第13話 妖怪を配信してます
僕の配信生活は始まった。
妖怪を撮影する妖怪配信だ。
あいかわらず、杏ちゃんは僕に動画のことを教えたいらしい。
「えーー。今日もいそがしいの?」
「あ、うん。ごめんねーー!」
僕は、学校が終わるとすぐにネズミ神社に通った。
もちろん、たくさんのお菓子を持ってね。
妖怪たちはお菓子をあげると気持ちよく撮影に協力してくれるんだ。
そんな中。母さんが作ってくれた身代わり用のチャンネルには登録者が一人だけいた。
ウッターのなんでも挑戦チャンネル。そこに登録してるのは杏ちゃんだけ。
母さんが適当に家の本棚や家具を撮影してアップしているだけだ。
なんだけど、杏ちゃんだけは熱心にコメントをくれていた。
『撮影が上手です! 解説を入れた方がもっと盛り上がると思う!』
なんだか申し訳ないなぁ……。
牛田は相変わらずで、
「おい。優斗。チャンネル登録者は増えたかな? ん? 俺なんか昨日二人増えちゃったぞ? これ意味わかるか? つまり全部で三百十四人になったってことぉおお! おまえのチャンネルは秋本一人だけじゃねぇか! ギャハハハ!」
「ちょっと! そうやって優斗くんを笑うのはやめなさいよね!」
ああ、とてもいえないなぁ。
僕のチャンネル登録者は伸びに伸びていた。
もう三十万人もいるんだ。
ふと、クラスの誰かが言う。
「そういえばさ。妖怪配信者って知ってる?」
ギクゥウウウ!
ま、まさか、僕の話題が出るとは……。
「なんかさーー。妖怪の動画を撮ってる小学生みたいなんだけどさ。出てくる妖怪がめちゃくちゃリアルなんだよな。あれ本物かな?」
「ニセモノに決まってるじゃん。妖怪なんているわけないじゃん」
「そうかなぁ? めちゃくちゃ本物っぽいけどな。CGなのかな?」
「多分そうだと思うよ。うちの親もそう言ってたしね」
うーーん。
ニセモノだと思ってんのか。
『クハハ。おい優斗。あいつらバカだな。ここに妖怪がいるのにさ』
と、ランドセルから声を出したのは
「しぃーー! だまってろよ。みんなにバレちゃうだろ」
『だってよぉ。カハハハ。妖怪がニセモノとか言ってんだもんな。笑っちゃうぜ』
みんなにしてみれば、リアルの妖怪をスマホの画面からしか見てないからな。
とても信じられないんだろう。
「ねぇ。優斗くん。誰としゃべってるの?」
ギクゥウウウ!!
「あ、杏ちゃん……」
「なんかランドセルから声が聞こえたような気がするけど?」
「あははは! き、気のせいだよ!!」
「あらそう? じゃあ、ランドセルの中を見せてよ」
「あ、いや……。ははは。そんなの見ても仕方ないよ。そ、それより君の動画の話をしようよ!」
「私の動画? んーー。この前、ダンス動画を出したけど観てくれた?」
「うんうん!」
えーーと、なんとかって曲だ。
「ぼ、ぼーー、なんとか」
「ボカロね。ボーカロイド。ロボットが歌ってる曲よ。それに合わせて踊ってみたの」
「うんうん。可愛い衣装着て踊っていたよね」
「え……。か、可愛い?」
杏ちゃんは真っ赤になっていた。
「うん。すごく似合っていたと思うよ。ダンスも上手かったしね」
これは本心なんだ。
やっぱり将来アイドルになりたい子はダンスが上手だよね。
「んもう! 優斗くんったら! は、は、恥ずかしいでしょ!!」
「え? な、なにが?」
「だって……。か、か……」
「可愛いよね」
「んもぉおお! そういうことをさらっと言うんだからぁ!」
なんだなんだ?
僕、なんか変なこと言ったかなぁ?
「ったく。優斗くんったら……。きょ、今日こそは動画のレクチャーをするわよ」
「あ、じゃあ。僕はいそがしいから! また、明日ねーー!」
「ちょっと、優斗くーーん!!」
家に帰ってお菓子をリュックに詰めなくちゃ。
『なぁ、優斗』
「なに?」
『あの、杏とかいう女の子さ。おまえのことが好きなんじゃねぇのか?』
「はぁ? それはないよ」
『そうかな?』
「だって、あんな可愛い女の子が僕のことを好きになるわけないじゃない」
『そうかなぁ……?』
僕たちは家に帰った。
スマホの充電はオッケー。
リュックにお菓子は詰めました。
「いざ、ネズミ神社に出発!」
無事到着。
長である瓢箪ネズミさんにはお
長は甘い物が好きらしい。
『
ふふふ。上機嫌だな。
僕が神社の中に入るとたくさんの妖怪が集まってくる。
羽織ネズミや金魚童。逆さべったらは大根好きの妖怪だ。
最近、仲良くなったのは
こいつは全身が苔で覆われていて、テニスボールくらいの大きさなんだけど。
全身が緑色でね。見た目は、水中にいるマリモに似てるかもしれない。
千年生きた苔が固まって生まれるんだって。
それがポンポンと跳ねて移動するんだ。
鳴き声は「モキュキュ」
すっごく可愛い。動画でも大人気の妖怪だよ。
僕はスナック菓子を広げてみんなに食べてもらった。
「長。今日も新しい妖怪を紹介してください」
長は栗饅頭を食べながら、
『
そう言うと、床の隙間から大きな鏡が現れる。
『へーーーーい。オラを呼んだだかぁ?』
彼の名前は雲外鏡。
のんびりとした性格の妖怪だ。
『優斗に油ナマズと火吹きリスを案内してやってくれ』
『へーーい。お安いご用で』
すると、鏡には沼の風景が映った。
「あ! タガメがいる沼だ」
『ここに〜〜。油ナマズが〜〜。いるだよ〜〜』
へぇ……。
こんな沼にも妖怪が住んでいるのか。
昔、行った時にはそんな妖怪いなかったけどな。
『へへへ。妖怪はな。妖怪が呼びかけねぇと姿を現さないんだ』
おお、だから会えなかったのか。
移動は雲外鏡からできる。
鏡の中に足をいれるとウニョーーンって中に入れるんだ。
そこはタガメのいる姫井ヶ沼だった。
『おーーい! 油ナマズのじっちゃーーん。いるかーー?』
「わわわ、な、な、なにが起こったの?」
『じっちゃんは泥の中に入って寝てっからさ。出てくる時に地震が起こんだよ』
目の前に現れたのは十メートル以上もあるナマズの姿だった。
「デカーーーーーー!」
僕はスマホの録画ボタンを押した。
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