第14話

 凛音は水と火の玉をお手玉にして試していた。一番使いやすい火と同じように水も使えていた。基本である火水風土は使える。しかし、自分の適性で使いやすさと威力が違った。今まで、火が一番使いやすく威力もあった。今は火と同じように水も扱えた。

 ちょっと、魔法を見た気分だ。神の力は万能のようにも思う。しかし、姫が与えた理由がわからない。水と火の玉を重ねても蒸発と消化で打ち消し合っている。

 五行なら火は水に勝つということで、火は負ける。それを教えるには徳を授けるほどのものではない。他に理由があるのだろう。

 ただ歩くことにヒマをしている凛音は水と火を色々と試しながら時間をつぶした。


「どうだ。理解できたか?」

 姫にいわれた。

 もう勢州に入ろうとしている。もうすぐ、別れがあるようだ。

「まだです」

 凛音は答えた。

 二つの属性を等しく扱えても何が変わるのかわからない。

「本質を見よ。火は動くもの。水は留まるもの。それが理解できた時、おぬしは生まれ変わる」

 意味深な言葉だが、気になる考えがある。

 陰陽である。陰は留まる力。陽は動く力。それが太極図では混ざりあって世界を作っている。水が留まる陰なら、火は動く陽である。その二つを合わせた時、太極が生まれる。

 凛音は手を合わせて、右手に火を、左手に水を出すように玄気を操った。すると、その玄気が混ざりあって変化した。玄気の存在が変化して違う気に変わった。

「ほう。できるようになったか」

 姫は面白そうにいった。

「何ですか? これ?」

 凛音はきいた。

「神気だよ。神の気だ。火の『か』と水の『み』で神となり神気になる」

「語呂合わせですか?」

「そう疑うのもわかるが、それはそういうものだ。おぬしが習熟した時にわかる。今は一段強い玄気を手に入れたと思っておけ。それと練習は続けるように。扱えるようになるまで時間がかかるからな」

「はあ……」

 凛音は姫の真意がわからず、そう答えるしかできなかった。


 凛音は神気を両手で作る。そして、体の中に流して神気に慣れさせた。それを繰り返していくと。体で神気が作れるようになった。そして、その神気を体に巡らせた。玄気とは数段違って扱いが難しいが強さは桁違いだった。身体能力が数十倍は違った。そのため、神気の扱いには慎重にならざる得なかった。まるで暴れ馬を乗りこなすようなものだったからだ。

 しかし、その訓練中も魔物は出る。今度は複数の目を持ったイノシシだ。

 後ろ足で地面をかいて襲いかかろうとしている。

 凛音には修行の邪魔だった。

 凛音は拳銃を思い描く。すると、プラズマでできた形の定まらない拳銃が右手にあった。その拳銃のスライドを意志の力で引いて力を装填する。そして、イノシシに向かって引き金を引いた。

 拳銃の先から一気に広がって、直径二十メートルの弾が射出された。

 イノシシの鼻先に当たり、弾はそのまま突き抜けていく。そして、イノシシの体にトンネルを作ると弾は消えた。

 当たりは静まり返っていた。今起きたことに理解できない人間が多かったようだ。誰も動かない。

「やり過ぎだ。ばかもん」

 凛音は姫に怒られた。

「ですが、邪魔でしたし……」

「感情に任せて行動するな。周りを見る余裕を持て」

「はい……」

 部隊長の宮本は何も言わず、凛音の肩に手を置いた。

 慰められたらしいのはわかったが、魔物をやっつけて怒られるとは思いもしなかった。

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