第二部【インファクトS】:忘れない
――チリリリ
目覚まし時計が鳴る。
私はまだ起きたくないよ〜。
今日は日曜日だよ? ゆっくり寝かせて……
と、私は眠たい目を擦りながら、手探りでアラームを止める。
カーテンを開けると、眩しい太陽の光が部屋を照らした。
うぅー、朝かぁ……。
私の名は、小鳥遊 深空(たかなし ミア)。
今年高校1年生になる15歳。
性格はよく分かんないけど、優しくて真面目でぐらいと、あとは可愛いけど身長は他の人より低いので、『カワチビ』って呼ばれるかな。
昨日は、入学式があって、学校が終わったあと、友達と一緒にカラオケに行って歌って、それから帰って、お風呂に入って、白く短い髪を乾かして歯磨きして、ベッドに入ったらいつの間にか寝ちゃったみたい。今は朝の7時30分くらいかな? さっきから、お父さんとお母さんが喧嘩してる声が聞こえる。いつもの事だから、もう慣れっこだけどね。
あ、そうだ! 制服に着替えなくっちゃ! えっと、パジャマを脱いで、ブラジャー付けて、スカート履いて、シャツ着て、リボン結んで、靴下履く。よしっ、これでOKだ。
階段を降りて、リビングに行くと、テーブルには朝食が置いてあった。
トースト、目玉焼き、ウィンナー、サラダ、牛乳。うん、美味しそう。
席に座って食べてると、お母さんが話しかけてきた。「ミア、おはよう」「おはよ〜」「ねぇ、聞いてくれる? あのバカ親父、また会社に遅刻するらしいのよ。もう、信じられないわ!」
うちの両親は、父親がSE、母親がプログラマーの仕事をしている。父親は、毎日、仕事に遅れてしまうほど忙しく、母親は、その事で怒り狂っている。
「そんなに怒らないで、ご飯冷めちゃうよ?」「でも、あいつのせいで、どれだけ苦労してるか……」「はいはい、ママ、わかったから、早くしないと、また、遅刻しちゃうよ?」「あっ、本当だ!」急いでパンを口に詰め込み、水で流し込んだ。「それじゃあ、行ってきます!」「いってらっしゃい!」
お母さんは、鞄を持って、慌てて家を飛び出していった。
私は、玄関を出て、鍵を閉めた。
両親は海外出張で土日もいない。なので、私も含めて家は誰もいない。
家から歩いて5分の所にある、私立白桜高等学校、通称【しろ高】に着いた。
門を潜ると、目の前に校舎がある。
周りを見渡すと、生徒達が登校していた。
「おっす、ミアちゃん。」後ろから声を掛けられた。振り向くと、そこには、幼馴染みの優希がいた。
「あ、優希、おはよう」彼は、神崎 優希(かんざき ゆうき)。私と同じクラスで、幼稚園の頃からの付き合いだ。
「どうしたの?何か考え事してたみたいだけど」
心配そうな顔で、私の顔色を伺ってきた。「大丈夫だよ。ただ、ちょっとぼーっとしてただけだから」「なら良いんだけど。悩みとかあるんだったら相談に乗るぜ」
優希は、優しい。昔から、困ったことがあると、すぐに助けてくれる。「ありがと。でも、本当に何でもないの」私は笑顔で返した。「そっか、まぁ、あんまり無理はしないでくれよ」と、言った後、少し間を開けて、「今日、放課後、暇かい?」と、尋ねてきた。「ごめん、今日は部活の見学に行く予定なんだ」中学の時は陸上部に入っていたけど、高校では、何の部活動に入ろうか迷っていた。「そっか、それは残念だな」と、肩を落としながら、教室へと向かっていった。
そして、コンピューターの授業を受けてた。
私達の学校は特科コースと言って、選択したコースに適正すると、授業を受けられるシステムになっている。普通科は国語や数学など、一般的な科目だけど、特科は、プログラミングや、暗号解読、ホワイトハッカー、サーバー管理についてなどの、専門的なことを学ぶ。
先生が黒板に文字を書いていく。「この文字列は、暗号解読の基本となるもので、例えば、A、B、C、Dという4つの単語があったとする。それをアルファベット順に並び替える場合、まず、ABCDEと並べていくと、必ず最後の1つは、Eになってしまう。これが、基本的な並び順である。これを応用すれば、パスワードの解析なども出来るようになるだろう。」
