正義

うさだるま

正義

正義


0.

正義なんて馬鹿の戯言だ

悪なんて阿呆の戯言だ

自分の目で調べた事だけを信じろ


1.

「君、ヒーローにならないか?」

初めはそんな怪しい勧誘だった。こんな取り柄のない僕がヒーローだなんて、嘘だと思った。ただ興味があったからほいほいついていってしまった。これがぼったくり店の類だったらと今考えたらゾッとするが、まあ本物だったしいいでしょ。話はトントン拍子にすすんで俺はレッドになる事になった。


「今日から君がレッドだ!この世界を守ってくれ!」


ヒーローの秘密基地みたいな所で司令官に言われる。俺は「はい!頑張ります!」と大きく返事をした。


「ああ、そうだ。レッドにヒーロースーツを支給しなくてはな」


そう言って司令官は部下にスーツをもって来させる。もって来られたスーツは真っ赤でキラッキラのスーツでいかにもテレビでやっているヒーローの格好だった。男だったら絶対誰だって憧れるヒーロースーツに「うわぁ」と声が出てしまう。


「フフ、凄いだろう?このスーツを着れば、パンチは爆発し、脚力は10倍!防御力もピカイチ!国が全力を出して作っているものだからね!」

「はい!着てみていいですか?」

「もちろん、いいとも!」


部下の人に他の部屋に通され、着替える。いや、マジでカッケェ、このスーツ!これで敵を倒して世界を救うのか。俺が世界を救うのか!


ビーー!!ビーー!!ビーー!!ビーー!!


うわっ!なんだ?うるさいな。警報?


「レッド!着替え終わったか!」


司令官が走ってくる


「あ、はい。着替えましたけど、」

「よし!じゃあ指定した場所に今すぐ行ってくれ!怪人がでた!」

「怪人ですか?!わかりました!」

「そのスーツで走れば2分くらいでつく!急いでくれ!レッド!」

「はい!」


息をつく暇もないな。まあいいか。しかし、怪人か。怪人は最近、悪の組織が作ったキメラやクローンの事を指すとテレビでやってた。それで街の安全を脅かすとも。人を平気で殺す力を持っているらしい。気を引き締めていかないと。


「キャーーー!!!」


悲鳴が聞こえる。近いな!


駆けつけるとそこには、逃げていく大勢の人々と人間と同じくらいの大きさのイカが居た。恐らくあれが怪人だろう。


「ふっふっふ、この街を私達の支配下に置いてやるぞ〜!!」

「待て!怪人め!この正義の味方レッドが来たからにはお前を倒してくれる!」

「なにぃ?来い!戦闘員!」


そうイカが言うと黒い服を来た戦闘員達が走って来た。


「戦闘員!レッドの動きを止めろ!その間に必殺技の準備をする!」


そして30人近くの戦闘員が襲いかかってくる。

ただ、このスーツを前に、戦闘員程度の攻撃などノーダメージだ。お返しにこっちのパンチをお見舞いしてやる!


「レッドパンチ!!!」


伸ばした右腕の拳が相手の戦闘員に触れると、大爆発を起こした。塵すら残らない。


「う、うわぁぁぁぁあ!!」


戦闘員はそれでも攻撃をやめない。

俺はパンチをくりだす。

爆発が起こり、戦闘員がまた減る。


「戦闘員!もういいぞ!どけ!」


イカが叫んだ時には戦闘員はもう数人になっていた。


「スクイッドレーザーーー!!!」


黒い極太レーザーが俺の体をめがけて、発射される。避けきれない!


、、、だが、無傷だった。

イカは驚きを隠せていない。

その隙に一瞬で距離を詰め、攻撃する。


「レッドパンチ!!!」

「ぐはぁ!!!」


大爆発が起きる。なんだ。ヒーローって簡単じゃないか。イカを倒した事だし帰るか。


「、、、待てよ、俺も殺していけよ!」


残った戦闘員が言う。


「もう悪は倒したし、別にいいや。逃げな?」

「悪?俺にはよっぽどお前が悪に見えるよ!俺らを毎回平気な顔で殺しやがる!人をなんだと思っているんだ?!」

「人?お前、クローンだろ?」

「ああ、そうさ。俺ら戦闘員は皆クローンさ!だけどお前がその拳で殺した同僚には嫁がいるやつが居た!子がいるやつも居た!クローンだからなんだ?死んでもいいのか?」

「、、、でも、お前らだって他人を危険な目に合わせているだろ?変わらないじゃないか、」

「でもだ?他人を危険な目にだ?お前は何も分かっちゃいない!俺ら戦闘員や怪人がヒーローを、民間人を殺した記録が何回ある?言ってみろ!!!」

「それは、、、」

「言えないよなぁ!!!何故ならそんな記録無いからだ!!!見た目で、偏見で差別して殺してるのは、悪はどっちなんだよ」

「、、、俺は悪くない!お前らが悪なんだ。そうに違いない!テレビだって、司令官だってそう言っていた!」

「なあ、それはお前が自分の目で調べたのか?」

「、、、」

「質問を変えよう、、、どうして国がこのスーツを作っていると思う?」

「それは国を脅かす敵を倒すためだろ?」

「ああ、そうだ。国の邪魔となる団体を消す為だ。テレビだって国の物だ。表現の自由なんてない。」

「、、、話が見えてこないんだが?」

「本気で言ってるのか?!こんなカスに俺らは殺される為に頑張って来たのか!?」



「もういいよ」

そう言って戦闘員は俺の腕を掴んで、そのまま俺の拳を、胸に押し当てた。


爆音の後、

戦闘員の身体が塵になる。


彼の言っていた事はどういう意味だったのだろう。


【完】








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正義 うさだるま @usagi3hop2step1janp

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