気になる子を誘う広告
「今度飲みに行こうよ」
空を見上げると、そう書かれた飛行船がゆっくりと青空の中を進んでいた。その下でわたしは古い門の前に立ち、躊躇していた。この門をくぐるべきか、否か。
えい!
勇気を振り絞って、門をくぐる。ここは高級たまご料理店。超一流のたまごを超一流のシェフが調理し、超一流の人間がもてなす最高の店。料理はたまご料理のみ。店は地下にあり、まるで洞窟のように感じられる。正直、とても入りづらい。この超一流の店にはメニューがない。わたしはよくわからないのですべておまかせにした。しばらくすると店員がだし巻き卵を持ってやってきた。店員は落ち着いた口調で、このだし巻き卵に使われているたまごがどんな品種で、どこで取れたものなのか、どういうこだわりの調理をしているのか、事細かに説明してくれたのだけれども、緊張のせいか一切頭に入らなかった。唯一覚えているのは、ただ美味しかったということと、食べる前に写真を撮っておけば良かったという後悔の念だけ。
その後もコース料理は続き、メインディッシュのタコの入った卵焼きを食べるころには、わたしもこの場に慣れてきて、ようやく写真を撮ることができた。
インスタグラムに上げておこう。
わたしは写真をフィルターで加工してインスタグラムにアップロードした。明日その写真が飛行船に掲載される。気になるあの子を誘う広告として。
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