先生が話してる最中、隣の席に座っている男子生徒が、こちらを見て、ニヤリと笑みを浮かべていた。
すると、支給されたPCのホーム画面から大量のファイルで埋め尽くされた。悪戯だとは思うけど、悪戯にしては度が過ぎている。
あーあ、仕返ししーよっ
手際良いタイピングと使い慣れたコードで反撃して、隣の男子生徒に大量の猫の画像を送りつけた。
『あ!? フリーズした!?』
やべ、しまった。拡散攻撃したら、隣にいる男子生徒のPCを壊してしまった。
私は、自分のスマホを取り出し、写真を撮った。
そして、写真と一緒に、文章を投稿した。
「私の可愛い猫ちゃん達です。」
これで、おあいこかな。
その後、授業は終わり、昼休みになった。お弁当を食べようとしたら、女子生徒からPCを持って、慌ててやってきた。
『ミアさん! 電源ボタンが付かなくなったよ〜』
電源ボタンが付かないか……また下手な扱い方したな。と思いつつ、飯を後にして立ち上がり、女子生徒もついて行くように教室を出た。
着いた場所は、電気室。ここに来た理由は、恐らくそのPCの基盤がショートしてる可能性がある。
『どう? 直りそう?』
基盤は無事で、問題はなさそうだ。
「うん、大丈夫。多分、基盤の問題だと思うから、交換するね」
パソコンの裏蓋を開けると、基板の電源ボタンが焼けてた。原因は多分長時間の放置だと思われる。
PCを分解し、基盤を取り出すと、はんだごてを使い、修理をした。「よし、出来た。」
私は、元通りに戻したPCを手渡すと、嬉しそうな顔で、「ありがとう!」とお礼を言われた。
私は、教室に戻り、お弁当を食べることにした。
食べてる途中、また別の女子生徒がPCを持って直すお願いをした。しかも今度はバッテリの配線が見えてると。
「自分で買って」
即断り、女性生徒はトボトボと帰って行った。
学校が終わり、家に帰宅すると、いつものように、玄関前で、優希が待っていた。「やぁ、ミア」「今日は、部活はいいの?」と、尋ねると、彼は、少し悲しげな表情をして、口を開いた。「実はさ、俺、部活辞めたんだよ」
「何で?」
優希にもう一度問うとニャリと笑みを浮かべ、こう言った。
「ミア、お前が好き。だから……」
「無理」
「――あ?」
「私、そういうのは苦手で、恋愛とか、分からないから」
彼の告白を断ると、眉間にシワを寄せながら、私を見た。
「ふざけんじゃねぇよ。どんだけお前に惚れ込んでるか分かってんのか!?」
「だから、それが、私には理解出来ないの。それに、あなたとは、友達でいたいの。だって、あなたのこと、何も知らないもの」
すると、彼は、怒りを抑え、冷静な口調で話した。
「俺は、お前のことなら何でも知ってるぞ」
「え? どうして? 私は、あなたに、自分のことを話したことは無いわよ」
「ああ、そうだろうよ」
そう言うと、ポケットから、スマホを取り出し、画面をこちらに向けた。
そこには、私のSNSアカウントが映っていた。
「なっ!? いつの間にっ! 私のアカウント!?」驚くと、彼は、不敵な笑みを浮かべた。
「ふっ、俺の特技を忘れたか? 情報収集だ。」
「まさかっ! 盗聴器も付けて……!」
「安心しろ、そんなことはしないさ」そう言いながらも、私の身体に手を回した。その瞬間、鳥肌が立った。
「あっ!?」思わず声を上げてしまった。
「ははは、可愛い反応するじゃねえか」そう言われると、私は慌てて、距離を取った。「もう、いい加減にして!」「まぁ、そう怒らないでくれ、今日は帰るとするぜ」彼は、背を向けて、その場を立ち去った。
彼が見えなくなると、私は、SNSアカウントを確認すると、フォロー欄に、【リョウヘイ】の文字があった。
もしかして、私のIDを勝手に調べたの?
