第40話 それはそれで嫌いではない


 なのでわたくしはソウイチロウ様の目を見て、今自分が思っている事を隠さずに全て伝える。


「そ、そうか。 シャーリーが行きたいと言うのであればその判断を俺は尊重しよう。 じゃあ、パーティーに行く準備をしなきゃな」


 そしてソウイチロウ様はそう言うと、わたくしの頭をくしゃくしゃと撫でてくれる。


 その撫で方は、まるで大人が子供を撫でるような撫で方でしこばかり不満はあるものの、だからこそどこか暖かく、それはそれで嫌いではない。


「じゃぁ、せっかくだしアイツ等に度肝を抜かしてやろうか」

「……いったいどうやって度肝を抜かすんですの?」

「それは当日のお楽しみだな」


 ソウイチロウ様がわたくしの頭を撫でるのを止めて残念に思っているのを悟られてしまうとまだまだ子供だと思われてしまいかねないので、表情に出ないようにソウイチロウ様へ度肝を抜かす方法を聞いてみるのだが、どうやら当日まで秘密らしい。


 それはそれで気にはなるものの、その日はすぐそこなのでむしろ楽しみが一つ増えたと思う事にする。





 そしてパーティーの二日前、馬車で七日かかる移動距離であるので一体どうするのかと焦っているとソウイチロウ様がパーティー二日前に行くと伝えてくるのでビックリしたのだが、今目の前にあるモノを見て納得する。


 今わたくしの目の前にはあの日『にっぽん』を使用人たちと一緒に観光したときに乗った馬無しの馬車が数台あるではないか。


 しかも今回はあの時の『ばす』という巨大な馬無しの馬車ではなくて、ソウイチロウ様曰く『きゃんぴんぐかー』という家と馬車が合体したような乗り物と『りむじん』という黒くて長い乗り物が一台で行くとの事。


「王都まで約東京から名古屋間……こちらでは馬車で七日程の距離だから普通に飛ばせば四時間ほどでつく距離だが、日本のように高速も無ければ道路が整理されているわけではないから一応二日前から出発しようと思う。一応キャンピングカーで一泊していくつもりではあるのだが一台は俺と男性使用人、最後の一台は女性使用人用として使い分けていく──」


 そしてソウイチロウ様が使用人たちへ説明していき、それが終わると性別で分かれて『きゃんぴんぐかー』とやらに乗っていく。


 ちなみに当日は、この『きゃんぴんぐかー』では行かずに『りむじん』で王城へと向かうらしいのだが、確かにあの馬無しで走る洗礼されたデザインの真っ黒い馬車を見ただけでビックリするでしょうし、そこからわたくしが降りてきたとなれば、きっと面白い表情をしてくれるに違いない。

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