後日談② 下の名前
学校で神木蓮に呼び方を指摘された時、私は呼び方なんて関係無いって言ったけど、私だって本当は皇くんのことを名前で呼びたい。
でも、まだ恋人になってから二週間くらいしか経ってないのにいきなり呼び方変えるのは皇くんも困るかな……いきなり距離縮めようとしてるって思われて、焦ってるって思われちゃうかも。
それに、下の名前で呼ぶのって今までずっと苗字で呼んでたからだと思うけど思った以上に緊張しそう。
私がそんなことを何時間も考えていると、皇くんバイトが終わって私の部屋に帰ってきた。
「ただいま、白鳥さん」
「おかえり、綾……す、皇くん」
皇くんのこと下の名前で呼ぼうと思ったのに、やっぱり下の名前で呼ぶのって緊張する……!
「今何か言いかけました?」
「う、ううん、なんでも?」
私がそう言うと、皇くんは「そうですか」と言って特に気にした様子も無くいつも通り私が座ってるソファの隣に座った。
「バイト疲れた?」
「疲れはしましたけど、慣れてるので……それに、前までは帰ってきても一人だったのが、今は白鳥さんが居てくれるので、それだけでバイトの疲れなんて無くなりますよ」
皇くんの答えが完璧すぎてもう好き……私は我慢できずに皇くんのことを癒してあげるように抱きしめる。
「バイト頑張ったね、でも辛くなったらすぐ私に言ってね?」
「ありがとうございます……その時はちゃんと言います」
はぁ……皇くんのこと抱きしめてるだけで皇くん以外のことが全部どうでも良くなって幸せな気持ちになる。
私がそう感じていると、今度は皇くんが私のことを抱きしめ返してくれた。
皇くんは私が皇くんのことを抱きしめると、いつも抱きしめ返してくれる……デートの時も手を皇くんの方に出したら握ってくれる。
そんな優しい皇くんだからこそ、私は皇くんのことを皇くんじゃなくて、もっと親しく……綾斗くんって呼びたい!
私と皇くんは、どちらともなく抱きしめるのをやめて話を始めた。
「綾────皇くんは、次のデートどこ行きたい?」
「水族館とかどうですか?」
「うんうん、良いね!」
また呼べなかった……!
ただ下の名前で皇くんのことを呼びたいだけなのに……!
その後も私は水族館デートの話の合間にどこかで皇くんのことを下の名前で呼べないか試してみたけど、結局皇くんのことを下の名前で呼ぶことはできなかった……その後、二人で一緒にお風呂に入って、お風呂から上がって部屋に戻ると時間は23時前になっていた。
「今日はもうそろそろ寝ますか?」
皇くんがそう言って来た時、私は皇くんのことを後ろから抱きしめた。
もう、皇くんにどう思われたって関係無い!
私が皇くんのことを好きってことが、今まで以上に皇くんに伝わってほしい!
下の名前で呼ぶのは、そのことを皇くんに伝えるため!
「白鳥さ────」
「綾斗くん!……今日から、そう呼んでも良い?」
私がそう言うと、綾斗くんは無言で私の方に振り返ると、いつもの優しい笑顔を私に向けてくれながら言った。
「様子がおかしいと思ったら、俺のこと下の名前で呼ぼうとしてくれてたんですね、いくらでも呼んでください」
そう言われた瞬間、私は綾斗くんのことを好きな気持ちを我慢できなくなって、綾斗くんにキスした。
「綾斗くん、綾斗くん!」
綾斗くんのことを下の名前で呼ぶことができる幸せと喜びを私は今全力で堪能していた。
綾斗くん……綾斗くん。
私がしばらく綾斗くんのことを下の名前で呼びながら綾斗くんに抱きついたり膝枕してもらったりして甘えていると、綾斗くんがこの会話の流れで言った。
「白鳥さんが俺のことを名前で呼んでくれるなら、俺も白鳥さんのこと苗字じゃなくて下の名前で呼んだ方が良いですか?」
「綾斗くんが、私のこと下の名前で!?」
今私が綾斗くんのこと下の名前で呼べてるだけでも幸せなのに、それに加えて綾斗くんが私のこと下の名前で呼んでくれたりしたら……幸せすぎて心臓持たない!
「それは、もう少し後でも良いんじゃ無い?」
「そうですね、焦って呼ぶものでも無いと思うので、付き合って一ヶ月記念の時から白鳥さんのことを下の名前で呼ばせてもらいます……ちゃんと好きって気持ちを込めたいので」
「え!?うん……!」
めっちゃ良い……!
え?付き合って一ヶ月記念の日に今までは白鳥さんって苗字で呼んでたのが、下の名前で呼んでくれるようになるの?しかも好きって気持ちを込めて!?
綾斗くん好き!綾斗くんの全部が好き!
「今日はもう遅いので、今度こそ一緒に寝ましょうか」
「うん!」
私はいつも通り綾斗くんのことを抱きしめて、綾斗くんと一緒に眠った……毎日だけど、今日も綾斗くんが夢の中に出てきた。
◇皇side◇
昨日から、白鳥さんが俺のことを下の名前で呼ぶようになった。
今まで苗字で呼ばれていたから、少しも気恥ずかしくないと言えば嘘になるが、それ以上に白鳥さんが俺のことを好きだということを今まで以上に伝えようとしてくれているという思いが伝わって来たからだ。
それなら……俺も、白鳥さんに伝えたい。
────そして、付き合って一ヶ月記念の日。
俺は、俺が告白の返事をした、あのレストランのテラス席で、初めて白鳥さんのことを下の名前で呼んだ。
◆
この作品に対する思いなどを、あとがきとしてこの話の続きに投稿させていただきますので、興味のある方は是非お読みいただけると幸いです!
あとがきとしてこの作品に対する思いは後で語らせていただくので、ここでは手短に……この作品はこの話をもって本当の最終回になります!
この作品をここまで応援してくださって読み進めてくださった皆様、本当に感謝しかありません。
またお会いできることを、楽しみにしています!
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