10・こっそり勉強

 とはならないってことくらい、同じ男子高校生としては十分理解できる。

 俺は今回抱かれる側だからいろいろ怯んでいるけど、これが逆なら──俺が青野にムラムラしていて「こいつ抱きてぇ」って状態だったら「キスだけ」って正直キツいもんな。

 なので、帰宅後こっそり勉強することにした。

 参考にしたのは、昼休みに八尾が教えてくれた例のサイト。なかなか具体的かつエグいことが事細かに書いてある。


(ローション必須……え、これ俺が用意すんの?)


 するよな……するんだろうな。

 ていうか、こっちの俺、そういうの用意してねーの? いろいろ遊んでいたなら、しっかり持ち歩いているような気がするんだけど。

 ってことで、試しにクローゼットを漁ってみる。

 ──ビンゴ、あっさり見つかった。ドラッグストアのレジ袋に、一式まとめてつっこんであった。

 バカ、こんな目のつきやすいところに置いておくんじゃねーよ。母ちゃんに見られたら、どう言い訳するんだよ。

 とりあえず、ゴムとローションを手に取ってみる。

 ゴムは未使用だからまだいいとして、ローションは……これ、開封したのいつだ? まだ使えるやつなのか?

 え、でも自分以外のヤツが使ったローション、ちょっと抵抗あるな。かといって「新品がいい」となると、自分で用意する必要があるわけで──

 他にも「うわ」ってなることがいろいろ多い。

 例えば、


(事前の準備……えっ、これどこでやんの? 青野んち?)


 とか


(マジで指つっこむの!? 俺、座薬以外入れたことないんだけど!?)


 とか、読めば読むほど、頭がクラクラしてくる。

 それでも、なんとか頑張ってひととおり目を通し終えた俺は、いったんスマホを伏せて深々と息をついた。


「やべぇ、想像以上にキツい」


 どうしよう、やっぱり青野んちに行くのやめようかな。

 けど、ずっとあいつと付き合い続けるなら、いつか必ず「その日」はくるわけで。

 だったら、どこかで「えいっ」と未知の世界に踏み込まないと──


「お兄ちゃん、ちょっといい?」


 ドアの向こうから、ナナセの声。速攻でローションとゴムを枕の下に隠すと、何食わぬ顔で「いいぞ」とベッドに腰を下ろした。

 ナナセは、部屋に入ってくるなり俺の顔をジーッと見た。

 ──え、なんだよ。俺の顔に何かついてる?

 けど、ナナセは言葉を濁すばかり。なにか考えこむように黙り込んだあと「あのさ」とさらに距離を詰めてきた。


「お兄ちゃんに質問があるんだけど」

「おう」

「中学のとき何部だった?」

「……は?」

「ぶ・か・つ。何部に入ってたっけ?」

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