第8話 可哀そうに、怯えているじゃないっ
「ぐぬっ………はぁ~、なってしまったものは仕方がない、か」
そしてソウイチロウ・シノミヤ様はミヤーコへ言い返す言葉が無いのか口が詰まり数秒ほど黙った後諦めたように『仕方がないか』と口にすると、わたくしの方へと視線を向ける。
その表情は申し訳なさそうな、可哀そうな、それでいて幼子に向けるような優しい表情をしており、そんな表情をさせているのがわたくしという事実に胸が締め付けられそうになる。
「シャーリー、良いかい? 君は俺の妻として既に婚姻関係になっているようなのだが、ここから逃げ出したいと思ったのならば、その時は真っ先に俺へ相談するように。逃げ出す手配や、逃げ出した後の生活基盤をどうするかしっかりと考えよう。 それと、俺からは決して手を出さないから安心してほしい。 流石の俺も貴族界で俺がどのような噂を流されているのかは理解しているからな……」
そしてソウイチロウ・シノミヤ様はわたくしの元まで来ると優しい声でそう言いながらわたくしの頭を撫でてくれる。
それと共に、貴族界の悪い噂を信じていたのはわたくしも同じなのでどう返事をするのか困ってしまうのと共に罪悪感を抱いてしまう。
「ほらっ!! 今その話をしても仕方のない事でしょうっ!! シャーリー様も旦那様も逃げ出す時は逃げ出す時に考えれば良いのですっ! それよりもシャーリー様は長旅で疲れていらっしゃるでしょうから先にご飯を食べて、お風呂に入り今日の所は寝てしまいましょうっ。詳しい話は翌日に回して、今日は旅の疲れを取る事が先決ですっ。疲れていては頭も回らないでしょうしねっ!! ほらほらっ」
そして少しだけ気まずい雰囲気になった所でミヤーコが『パンパンッ!』と手を二回たたくと、これからの話は翌日に回して今日は長旅で疲れた身体を癒すことに専念しようと、強引にわたくしとソウイチロウ・シノミヤ様の背中を押して部屋から追い出し、食堂へとそのまま案内してくれる。
食堂に着くと、既に使用人たちが揃っておりテーブルに座って待っていた。
ソウイチロウ・シノミヤ様やミヤーコもそうなのだが、皆見慣れない衣服を着ており、この場所だけみるとわたくしだけ異質な感じに映ってしまい、元から肩身が狭いのがより一層そう感じてしまう。
「ふむふむ、見た感じ高校生くらいでしょうか? 旦那様……衛兵を呼んで来ましょうか? あ、こちらの世界では十四歳から成人という事は警察を呼んできた方が良いですかね? 可哀そうに、怯えているじゃないっ」
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