幽世説話
氷河久遠
第一章 始まりの物語り
第1話
ここでは平穏な空気が流れている。学校とは退屈だが、安らぎを感じさせる。
自分が死んだのはいつ頃だろう?
その頃は携帯電話はガラゲーと呼ばれていた。もちろん、スマートホンはある。しかし、スマートホンの使い方がわからず、ミイラのようなしわくちゃの手で古い技術のガラゲーを使っていた。
凛音は中学進学のご褒美としてスマートホンをお母さんから渡されていた。
時間軸が変だ。死んですぐに転生したら今の年齢にならない。しかし、死後、過去に転生したとしか思えない。年号を見ても前世の自分が死ぬのは何年も先だ。
魂は時間に縛られないのだろうか?
続きをするかのように人生が始まっている。
それだけ自分は間違いを犯したのだろうか?
しかし、これといって心当たりはない。
凛音は誕生日になるたび不安になった。
前世のはずの市郎は生きている。確認しに行けばいいのだが、死んだ地は遠く離れている。それでも、国内で電車を乗り継いでいける場所である。
凛音は夏休みを利用して見に行こうか考える。何の関係もない一人の男子中学生が前世の自分に会うのは危険かと考える。ドッペルンゲンガーの可能性もあるからだ。出会ったら両方とも消滅する可能性がある。しかし、前世の自分には会わなければならないと強迫観念がある。そもそも、会う覚悟はとっくの昔に決めていた。
前世から持ち続ける記憶は欠けている。人生経験の話ならいらないが、術の記憶がおぼろげだ。そのため、前世の自分から受け継ぎ、開発した術のメモ書きが必要だった。あやふやに記憶している術はあちらの世界に行くには必要不可欠だった。
凛音自身、修行は幼い頃からしている。親の反対に抵抗しながらも説得して武術を身に着けた。そして、仙術の修行もしていた。
親からしたら、変な子供だろう。しかし、親に隠れて仙術の修行し、心を鍛えるためと説得して剣術と合気道を習っていた。
そのためか、友達は少ない。放課後に遊ぶ時間を修行に当てていたからだ。親友と言えるような友達はできなかった。
まあ、あちらの世界に言ったら、友人との関係は自然と切れる。それゆえか、仲良くなるのに不安があった。その心持ちでは親友はできなくて当たり前だと思う。
凛音の不安は未来にあった。これから、起こることに自分の心と体が耐えられるかわからないからだ。しかし、普通に生きる道もある。だが、凛音の心はここにはなかった。毎日に現実感がない。あちらの世界の夢を見る方が現実感は強かった。
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