第2話 猛ダイエットの夏休み
「夏休みの間に、20kgダイエットするからトレーニング&食事メニュー作ってって?!あんた、正気!?」
スポーツトレーナー学科に所属している大学2年生の姉、
は、デブ体型主人公たる俺の頼みに仰天して目を剥くばかりであった。
「ああ。夏休み明け女にモテモテになって、高校デビューしてマウントとってくるかのんを見返してやりたいんだ!!
姉ちゃん、頼むよ!!」
俺は、自分とは似ても似つかないスレンダーな美人の姉の足元に土下座をして頼み込んだ。
「う〜ん。そりゃ、健康の為にもあんたには痩せて欲しいと思っていたけれど、急激に痩せるのは、体にも良くないし、今まで体を動かして来なかったあんたに運動トレーニングなんて、こなせるの?
姉ちゃんとしては、何ヶ月もかけてゆっくり体を変えて行って欲しいんだけどな…。」
渋る姉に、俺は汗をタラタラ零しながら、さらに居間の床に額を擦り付けるようにして頼んだ。
「そこを何とか!俺、もうかのんに絶対痩せてやるって啖呵切っちゃって、後には引けないんだよぉ!」
「わ、分かったよ。元春。そこまで言うなら、出来る限り力になるけどさ。絶対20kg痩せられる保証はしないからね。
あと、かのんちゃんとどんなやり取りがあったか分からないけど、お互いムキになってるだけだと思うから、早く仲直りしなね?」
「ありがとう、姉ちゃん!✨✨
かのんの奴は夏休み明けに痩せた俺を見せつけて、へへーって土下座して謝らせた後、どうしてもというなら、仲直りしてやってもいいけどな。」
「えっ。あんた、夏休み中、かのんちゃんと仲違いしたまんまでいるつもりなの?耐えられんの?ソレ?」
「何だよ。姉ちゃんまで!確かに今までかのんは毎日遊びに来ていたけど、夏休み中会わないぐらいどうって事ないよ。どうせ、ダイエットで忙しくて寂しいとかそれどころじゃないよ」
「いや、あんたは良くてもさ…。(かのんちゃんに後で、元春のシャツとか送っといた方がいいかな…。)」
姉にまで、かのんしか構ってくれる奴がいないと思い、俺がムキになって言い返すと、姉は何故か気まずそうな曖昧な笑みを浮かべたのだった…。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇
それから、姉の下で、猛ダイエットが始まった。
「元春!準備体操だよ?ビ◯ーズブートキャンプ2セット!!」
「それ、準備体操なのかぁ?!ぎゃああ!膝キッツう!!」
「元春!呼吸の仕方とフォーム気を付けて、ジョギングあと、10キロぉ!!」
「うおお!!まだ半分なのかぁ?目が霞んで来たぜえぇ!!」
「はいっ。食事はコレ!!」
「ううっ。どうせ少ししか出されないんだろうな…ってええ!?ジューシーなステーキがっ?!こんなの食べていいのかよっ!!」
「糖質制限で痩せる計画だから、しっかりタンパク質は取っていいの!その代わり、ご飯はなし!」
「ほ、ホントだ…。ご飯がない…。代わりに野菜がたっぷり!ガツガツ!うんめぇ~!!
姉ちゃん。俺、これなら、続けられそうだぜ!」
「うん!その調子だよ?元春!」
ステーキ定食(ご飯なし)をドカ食いする俺に、姉も満足げにサムズアップをしてくれたのだった。
それから1週間後ー。
「おおっ。早くも3キロ減!目標まではまだまだだけど、確実に痩せる体質にはなって来てるよ。元春。頑張るぞ?」
「おう!!姉ちゃん!!」
辛いダイエットの日々だったが、成果が数字になって表れて来た事にテンションの上がった俺だったが…。
「ところで、元春。かのんちゃんとは連絡取ってる?何か言ってた?」
姉にかのんの事を尋ねられて、思いっ切り顰めっ面をした。
「ああ?かのん?1日に30回ぐらいメールやら着信やら来て、うるさいから全無視して、携帯の電源切っといた。もう諦めたんじゃねーか?」
『ねえ。そろそろ、私に会いたくなってきたでしょ?ダイエットなんかやめたら?
もっちゃんが謝って来るなら、仲直りしてあげてもいいんだよ?
花火大会とか、海とか、夏は楽しい事がいっぱいだしさぁ…。』
『ね、ねぇ…。そろそろ、本当に私に会いたくなって来たでしょ?分かった。100歩譲って謝らなくても、いいよ。お互い水に流す事にしよう。ダイエットなんか全く必要なし。
もっちゃん相撲部の人達よりは痩せてるよ!
だからさぁ、もっちゃんトランポリンを…。』
『ねぇ……。もっ…ちゃん……。メールみてるんでしょ?わたし…、もう…、あまりにながいロスで、きんだんしょうじょうが…。
おねがいだから、せめて、もっちゃんのすえたようなにおい…を…。ひとかぎ…だけ…でも…。』
自分がマウント取れなくなるからって、そんなに、俺がダイエットするのを邪魔したいのだろうか?
