第85話 『ヤベー奴』人狼
無事かどうかはさておき、文化祭は終わった。
現在4人はのんびり雑談をしながら教室の片付けを行っている。
他の生徒達も余韻に浸りながらだらだらとしている。
「そっちはどうだった? お前らは自由時間どこ行ったんだ?」
「デジタル射的とー、お化け屋敷とー……あ! そう言えば美保ちゃん来てたよ!」
「あいつ来てたのか。うちの愚妹が迷惑とか掛けなかったか?」
「ゆーちゃんの知り合いと喧嘩してたよ」
「……なにしてんのアイツ」
東堂は自分が殺害されそうだった事を踏まえて例の事件を説明した。
どちらかと言えば美保が巻き込まれた側であった事も。
「まぁ、一応喧嘩を止めに行ったなら今度褒めておくか。喧嘩したのは叱るけど」
「麗奈はどうだった? ……その、ずっと座ってたの?」
「お客様にドリンクを注いだわ」
「えっ! 西宮さん接客したの!? ドリンクの淹れ方なんて教えたっけ?」
「いや、こっちも色々あってな……マジでコイツは客に注いだぞ……」
北条は西宮に妹が出来た事と、教室で起きた事件を説明した。
西宮がその妹の頭からドリンクをぶちまけた事も。
「麗奈、お客さまに直接注ぐのはマズいよ……」
「なんか状況似てるねー。ワタシが接客した変な客も倒れちゃってー」
「そうなのね。お互い必死に働いているというのに迷惑な話ね」
「倒れ……ん? ちょっと確認したいんだけど。それってまさか四方堂ガブなんとかって名前のヤツだったか?」
保健室を周回プレイしていたという2人を思い出した北条は、1周目は何で倒れたのかが気になっていた。
そして、似たような事例からまさかと思って確認したのだが……
「そうそー、杏樹ちゃんと……十河灯」
「アイツうちの店も2周目だったのかよ!!」
「えぇ!? 彼女たちまたうちの店に来てたの? ゆーちゃんも居ないのになんでだろ……?」
「彼女の目的は私に会うことみたいだったけど?」
「「「「????」」」」
十河と四方堂の謎の行動に翻弄される4人は状況を整理する事にした。
「えーと……? まず2回倒れたヤベー奴は四方堂なんだよな?」
「どゆこと!? 杏樹ちゃんが倒れたの?? ヤベー奴は十河灯の方だよ!」
「……? 彼女はとても大人しくて礼儀正しい子だったけど?」
「えぇ?? 僕はその礼儀正しい人物に殺されそうになったんだけど……」
食い違う意見から導き出されるのは人物はどう考えても人格破綻者だった。
西宮が居るので配信業については伏せて南雲は十河という後輩に
そして、接客時の対応も踏まえていかに十河がヤベー奴なのかをプレゼンした。
「嘘だろ!? あの子が南雲のストーカー!? 全然そうは見えなかった……」
「え……という事は彼女はストーカーのストーカー……?」
「ん? どゆこと西宮さん?」
純粋な目で疑問を投げかける南雲に全員が目を反らす。
同様に北条も店に並んでる段階から倒れるまで四方堂がいかにヤベー奴だったをプレゼンした。
「あー、西宮さんに妹が出来たってそういうことなんだー」
「なるほど。じゃあ倒れるのもなんとなく理解できるね」
「あーちゃん? 全然理解出来ないけど?」
これらの情報を元に2人を一言で表すなら『狂人』。
4人は彼女たちをそう位置付けた。
普段は常人の皮を被っているので注意が必要である事も判明した。
「……そういえば来年彼女たちは丸女に来るって言っていたわ」
「俺が言うのもなんだけど、来年は
「十河さんと殴り合いの喧嘩してた僕の後輩も来るんだよね……」
「えっ? 変人しか居ないじゃん!」
4人が来年の入学式に怯えている最中、それを遠目で見るクラスメイトたちの視線を生暖かった。
――嗚呼、来年もまたあなたちみたいなのが来るんですね。
4人は自分たちも
***
生徒達が帰った夕方頃――
「万里先生、今日はお疲れ様でした!」
保健室に
「……なんで枕が2個も干してあるんですか?」
部屋干しでぶら下がっている枕を見た千堂が疑問を口にする。
「あぁ。まさか1日に2人も花瓶の水をひっくり返すたわけが居るとはね」
再び怒りを思い出す前に万里は百合と千堂と共に帰る事にした。
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