第2話
夏休みになった。凛音は決心して前世の自分に会いに行くことにした。電車を乗り継ぎ目的地に向かった。
そこは村だった。田んぼが広がり家が点々とある。
歩いていると、村の人に頭から足まで見回された。それは、頭を下げてあいさつして去っても見られていた。
凛音は視線を無視して目的の民家に向かった。
目的の家はすぐにわかった。前世の記憶が既視感として道を教えてくれ、目的の家も脳裏によぎったからだ。
凛音は一軒の庭先に立った。
家は平屋建ての木造建築だ。その横に農機具を置いている倉庫が見えた。
凛音は息を吐いた。そして、自分にカツを入れ玄関に向かっていった。
玄関のインターホンを鳴らした。
「はーい」
女性の声が聞こえた。
凛音は戸が開くのを待った。
「開けて中に入ってください」
女性はいった。
凛音は引き戸の玄関を開ける。そして、女性を見た。
「あら、どちら様で?」
女性は母親と同じくらいの年だった。聡明そうな目をしていた。
「田中市郎さんの友人です。ネット上の」
凛音は答えたが、市郎の娘と思わしき女性には理解されなかったようだ。
「ちょっと待ってくれないかな? 君はネット上の友達といったね? それって、本当?」
「はい。水清ければ魚棲まず、と言ってくれればわかると思います」
凛音は無理があると感じていた。しかし、市郎には会わずにはいられない。必要な情報があるからだ。
「ちょっと待ていてくれるかしら?」
「はい」
女性は家の奥へと入っていった。
待つこと十分。女性が帰ってきた。
「おじいちゃんが会いたいといっているわ。でも、あなたは誰なの?」
女性の目には不信感が見えた。
「
「そう。あなたは何歳?」
「今年で十三になりました」
「あまり、おじいちゃんの言葉を信じない方がいいわよ。神隠しにあってから、いっている内容は常識的ではないから」
「それも、知っています。それもききたくて来ました」
「そうなの?」
女性はあからさまに嫌な顔をした。
「オカルト好きには希少な話です」
「あなたは現実を見た方がいいわよ。オカルトは大人になってからたしなむ程度がいいわ」
「すいません。ですが、市郎さんには会って話をしないとならないのです」
凛音はふざけることなく真剣に女性を見つめた。
女性はため息をついた。
「仕方ないわね。おじいちゃんの道楽に付き合ってあげて。でも、オカルトはこれを最後にしてね。スリッパをはいて上がって」
「ありがとうございます」
凛音は玄関を上がって脇にあるスリッパを取って足に通した。
「こっちよ」
女性に指で示された。
市郎の寝床は奥にあるらしかった。
家は廊下で区切られていた。外からの見た目と同じで大きな家らしい。
角を曲がり廊下を進むと一つの部屋の前で女性は止まった。
「おじいちゃん。お客さんが来たわよ」
女性は大きな声でいった。
「早く来てもらえ」
部屋の中から市郎らしき声が聞こえた。
「今日は元気みたい。あなたが来たからかしら?」
女性は苦笑した。
凛音は同じ苦笑で答えた。
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