煽るような内容のメールばっかり寄越してくるかのんに、余計に、対抗心を掻き立てられて、ダイエットに精が出ていた俺だったが、それを聞いた姉は、顔色を変えた。
「えっ。それはちょっとマズイんじゃないの?短い返事だけでもしてあげた方がいいんじゃない??」
「ああ?かのんの事なんか知るかよ!俺はダイエットで忙しいんだ。」
「もう、この頑固者が!いいわ、姉ちゃんが連絡取ってみるから!!」
そして、姉はかのんのスマホに電話をしたのだが…。
「あっ、かのんちゃ…。あれ?おばさん?お久しぶりです。元春の姉の栞李ですが、かのんちゃんはご在宅ですか?
えっ…。話せる状態じゃないっ!?
ええっ?!もう何日も飲まず食わずで寝たきりに?
かか、戒名に元春の字を入れていいかって…?!!お、おばさん、泣かないで!?
ちょっと待ってて下さい。すぐそちらに向かいますからっっ!!」
姉は何やら不穏な単語を口走ると、すぐに電話を切り、俺に噛み付くように叫んだ。
「元春っ!!おばさんから聞いたんだけど、かのんちゃんが、あんたと会えない寂しさに耐えきれなくって、倒れちゃって、生死の境をさまよってるって!早く会いに行ってあげて!!」
「はあ〜?あの生意気なかのんが俺に会えないからってそんな風になるわけないだろうが!おばさん巻き込んで狂言でもしてんだろう?姉ちゃん、騙されてんだよ。俺は絶対行かないからな?」
「もう、あんたって子は、どこまで捻てるの!四の五の言わず、取り敢えずそのシャツ脱ぎなさい!!」
「え。うわあぁっ!何すんだよ、姉ちゃん!?」
俺は、汗でべっとり張り付いたTシャツを姉に剥ぎ取られ、悲鳴を上げた。
姉は、そのシャツを手にするなり、鼻をつまみ、よろけた。
「うっわ!汗くっさあい!!れも、これなら、効果が期待れきそうらわ。
姉ちゃん、今から、かのんちゃんのところにひとっ走り行って来るわ!!間に合えばいいんだけど…。」
俺のシャツを片手にきれいなフォームで走り出した姉に俺は慌てて呼び掛けた。
「ええっ!!今日のトレーニングはどうするんだよっ!?」
「知らないっ!!今はそれどころじゃないっ!!勝手にしてなさいっ!!」
「ええ〜!」
取り残された俺は途方に暮れたが、取り敢えず、姉とやっていたトレーニングメニューを
こなす事にした。
「今のペースだと、夏休みまでに20kg減は無理そうだから、練習メニューを1.5倍にしてみるか…。」
俺はそう決意すると、更にきつい内容のトレーニングを始めたのだった。
「ふげっ。ほげっ。フォームは正しくっ!規則正しく酸素を吸って!あと20キロぉ!」
*
「ひ〜。今日は本当にキツかったぁ!」
そして、辛いトレーニングを終え、夕方頃、同じように疲れた様子の姉が帰って来た。
「ふうっ…。よ、よかったぁ…。なんとか命は取り留めたわ…。」
「お、おい。姉ちゃん。大丈夫か?」
玄関口に座り込んだ姉に駆け寄ると、姉は俺を見て、目を見開いた。
「あれ?元春、ちょっと痩せた?」
「ふふっ。そうかもな!姉ちゃんがいない間に今日は激重トレーニングしたんだぜ。」
「ええ〜?あんまり急に運動して、あんたまで倒れないようにしてよ?ハッ。という事は、そのシャツ、汗でびっしょりよね?」
「ああ。だから、今着替えようとして…。わああっ!姉ちゃん、また脱がすなよぉ!!」
キランと目を輝かせた姉にシャツを剥ぎ取られ、俺が文句を言うと、逆に怒鳴られた。
「人の命が掛かってるんだよ?!シャツ取られるぐらい我慢しなっ!!」
「??!!」
理不尽に思いながらも、姉のあまりの剣幕にそれ以上何も言えず、それからは、姉は毎日のように俺のシャツを剥ぎ取り、かのんの家に行き、夕方頃、疲れた顔で昨日剥ぎ取られたシャツ(洗濯済)を返しに来るという日々が続いた。
ちっ。かのんめ!姉という強力な助っ人&シャツを奪い取る為、仮病まで使って、ダイエットの邪魔をするとは、卑怯な奴め!
姉ちゃんも俺の話も聞かず、まんまと騙されて!
二人の行動を理不尽に思えば思うほど、意地でもダイエットをやり遂げてやろうという気概が生まれ、トレーニング&食事制限に熱が入り、それに伴い俺の体重はメキメキ減っていった。
そして、夏休み終了数日前には、体重計に乗りー。
「やったぁっっ!!」
ついに目標の体重20キロ減を達成し、ガッツポーズを取るスレンダーマッチョな俺の姿があったのだった…!
*あとがき*
なお、主人公が行ったダイエットトレーニングは、ギャグ作品として作られた過激なものですので読者の皆様、絶対に真似をなさらないで下さいね…( ;∀;)
(ステーキダイエットは、適度な運動と組み合わせて身近に痩せられた方がいらっしゃいました。
気になる方は、ググってみて下さいね。)
読んで頂きまして、フォローや、応援、評価下さって本当にありがとうございます
m(_ _)m
今後ともどうかよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます