第52話 引き摺られるように帰って行った





 あれから半年の月日が経った。


 あの後ソウイチロウ様へ『何故シュバルツ元殿下は極刑ではないのですか?』と、領地へと帰る途中リムジンの中で一緒について行くときかなかったラインハルト陛下へ聞いてみたのだが『獅子身中の虫を一気に炙り出す好機だからの。息子には最後くらいは王族として一仕事してもらおうと思ったまでだ』と教えてくれた。


 しかしながらわたくしはいまいち良く分からなかったのだが、そんなわたくしにラインハルト陛下はわたくしにも分かるように噛み砕いて教えてくれる。


 どうやらソウイチロウ様の母国にある『じーぴーえす』からヒントを得て、魔力を原動力とした似たような技術を作り、その試運転も兼ねてシュバルツ殿下には数年前に何を埋め込むのかは教えずに埋め込んでいたのだという。


 本来誘拐などの対策に埋め込んでいたのだが、今回はシュバルツ元殿下の元に集まる貴族を特定する為に敢えて泳がし、その際シュバルツ元殿下を見失わない為に使用する事によって最小限の人数で行動でき、監視している事がバレないようにするのと、万が一監視しているのがバレて逃げられても特定でき、メンバーを変更して監視し続ける事ができるのだという。


 ちなみにこの新しい『じーぴーえす』を使うには『じんこうえいせい』なるものが必要らしいのだが、その技術力はまだないので鳥形のゴーレム数体を王国の空に飛ばして『じんこうえいせい』の代わりにしているのだという。


 その為『じーぴーえす』が使える範囲は王国内だけなのだが、それだけでも十分な広さであり、最悪他国に渡った場合は鳥形のゴーレムを他国に飛ばせば良いだけである。


 そう国王陛下に教えて貰ったのだが、とにかく仕組みはさっぱり分からないのだけれども『シュバルツ元殿下はどこに逃げようと無駄である』という事らしい。


 そして、その結果シュバルツ元殿下を神輿に据えてクーデターを企んでいる貴族を炙り出す事に成功し、その貴族及びそれに加担したシュバルツ元殿下は先日処刑された。


 結局、最初から最後まで自分の事しか考えておらず、だからこそ簡単にそこを付け込まれてしまう人だったのだろう。


 ちなみにラインハルト陛下は約一か月ほどソウイチロウ様が治めているタリム領で、料理は勿論『てれびげーむ』やら『あにめ』に『まんが』を堪能していたところで鬼の形相となった宰相が王都から迎えに来られ、しこたま怒られた後王都へと大量の『まんが』とお菓子を抱え、引き摺られるように帰って行った。

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