


「そうよ! 最初からそうすれば良かったのに!」


あれ? 怒られない? なんでだ?

そう不思議に思っていると…


「それでさっきの話に戻るけど、廉はちなみに何回くらい告られたことあんの?」


「えっ!」


「何回?」


「………0回」


それを聞いた途端、佳由はゲラゲラと笑い始めた。


「うっそ! そんなことある? まって、めっちゃ面白いんだけど! ぜ、0回とか、本当に言ってる?」


「なんで嘘つかないといけないんだ、悲しいことに本当だよ!」


「やばい、面白すぎてwww死ぬwww」


高校生でしかも男女、ここまで仲が良さそうに見えると、幼馴染とか、何か特別な関係じゃないのかと思うところあるかもしれないが、付き合ってるとか何でもなく、ただの中学からのクラスメイトだ。じゃあなぜこんなに仲が良さそうに見えるのか、実は僕にもよく分からない。気づいたらこんな感じに接していた。




***




彼女と話し始めたのは、同じ演劇部に入ったことだった。

大海おおうみ佳由かゆは演劇部のエースだった。中学一年の頃から主役を務め、彼女目当てに劇を見に来る人も少なくなかった。


「さっきの演技、凄い迫力あって凄かった…」


「あ、ありがとうございます」


「ねぇ、演技の時、どんなこと考えてるの?」


一年生の時から主役を務めている、大海さんにそんなことを聞かれて、僕は心の中でこう思った。


『あなたの演技の方が迫力あってめちゃくちゃ凄いですけどね!?』


「どんなことって…よく考えてみれば演じてる時、何考えてるか分からない」


「何考えてるか分からないか! じゃあ、それだけ役に入り込んでるんだね!」


「そ、そうなのかな?」


「きっとそうだよ! 私だって何考えてるか覚えてないもん!」


「そう言ってもらえるなら嬉しいよ…えっと…大海さん」


「あっ! 私のことは佳由って呼んで」


「えっ! し、下の名前で…」


「うん、全然いいから、よろしくね! 廉くん!」


そこから奇妙な縁というか何というかでそのまま今に至る。




***




「そ、そういう佳由はどうなんだよ! 何人ぐらいから告られたことあんのか!?」


「私? 私は13人かなー」


「じゅ、じゅうさん…」


「あっ! 中学もいれるなら37人ぐらいだったかな?」


「ちょっ! ちょっと待って!」


「うん、どうかした?」


「高校って入学してからまだ2週間も経ってないよね…?」


「うん、そうだよ。 入学式の後に4人ぐらいだったかなー」


「マ、マジか…」


俺が思っていた以上に佳由はモテていたが、最後に大事なことを聞きたくなった。


「その中で、告白okしたのは?」


「えっ、0だよ」


「えっ? 0なの?」


「うん、0だよ」


「ど、どうして? その告白してきた中にイケメンとかいたでしょ」


「まぁ、いたにはいたけど…私の好みじゃないんだよねー」


「じゃあ、佳由の好みは?」


それを聞くと佳由がじっと俺を見つめてくる。


「か、佳由?」


「………」


「何でそんな俺を見つめるの?」


「………」


「も、もしかして…俺が…」


「………お米、服についてるよ」


「えっ!?」


急いで服を見るとそこには米粒がついていた。


「な、何だ…米粒か…」


「ごちそうさまでしたー!」


どうやら佳由はお昼を食べ終わったようで席を立ってしまう。


「ちょっ! ちょっと!」


「うん? 何?」


「結局、佳由の好みは…」


「………さぁ、誰なんでしょう?」


バイバーイと手を振り、クラスの女子たちと話し始めてしまう。

僕は机に突っ伏し、一息つく。


「はぁ、心臓に悪すぎる」


思わせぶり態度を取られて早く数年、いつになったら気にすることなく生活ができるのだろうか…

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