第6話 誰でもカンタン! 初めての修羅場 ー初級編ー
本日紹介させて頂きますのはこちらの喫茶店です。
駅チカでありながら、閑静な通りにお店を構えております。
簡素な佇まいではありますが、清潔感のある内装と暖かな照明が落ち着いた雰囲気を醸し出しています。
マスターの一ノ瀬さんが自ら海外へと足を運び選んだ豆でブレンドしたコーヒーは絶品で、リピーターが後を絶ちません。
「ゆったりとした雰囲気の中、コーヒーを飲んで穏やかなひと時を過ごして欲しい」
そんなマスターの思いが込められた、
――『喫茶 オリーブ』
オリーブの花言葉『平和』に
***
そんな
静謐な店内は、より空気を重く感じさせる。
丸机を囲み座る4人の少女は四者四葉で、
ホットココアを飲みながら冷や汗を流す東堂
紅茶を飲みながら手がプルプルと震えている西宮
オレンジジュースを飲みながらも目は死んでいる南雲
ミルクティーを飲みながら目を泳がせる北条
――完全に終わっている女子会の一例であった。
尚、マスターは誰もブレンドコーヒーを飲まない事にショックを受けていた。
「あのさ、」
この沈黙を破ったのは憐れな通行人こと北条だった。
「別に全員悪い事してる訳じゃねぇんだしさ、状況をまとめる為にまずは一旦自己紹介とかはどうだ? 俺はそっちの黒髪の名前とか知らねぇしよ」
「た、たしかに。この場にいる皆は僕とゆーちゃん以外初対面だよね?」
「そ、そうね」
「うん」
北条のお陰でなんとか会話が進む。
「じゃあ、はい。言い出しっぺの北条からどうぞ」
「なんでだよ!! 一番関係ねぇーんだよ!俺は! まぁいいや……、俺は北条茉希。下駄箱で黒髪殺そうとしてる南雲見て取り押さえてた通行人だ」
「つまり貴方の監督不行き届きね」
「あ”? おい黒髪、席変わるか?」
「やめなさい!」
現在の席順は丸机を時計回りに、
東堂 ⇒ 南雲 ⇒ 北条 ⇒ 西宮
の順番に座っていた。
南雲と西宮が隣接しないようにする為の措置である。
「黒髪と呼ばれるのも癪だから次は私の番。私は西宮麗奈。東堂さんに告白されてお断りしていたところよ」
「は? あーちゃんフるとか舐めてんの?」
「ヒッ……!」
態度だけデカい小物、西宮は北条を盾にして震えていた。
「……ちなみに、西宮が告白OK出してたらどうなってたんだ?」
真顔の南雲は
西宮の眼前でゆっくりとその可愛らしい小指から順番に指を畳んでゆく。
メキメキ、ジャリジャリと破砕音が聞こえた後、南雲が紅茶の上で手を傾ければ握り拳の隙間からはサラサラとキャンディだったものが零れ落ちる。
「えへへー 西宮さんは甘いの好き??」
「だ、大好きー!!」
――そこには悪魔がいた。
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