第20話 異世界ファンタジーじゃねぇ!

 ゴミの分別生活一ヶ月目。

 ブルーティアの用意した書物を読んで、色々とこの世界のことがわかった。

 まず、この異世界の名は《マルスルジア》というらしい。異世界ではお馴染みの『スキル』や『加護』といったものがある世界だ。

 しかし、この世界には『魔法』といった概念はなかった。ファンタジーと言えば『魔法』であるのに、これはいったいどういうことか。

 他にも異世界といえば、様々な種族がいるのが定番だ。エルフ、ドワーフ、獣人、龍人族、魔族、などなど。裕人も、この世界もそうだと信じて疑わなかった。

 だが、実際この世界にいるのは、人間族と魔族のみらしい。エルフ娘やケモノ耳や尻尾ありの獣人娘などはいないのだ。

 魔族の中には、そういった外見の者がいるらしいが。

「おかしいだろう! 何でエルフ娘とかドワーフ娘とかケモ耳娘がいないんだよ! 魔法もないし! こんなの異世界ファンタジーじゃねぇ!」

 憤慨していると、ブルーティアに呆れられた。

「……お前たちの世界の男は、女に対する拘りが少々変わっておるな」

「俺たちの世界の人間は想像力が豊かなんだよ! だから、俺たちは異世界に、実在しないはずの種族の女性を描き、浪漫を求めるんだ!」

 人間の性癖は千差万別。そして、異性への欲望は果てしない。ないものは創ればいいのだ。AVなどの豊富なジャンルがそれを物語っている。……それとはちょっと違うか。

 裕人のそんな思考まで読み取ったかのように、ブルーティアは少し気持ち悪そうな視線を向けた。

 人間の性癖はさておき、裕人はブルーティアに尋ねた。

「ところで先生、質問があります!」

「うむ。なんだ? 言ってみるがよい」

 なかなかノリの良い神である。

「ステータスについてなんですけど、何で数値じゃないんですか? SランクとかGランクとかじゃ、その力がある程度しかわからないじゃないですか。数値だともっとわかりやすいとおもうんですけど」

 Sランクが凄く強いってのはわかる。……Gランクがゴミだということも。だが、Sランクもピンからキリまでまでいるだろう。AランクよりのSなのか、Sの中でも上位の部類なのか。せめて、S+とか、S-とかの表記にしてくれればまだわかりやすいのではないか。

「確かに、数値化することで色々と見えてくるものもあるだろう。が、だからと言って何でもかんでも数値化すれば良いというものでもない。生き物に関しては特にそうだ。目に見える数値ばかりを見て、本来その生物の持つ潜在能力ポテンシャルに気づかない可能性だってある。だから、あえてある程度のところでランク分けをしているのだ。お前たちの世界でも、そういう分け方はしているだろう?」

 なるほど、と裕人は納得した。

「じゃあ、次の質問。この世界には、『魔力』というのがあるのに、どうして『魔法』はないんですか?」

「ふむ。お前たちの言う魔法とやらは、魔力を用いて発する力のことだな? 炎や氷や雷に変換して攻撃したり、結界や障壁を作ったり、自身や仲間の能力を上昇させたり」

「そうそう」

「……似たことが出来る『スキル』があるのだから、別に『魔法』いらなくないか? 分ける必要がないだろう」

 ……ごもっとも。確か『魔法』の概念は、『物理法則を無視した力』や『超自然的な力』である。この世界の『スキル』も魔力を使用して同じことができるのなら同じことだと言えた。

 この世界では『スキル』で統一したのだろう。裕人は無理やり自分を納得させた。

「あと、最後! コレが一番聞きたかったこと!」

 裕人はカプセルについているステータス表示の紋様に触って自分のステータスを中空に表示させた。

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