第4話 契約


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トウドウアキラ。十七歳。男。

体力:S 魔力:S 素早さ:S 運:S

称号:極めし者

加護:精霊神の加護

スキル:《危機感知》《一意専心》《身体強化極》《装具の悟り》《英雄鼓舞》《神愛》


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「あ、あ、あ、ありえなーーーーい! 何だこの異常なステータスは! 既に完成しているではないか! 極めし者ってなに!? 何で既に極めてんの? さらに見た事のないスキルもあるぞ! 一意専心? 装具の悟り? 神愛? もうわけがわからなーーーい!」

 大興奮の支配人。よくわからないが、とにかく藤堂はとんでもないステータスだということか。

 そんな支配人に、フレアルドが「落ち着け」と静かに、そして響く声で言った。

「こ、これは失礼致しました。あまりのことに、取り乱してしまい誠に申し訳ございません」

「……まあ、無理もあるまい。これ程の力、語り継がれた伝説にもないやもしれぬからな。さて、それでは早速契約といこう」

 フレアルドは藤堂とカプセル越しに向かいあった。

「トウドウアキラとやら、突然の事で申し訳ないが、お主らは我らの国へと召喚された。元の世界へと帰る方法はただ一つ。わたしと契約を交わしこの世界に君臨する魔神ディアドレイを倒す事だ」

「……いきなり要点だけ述べて、はいそうですか、って納得できるわけないだろう」

「貴様! 王族に向かって不敬であるぞ!」

 違う貴族がそんな事を言った。それをフレアルドは手で制し、

「ふむ。前の召喚者の話を聞くと、お主らの国では異世界召喚が当たり前で、こういった話がよくあり、理解が早い、と伺ったのだが」

「そんな訳ないだろう。……いや、ちょっと待て。確かに物語ではそういう話は多いが、それはあくまで物語であって、現実にはあり得ないんだ」

「だが、実際貴殿らはここに召喚されておる」

 藤堂は口をつぐんだ。それが現在起きている事象なのだから、反論できる筈もない。

 悪戯にしては大掛かりすぎるし、手が混みすぎている。

「まだ受け入れるのに時間がかかりそうだな。まあ良い。とりあえず、契約を済ませて貰う」

 フレアルドは、人差し指に嵌めてある指輪を藤堂のカプセルへと接触させた。

「俺は契約なんてしない!」

「お主たちの意思など関係ないのだよ。それに契約はお互いの為に必要なものだ」

 フレアルドの指輪が赤く光った。と、同時に藤堂の肩辺りにその光が当たった。

「熱!」咄嗟に肩を押さえる藤堂。「な、何をした!」

「契約紋だ。これでお主は、私の所有物となった」

 藤堂が手を退けて肩を見ると、そこには確かに紋様が焼き付けられていた。

「……くそ、強制かよ。もし、俺があんたを裏切ったらどうなる?」

「裏切る事ができない為の契約紋だ。安心するが良い。死にはせん。裏切ろうとしたその瞬間気を失うだけだ」

「……マジかよ」

 その言葉に、藤堂は俯いて、そしてまだガチャのカプセル内にいるクラスメイトたちを見上げた。

「その魔神とやらを倒せば俺たちは元の世界に帰れるんだな?」

「ああ。それは約束しよう」

「分かった。どうやら、あんたらの反応からすると、俺はチート能力を手に入れたっぽいしな。さっさと終わらせてやるさ」

「うむ。話が早くて助かるな」

 確かに話が早い。これが他の生徒だったなら、こんなにスムーズに話は終わらないだろう。さすがは藤堂晃。頼りになる男だ。

 そして、彼は裕人たちがずっと疑問に思っていた事を聞いた。

「一つ聞いていいか?」

「何だ?」

「何でガチャなんだ?」


 フレアルドの話によると、このガチャシステムは、四百年程前に召喚した日本人が提案したものらしい。

 日本での四百年前は、ソシャゲのガチャどころか江戸時代真っ最中だ。ということは、現代社会の人間が、この世界に召喚される時期がランダムらしい。

 今でこそソシャゲによるガチャ熱は冷めてきているが、当時はまさにソシャゲと言えばガチャであり、激レアキャラの能力で全てが決まっていた。召喚者は、そのガチャにハマった一人だったらしい。廃課金者だった彼は、ガチャの魅力をこの国へと伝えた。

 それにこの世界の重鎮が何人か共感し、このシステムを取り入れたという。

「……まったくもって迷惑な話だな」

「確かにギャンブル性があり、それにハマる者も続出したが、それだけではなかった。これは、我々を守る為のものであり同時にお主らを守るためのものでもあったからな」

 異世界召喚をすると、その者は大抵が何かしらのスキルを獲得する。そのスキルがどのようなものかも分からず、そして、使い方を誤ると自身や周囲の者へと危害を加えるものもあるらしい。召喚された時に、パニックを起こして無自覚にスキルを使用することもあったようだ。

 カプセル内ではスキルが発動することはなく、そして、カプセルの外からフレアルドが行なったように契約紋を入れる事で、スキルの暴走を防ぐという意味があった。

「……なるほど。一応これは、俺たちの身を守るためのものでもあったんだな。それならそうと、最初に言ってくれれば……いや、言ったところで信じられなかったかもな」

「聡明だな。話を理解してくれたのなら、先を進めよう。其方らの仲間もいつまでもカプセルの中では居心地は良くないだろう」

 その通りだった。カプセル状なのだから足元は若干丸みを帯びていて、ずっとは立っていられない。フレアルドの説明中に、既に何人か座り込んでいた。

 そして、フレアルドが二回目のガチャを引いて、雪代綾葉のカプセルが排出されて、再び騒然となったのは言うまでもないだろう。

 ちなみに彼女の力は次のようなものだった。


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ユキシロアヤハ。十七歳。女。

力:S 魔力:S 素早さ:S 運:S

称号:極めし者

加護:創造神の加護

スキル:『神物創造』『身体強化極』『神王結界』『神の拳撃』『以心伝達』『スキルの叡智』

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 これらも前代未聞のステータスのようだった。

『神物創造』のスキルは文字通り、神のように何でもイメージした通りに作り出せるというものだろうか。他のスキルも、名前から察するにとんでも能力だというのがうかがえる。

 要するに、彼女もまたチート能力の持ち主だということだった。

 それから何人もの貴族によってクラスメイトたちはどんどんと排出されていき、契約がなされていった。

「今回は当たりが多いな。最低ランクの白でも、スキルが良質だ」

「それにしても、今のところ全員に『戮力協心りくりょくきょうしん』ってスキルがあるな。これはいったい何なんだ?」

「トウドウアキラの『一意専心』と何か関係がありそうだな」

 クラスメイトたちのスキルには、必ず同じスキルが表示されていた。

 そして、残りが裕人だけのカプセルとなった。

「やっとか。長かった……」ようやくここから出られる。そう思った時。

 周囲を揺るがす轟音が響き渡った。

「な、何事だ!」

 次いで、入り口らしき大きな鉄の扉が轟音とともに吹き飛んだ。

 そこから、一人の男が姿を現した。

 その姿を見て、全員が言葉を失う。

 紫の皮膚、四つの赤い眼、額からは歪に捻れたツノが一本生えている。灰色の長い髪、尖った耳、明らかに人外の者だった。

「ば、バカな……な、何故貴様がここに?」

 フレアルドが驚愕の顔を浮かべ、震えた声で問う。

「何故ここにいるんだ! 魔神ディアドレイ!」

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