セカンドライフは一目惚れした奴隷の為に捧げます!〜チート能力無くても親譲りの身体能力とありふれたスキルでのんびり生き抜く〜

愛のオタク

プロローグ

第1話 始まりなんてそんなもの

 前世の世界に未練なんて無い。寧ろ後悔少なくして生き抜いたと思う。一つだけ心残りというか、悔しい想いをしたのは、女性にモテなかった事くらいか。ハーレムとまではいかなくても、惚れた女性と一生を共にしたかったくらい。


 前世の俺の名前は『吉田侑』。年齢は50になるところだった。だったというのは、誕生日前日に病気で死んだから。仕事一筋で生きてきた人生。体力の衰えを感じ、たまたま受診した人間ドック。


「吉田さん、簡潔に申しますと。ステージ4の癌です」


 医者から告げられた余命宣告。それを聞いた瞬間。


(……ああ、やっぱりそんな事だろうな)


 自分の事なのに、何故か他人事のように俺はそう思った。確かにショックはあった。叫びたい気持ちも無くは無い。だからと言って、もう手遅れなのも事実。


(人生って呆気ないものだな)


 病院からの帰り道、街が夕闇に染まるのを呆然と見つめる。行き交う車や人の群れをただ無心で見つめた。

「……まぁ、残りの人生。やりたい事して、後悔無く生き抜きますか」

 ポツリと呟く。

「とりあえず、今はご飯でも食べよ」

 言うのが早いか、歩くのが早いか。そう言いながら俺は街へと吸い込まれていった。


 その後の行動は早かった。長年勤めた会社を辞め、やりたい事を片っ端から挑戦した。そして、49歳と11ヶ月。吉田侑の人生は幕を閉じたのだった。

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