四角い修羅場を丸くする!

伊ノ部ひびき

プロローグ

第1話 誰でもカンタン! 初めての修羅場 ー入門編ー


 雲一つない晴天。

 この日、丸井百合ヶ咲女学園は入学式だった。

 春の訪れを告げる花々、鳥たちのさえずり、まだ少し肌寒い風、暖かな陽光。


 この美しい始まりの季節の中、




 ――醜い争いが繰り広げられていた。




 ***



「南雲ストーーーーーーッップ!!!」


「麗奈!危ない!!」


「え?」


 北条の懸命な叫びに気づいた東堂は咄嗟に西宮の手を引く。


「……シッ!!」


 刹那、西宮が居た位置では南雲の手刀が空をいた。



「なっ……、何やってんのゆーちゃん!」


「あーちゃん、手を放してあげて。狙いが反れたら上手に命を奪えない」



 それはまるで屠殺する生き物を苦しめないようにと、ゆーちゃんこと南雲は慈愛きょうきに満ちた笑みを浮かべていた。



「麗奈はさっき友達になった子なんだ! ゆーちゃんは何で麗奈を襲おうとしてるの!?」


「あーちゃんがその女に騙されてるからだよ?」


「ど、どうゆこと?」


 まるで会話が通じる気配はなかった。



「はぁ……、はぁ……、お前が、東堂だよな? とりあえず、お前が南雲を押さえた方がいいんじゃないか?」


 息も絶え絶えに追いついた北条は東堂に促す。


「そ、そうだね。えーと、君の名前は?」


「北条だ、いいから早く行け!」


「ありがとう、北条」



 東堂は名残惜しそうに西宮の手を放すと南雲のもとへ行き手を握る。


「ゆーちゃん落ち着いて。一回お話しをしよう」


「わ、わ! あーちゃん目を覚ましたんだね!? あの女一緒にる??」


「落ち着こ?」


 北条の目論見通り南雲は無事正気(?)を取り戻す。

 万が一の為、北条は西宮を守れる位置につく。


「随分とエキセントリックなご友人ね」


「うん、よく言われるよ……」


 東堂の表情はやつれていた。



 一呼吸置き、西宮は南雲に向き直り挨拶をする。


「とりあえず、南雲さんでよろしか…「黙れカス。話しけてくるな。」…ったかしら?」


「ゆーちゃん?」


「ごめーん! あーちゃん怒らないで!」


「謝るのは僕じゃないよ……」




「「「「………………」」」」




 4人の間に非常に気まずい空気が流れる。



「と、とりあえずさ、場所移さね?」


「そ、そうね。遠巻きに注目されているみたいだし」


「じゃあ個室付きのカフェにでも行こうか」


「構わないわ」


「カフェデートだね!」



 南雲には誰もツッコまない。



「よかった。知り合いの店が空いてるみたいだから、4人で行くって伝えたよ」


 交友関係を広く持つ東堂は慣れた手つきで場所の確保をする。

 なんとか話が纏まりそうになったのを見て帰ろうとしていた北条は足を止める。


「……ん? ちょっと待て、4人? 俺も含まれてねぇか、それ?」


「何を言っているんだい?」


「いやいや、待て待て。なんで俺も痴話喧嘩に巻き込まれねぇといけねぇんだよ! 全然関係ねぇだろ!」


 このメンツの中で比較的善良な市民が今まさに犠牲になろうとしていた。



「仕方ないわね。私の護衛という大義名分があればいいのかしら?」


「何目線だよ! てか、ホントに震えてんなぁお前!!」


「もう茉希ちゃん大丈夫だよ? あーちゃんのおススメする店は間違いないんだから!」


「そっちの心配はしてねぇよ! てか、なんで俺が駄々こねてるみたいになってんだよ!!」


「安心してくれ北条。もう僕らは棺桶で半身浴する仲だ」


「両足行ってんのかよ! 終わってんなぁ、おい!!」




 こうして地獄の女子会は急遽、開催される運びとなる。

 この現状、事の始まりは遡ること10数分前の出来事であった――




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 初めての執筆なので至らぬ点はあると思います。

 何卒宜しくお願いします。


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