第16話 魔道具1

 七日が経ったので仕事の帰りに魔道具を取りに行った。

 出来上がった魔道具は赤いブレスレットで黄色い石が一つ付いている。

 赤いブレスレット部分には凝った細工が施されていて、凄く綺麗だ。


 「この石で作ったアクセサリーは、魔力が無い者が付けると只の装飾品だけど、魔力か有る者が付けると魔道具になる」

 店主がカウンター越しに説明してくれる。

 「ブレスレットタイプで使用する方が使いやすいかと思って作ったけど、どう?」


 「凄く綺麗なブレスレットですね」

 笑顔で返答するが、実はブレスレットや時計等、腕に付けるのは好きではない。

 ジャラジャラして邪魔だし、このブレスレットは大きそうだから落とすかもしれない。

 「付けてみて」


 店主に促され、仕方なく腕に嵌めてみる。

 えっ?

 ブカブカのブレスレットを腕に嵌めた途端、小さくなって腕に密着した。

 何かが腕に付いている感じはないし、小さくなったからといって締め付けられてもいない。


 「何?くっ付いた?」

 「魔道具になったのさ。魔力が無かったらブレスレットのままだよ」

 「これ、もう取れないの?」

 「取れるけど、お勧めはしないな」

 

 ??

 「ブレスレットの赤い部分を引っ張って見て」

 言われた通り赤い部分を引っ張ると、ブレスレットは伸びて大きくなった。

 引っ張れば外れるのか。


 そう思って安心した顔をしたら、直ぐ店主に注意された。

 「言っただろ。ブレスレットを取るのはお勧めしないって」

 ホッとした顔から、また緊張した顔に戻ってしまう。

 「そのブレスレットに魔法を付与したら魔道具になる。その魔道具を盗まれたら悪用されるかもしれない」


 盗まれる?

 悪用?

 「魔道具は一度嵌めたら、嵌めた本人の意思でしか外せない。他人は体に付いている魔道具を取る事が出来ない。もし、外した時に悪党に盗まれたら、付与した魔力によってやりたい放題するだろう。魔力量が強ければ町を全滅することも可能だからな。下手すれば国が亡ぶかもしれない。だから、一度付けた魔道具を外す者はいない。」


 恐い。

 絶対外さないようにしよう。

 私が付与した魔道具で町や国に被害が出たら最悪だ。

 緊張するアクセサリーになったな。


 依頼していたナイフも受け取り、代金を払って、店主に挨拶し店を出る。

 部屋や池に行かず、王宮の中央にある高い木の上に立つ。

 ブレスレットは二個から三個位は付与出来ると店主が言っていたので考える。


 この前、野獣に襲われた時、皆逃げるのに必死だった。

 野獣の攻撃を防御出来れば仕留め易くなるよね。

 攻撃を防御できる壁?


 大小作れる、強度の高い防御壁があればどうだろう。

 私が野獣の一撃を防御壁で止めた瞬間、皆が攻撃出来るかな。

 でも、不意を付かれたら防御壁を出すタイミングが解るかな?


 森で野獣が一定の距離に来たら解る、魔法感知も欲しいな。

 出来れば森全体を見ることが出来たらいいかも。

 森全体を見ながら、一定範囲内に魔法感知を張り、野獣が感知内に入って来たら、皆の周りに防御壁を張り安全確保して、野獣を攻撃することができるかも。


 そんな事を考えていたら、突然ブレスレットが光った。

 手背から一周しながら光が消えていく。

 何?


 まさか、今考えていた魔法が付与された?

 えー!

 そうだとしたら、もっと考えたかった。


 付与されてしまっていたら仕方ない。

 王宮内が見渡せるか試してみる。 

 王宮を見ようと頭で考えた瞬間、映像を見ているように目の前に王宮内が広がっていく。


 うっわー!マジ?

 これって携帯電話で立体地図を見ているみたいだ。

 範囲を広げると、山形美緒がベンチに寝ているのが見える。


 おーい!山形!!

 お前もかー!!

 空飛ぶ練習はどうしたー!!

 どいつもこいつも三日坊主ばっかやん。


 更に広げると、中野充が誰かの部屋で楽しそうに話している。

 友達作ったのかな?

 まっ、彼話しやすいからな。

 山形さんは嫌っているけど。


 このまま町の方も見てみよう。

 そう思い範囲をズラして行く。

 私が空から見ていた道や店主の店等、知った町が見えて来る。

 凄いな。


 森までの道を辿りながら、森に入って行く。

 入口には小さな四足野獣がポツポツといる。

 奥に行くに連れて、野獣の体が大きくなるようだ。


 あれ?

 こんな遠くまで見られるなら、他の町まで見ることが出来るかも。

 森を出て、真っ直ぐ進んで行くと、町の名前と思われる標識を発見する。


 これは凄い。

 地図が無くても、行きたい所を調べられる。

 なんと凄い魔法だ。

 まるで千里眼みたい。


 次は防御壁を作って見るため、池に行くとこにした。

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