第2話 扇
1922年 日本 太宰府
太宰府。古来より、海の外からの窓口として利用されてきた博多の防衛機関。江戸の世になってからはその価値は薄れてしまったが、開国後には再度その価値を見直されている。
大陸進出。これを望む日本は太宰府をないがしろにできない。
だが、それは軍事的な話ではない。占星術的な話である。
「ヒヒヒヒ。」
独特な笑い方をする女性。
日本ではあまり見かけることのない長い白銀の髪。それと対称的なゴシック調の黒の服。
どこか西洋のお嬢様を思わせるような格好なのだが、笑い方そして彼女の今いる和風の屋敷とは完全なミスマッチである。
彼女の名前は
「少しは静かにしておけ。
和風の屋敷の縁側に座る
彼の名は
「で、なんでオレは
突然笑うのをやめ、
「
「藤原の傍系が何を言っている?」
「それは、分かってんだけどさ。北家の人間ともなるとな隆家の家系でもなければ不安になるさ。」
「扇。そんなこと思ってもないだろう。」
「ばれたか。」
「お前が一番嫌っているのが血の縛りだろう?」
「ヒヒヒ。つれないな~。」
「そうだそうだ、用事は何だったけ?」
まるで
「俺はまだ一言も用事について話してはいない。」
「ありゃ、そうだったか?」
素で言っているのか、それともふざけているのか分からない
「これが今回の仕事だ。」
一通の書状を
「で、どうだ?」
いつの間にか出されていたお茶を飲み干した
少し間をおいて
「報酬は?」
「1万でどうだ?」
「3万か?それなら、問題はないが...。」
「3万?冗談じゃねーよ。今回の件を考えれば30万だろ。それに30万位出せるだろう?依頼主であれば。」
「...。」
黙り込む
「それなら、今回の件はな...。」
「いや、いい。達成すれば30万払おう。」
「はあ!?」
支払いができるとは思えない値段を請求してつもりあったが、
「まさか、
「30万だな。戦契は結ばれたぞ。」
「おい!オレは承諾してねぇーぞ。」
戦契
古来、占星術師同士の強固な契約に用いられた呪術の一種。時代が進むにつれこの形式の契約を使用できる人間は減ったが、今でも使用可能な人間はいる。但し、この呪術は強固な契約だが、もちろん契約を結ぶ両者の同意が必要である。
「なるほどな。承諾はしていないと...。だが、扇。依頼主はどうだ?」
「んなの、そりゃあ。」
「まさか...。」
「かずら様とお前は”
「オレの戒め、いや戦契自体はあいつの戒めになっているのか。」
「そういうことだ。一心同体、双子でもなければできない芸当だな。」
「くそ、戦契の判定は厳しい。となると。」
「依頼の完遂は必須だな。頑張れよ扇。」
考え込む扇雪に一応、声をかけて去っていく
その後ろで大きな女性の叫び声が聞こえることに
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