Shooting Star
有希
第一章 星花は流れて
第1話
手負の敵が2人、銃弾や爆発でボロボロになった兵器工場の通路をふらふらで歩く。
「はぁ、はぁ、はぁ……っそ」
「っ……大丈夫か?」
「あ、あぁ……脇腹に何発か弾をもらってな。そっちはどうだ?」
「こっちは右肩だけだ。でもめちゃくちゃ痛え」
「はは、俺に比べたらましじゃねぇか」
「だが痛ぇもんは——がっ!?」
俺が放った弾が肩を負傷している方の男の膝に当たり倒れる。
「くそっ!もう来たのか!?おい、立てるか!」
「っ、だめだ。膝をやられて……た、立てない」
「弱気な事を言ってんじゃねぇ!しっかりし——!っ、すまない!」
慌てて担ぎ直そうと脇腹を負傷している男。だが近づく俺を見るならあっさり見捨てて走り出す。
「まっ、待ってくれ!置いていかないでくれよ!?」
虚しい声を仲間が聞き届ける事はなく走り去る。倒れた男は後ろに立つ俺の方を振りかえり震えながら銃を突きつける。
「っ……化け物め——」
始末した。次を追いかける。
道中残存していた敵が俺の道を塞ぐ様に立ちはだかってきたが順次始末していく。しかしその中に仲間を見捨て俺から逃げた敵の姿はない。
「さっきので30人中29人は始末した。あと1人は逃げ……いや、格納庫か」
床を見ると真新しい血痕が残されていた。そしてそれは一直線に格納庫へ続いており辿って行きあっさり着いた。
だが中には敵の姿はなく変わりなくコンテナが4つ並んでいるのみ。
「血痕も途切れ姿が見えない。コンテナのどれかに隠れたか——」
格納庫内を見回していると突然扉が閉まる。そして待っていたとばかりに何処からともなく声が響く。
「やっぱりここまで追って来たか。ふん、ご苦労な事だ。わざわざ殺されに来るとはな」
「……無駄な抵抗はやめて出て来い。そうすれば苦しまず仲間達の所へ送ってやる」
「ふん、やはり仲間達は殺されたか。だが俺はまだ仲間の元へ行く気などさらさらない!」
声の後コンテナの1つが内側から勢いよく弾け鉄の巨人が立ち上がる。
「SD……やっぱり乗り込んでたか」
巨人の名はSD《スタードール》
ハイパーリチウムを動力源に動く戦車や戦闘機などの従来の兵器を超えた戦闘力をもった人形兵器。
当然歩兵がどうにか出来る相手じゃない。
SDの胸部に備えられたチェーンガンの銃口が俺に向く。
「死ね!」
チェーンガンが火を噴く。
当たれば粉々の肉片間違いなしの銃弾の雨から俺は必死に走って逃げる。
「そらそら!足を止めると穴だらけじゃすまないぞ!」
走り去った場所が後から粉々に吹き飛んでいく。元々大型兵器を相手取る前提の兵装なのだから当然の結果だが直にその力を見ると恐ろしい。
だが俺は内心安堵していた。
威力はあっても動かし方はど素人だな。無駄撃ちするし俺を捉える事も出来ないのがいい証拠だ。
「もう一度だけ言う。無駄な抵抗はやめてそこから出て来い。そうすれば苦しまずに仲間の所へ送ってやる」
「この状況でまだそんな事が言える余裕があるってか!?なめんじゃねぇ!!」
言葉は届かずか……仕方ない。
「ならもう死ね」
ポケットからスイッチを取り出し押す。
次の瞬間SDが突然のけ反り攻撃を止めさらに数秒後コクピット部分が爆発しハッチがシャンパンの栓の様に飛ぶ。
「悪いが此処にあるSDのコクピットには爆弾を2個ずつ前もって仕掛けさせてもらった。動き出すと外からは手がつけられないんでな」
一つ目の爆弾で大概の人間は死ぬ。
しかし万が一生き延びて悪足掻きされても面倒なのでダメ押しに二つ目。これで死なない人間はいない。
これで30人……仕事は終わりだな。
端末を取り出し連絡をとる。
「地球軍の武器工場を占拠したテロリストの殲滅完了。損害はSD一機のみ。これより本社に帰投します」
通信を終えさっさとこの場から去ろうとした時、ふとコクピットから煙を立ちのぼらせるSDを見て今日自分が殺めた者達の泣き叫び死んでいく姿を事を思い出す。
自分のやった事に対して吐きそうな程な不快感が込み上げ手が震え出す。
「大嫌いだ……こんな仕事」
俺はこの仕事が……人殺しが大嫌いだ。
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