かつて剣聖と呼ばれたアラサー社畜、会社の命令で撮ったダンジョン料理配信にてバズり散らかす~元最強のブラック社畜が、S級モンスターをあっさり食して伝説になった話~
第1話 アラサー社畜、会社から命令される。
かつて剣聖と呼ばれたアラサー社畜、会社の命令で撮ったダンジョン料理配信にてバズり散らかす~元最強のブラック社畜が、S級モンスターをあっさり食して伝説になった話~
堕園正太郎
第1話 アラサー社畜、会社から命令される。
就職なんてするんじゃなかった。
そう思いながら、今日も俺はキーボードをカタカタ叩いている。時刻は深夜二時。だというのにしっかり明るいオフィスでは、俺と同じような社畜達が労働に勤しんでいた。
「今日の分が終わるまでは全員帰さねぇからな! ちゃっちゃとやれよ!」
そう言っているのは、強面の部長、鬼瓦である。彼は社員達を睨みながらオフィス内を見回りし、唾と一緒に檄を飛ばしていた。
「使えねぇウスノロ共が! 死ぬ気で遅れを取り戻せよ! オラ田中! ぼさっとしてんじゃねぇぞ!!」
「いてっ……す、すみません」
彼に頭を叩かれて、俺のデスクに積み上がったエナドリの空き缶が揺れる。それを横目に、俺は溜息を吐きながら仕事を進めていく。
俺の毎日は大体こんな感じだ。早朝に出社して、深夜まで残業。大手食品会社に就職できたと喜んでいた数年前が懐かしい。いまでは転職したくても、その時間がまるで取れない毎日である。
こんな事なら、あの頃の方がマシだったな。
人気はなかったとはいえ、自由だったあの頃の方が――。
「田中さん、いますか?」
名前を呼ばれて、俺は顔を上げる。オフィスのドアに、長い金髪を揺らす、細身の美人が立っていた。専務秘書の島内さんだった。
「はい。なんでしょうか」
「あ、お疲れ様です。少々お話しがありまして。いま大丈夫ですか?」
「えぇ、まぁ」
本当はあまり大丈夫じゃない。ただ、彼女も俺と話をしなければ帰れないのだろう。それも可哀想なので、仕方なく俺は彼女と共に会議室へ向かった。そこで俺は、彼女にこう言われた。
「単刀直入に言います。田中さん。ダンジョン料理配信をしてください」
「……はい?」
ダンジョン配信。それは二十年前、突如として世界中に現れた大穴、ダンジョンの探索を配信する行為のことだ。ダンジョン内を闊歩するモンスターを、スタイリッシュに倒す配信者の様は、若い世代から絶大な人気を誇っている。彼女はそれを俺にやれと言っているのだ。
「最近、我が社が大々的に新しい調味料を売り出そうとしているのは、田中さんもご存じですよね?」
「えぇ、まぁ。いま残業してるのもそれ関係ですし」
確か、塩にうま味成分を足したような調味料だったはずだ。忙しすぎてよく覚えていない。
「専務も、今回の商品には大いに期待を持っていらっしゃるそうで。今回田中さんにこのお願いをしたのも、商品の知名度をより上げたい、という思いからなのです。若者に人気なダンジョン配信。そこでモンスターを使った料理をしていただき、新商品の調味料を使用する。そうすることで、ご家庭への普及を狙いたい。それが専務のお考えです」
「は、はぁ……しかし、なんで俺に?」
「大学時代に田中さんはダンジョン配信をしていらっしゃいましたよね? その経験を買ってのことです」
確かに、俺は一時期ダンジョン配信をしていた。まったく人気は出なかったけど。
あの頃は数え切れないほどのダンジョン配信者がいて、俺はその中に埋もれてしまったのだ。同接はずっとゼロ人……いや、途中からは一人だけいたか。とにかくそういう感じだった。とてもではないが、経験と呼べるほどの経験でもない。
「たぶん、他の人に任せた方が良いと思うんですけど……」
「田中さん」
「はい?」
「決定事項ですので」
「決定事項かぁ~……」
まぁ、しょうがない。一介の平社員に専務命令を覆せるわけもない。
「ちなみに、いまやってる仕事は……」
「平行して行ってください」
「ですよね~……」
俺は溜息を吐き、がっくりと肩を落とす。
まぁ、しょうがない。これも仕事だ。やるしかない。
これで、少しは給料が増えれば良いんだけどな。
「とりあえず、機材の確認の為に、いまからダンジョンへ向かってください」
「……はい……」
深夜に出張とか、この会社ほんとどうしようもねぇな。
俺は思いながら会議室を出た。
♢♢♢
123:名無しのダンジョン好き
おいおまえら。○○食品のチャンネル見たか?
124:名無しのダンジョン好き
あのクソみたいな調味料出してるとこ? なんで?
125:名無しのダンジョン好き
スレチじゃね
126:名無しのダンジョン好き
そこがダンジョン配信してるんだよ。見たか? ていうか見ろ。ヤバイから
127:名無しのダンジョン好き
なんで食品会社がダンジョン配信してんだよ
128:名無しのダンジョン好き
プロモだろ。っていうかどっちの意味でヤバイのw
129:名無しのダンジョン好き
いいから見てみろって! 騙されたと思って!!
130:名無しのダンジョン好き
なんだよ。どうせクソみたいなプロモだろ。企業なんてダンジョンを金儲けの道具にしか見てねぇよ。おもろい配信なんてあるわけないじゃん
131:名無しのダンジョン好き
いや、見てみたが、これはヤバイ。マジでヤバイ
132:名無しのダンジョン好き
何がヤバいのよ
133:名無しのダンジョン好き
ダンジョン配信でヤバイって言ったら、意味はひとつだろ! ヤバイくらい強ぇんだよ! 配信者が!!
☆☆☆
【作者からのお願い】
新作になります。これからどんどん皆様を楽しませられるような物語を書いていきたいと思います。ですが長い道のりになるかも知れないので、もしよろしければ☆やフォローを頂けると、非常に励みになります!
どうぞ、よろしくお願い致します!!
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