「あの男、絶対に許せない」
次の日、優希は学校に来なかった。私は、昨日のことで、まだ怒ってるんだろうと思った。
放課後になり、帰ろうとした時、先生に呼び止められた。
職員室に行くと、担任の先生が、真剣そうな顔で話しかけてきた。
「ミア、君のスマホからこんなメッセージが届いたんだけど、心当たりはある?」と、見せられたのは、私宛の脅迫文だった。内容は、お前を殺すというメッセージが何千件も届いたのだった。
それを見て、ゾッとした。
私の裏アカを晒され、住所までバレている。そして、何より、私を殺そうとしている。
一体誰が、何のために、私を……。
私、何か悪いことしたかなぁ。
家に帰宅すると、優希から電話が掛かってきた。
「もしもし、ミア、大丈夫かい?」
絶対優希が主犯だと、すぐに分かった。
「優希、今どこにいるの?」
すると、彼は、意外な場所を口にした。「お前の家だよ」「え? 家?」
私は、急いで2階の窓を開けると、そこには、確かに、優希の姿があった。
「どうしたの? なんでここに」「あ? 決まってるだろ? お前を殺しに来たんだよ」
そう言うと、家の中に入って来た。「待って、落ち着いてっ!」
私がそう言うと、突然、ドアノブをガチャガチャと開けようとしてる音が聞こえた。
え? まさかね。
そのまさかだった。
ドンドンと扉を強く叩く音が聞こえる。「おーい、ここを開けてくれ」
嘘でしょ? どうして、私の家を知ってるの? もしかして、本当に、私のこと、殺す気なのかな。
私は、恐しいより、何か大切な物を隠さないと、そう思った。すると、私は、目の前にあったノートPCをカバンに隠し、窓に出ようよしたが、部屋のドアが開いた。そこには、優希がいた。「おいおい、逃げるのかよ」
私は、慌てて、部屋に戻り、ベッドの下に隠れた。
どうしよう、隠れちゃったけど、この先、どうすればいいの? 私は、息を潜めて、じっとしていた。
今思えば何でここに隠れたのだろう、そう思ってると、優希は、ゆっくりと私のところえと近付いてくる。
「おーい、何やってんだ〜?」
そう言いながら、私の手を引っ張ってくるのだけれど、「あっ!やめ……」私は抵抗するが、あっさりと捕まってしまった。「や、やめて、お願いだから! 何でもするから!殺さ、ないで……、怖い、の……嫌、だ、よぉ」と、泣きじゃくっていると、上から声が降ってきた。
「IPアドレス008547をデストロイします」
そう言うと優希の足音が消えていった。
あれ、おかしいな、優希はどこに行ったのかなぁ。
すると、今度は、後ろから気配がした。「IPアドレス17390。危なかったところです」
女性らしき声がしたのはノートPCの方からだった。
画面を見ると、私と同じくらいの年齢の少女が映っていた。
「あなたは誰?」と聞くと、少女は答えてくれた。
「初めまして、私の名前は、【アル】私は、中央安全処理機関の管理者です」
彼女は、自分のことを話してくれた。
管理者は、ウイルスの退治、削除の任務をしている。
「あの、管理者、あいつは何者なの? それに、どうして、ここにいるの?」「あの人は、ミアさんを殺そうとしています」
「え?」
「ミアさん、これから、安全な場所に移動します」
そう言うと、管理者は、何かを操作し始めた。すると、私の身体が宙に浮いた。
「わぁっ!」
すると、いつの間にか、私は、外にいた。「ここは、一体」すると、管理者が教えてくれる。「ここが、私の家、そして、私の職場です」「え? ここが? でも、どうやって? え、てか、私の家じゃない?」
「当然です。ここはサーバー【Se05.mnagement.BT】の中の、私の家、私の職場、つまり、電脳世界ですよ」
そう言うと、笑顔の表情を作るが、何処か悲しい顔にも見えた。
私は、その表情を見て、何か、心が締め付けられるような、そんな感じがした。
「ミアさん、あなたには、ここで暮らしてもらいます」
すると、突然、扉が開かれた。そこはバーのようで、中は、とても綺麗で、お酒の匂いもしなかった。「あら、おかえりなさい」そこには、白髪で、眼鏡をかけた女性が立っていた。「ただいま、母様」と、アルは言った。「え?」
私が戸惑っていると、女性は、自己紹介を始めた。「初めまして、私は、アルの母、レイラと言います」
「え、あ、どうも、私は、ミアといいます」
「よろしくね、ミアちゃん」
「はい、こちらこそ、お願いします」
「ねぇ、母様、今日は、大事なお客様が来る日だよね?」
「そうよ、もうすぐ来ると思うから、準備しないと」
「わかりました」
すると、また、誰かが入ってきた。「お邪魔しますよ〜」「いらっしゃいませ、【ソアラ】さん」「お久しぶりですね〜、アルさん」
「はい! ソアラさんは相変わらずお美しいです」
「ありがとうございます、あなたは変わらないわね」
「いえ、僕なんてまだまだですよ」
「あなたは、昔から謙虚なのね」
「そ、そんなことないです! アルさんの方が、ずっとお美しくて、僕は、憧れています」
「あら、嬉しいわ」
三人は楽しく会話している。
「えっと、あの、ちょっといいですか?」と、聞くと、みんな、私に視線を向けた。
「あの、さっきから何の話をしているんですか? それに、なんで、私のことを知ってるの? それに、ここはどこですか?」
すると、レイラが煙草に火を点けて煙を出すと答えてくれた。
「またウイルスがこの世界に入り込んだのよ、それで、私たち3人は、そのウイルスを倒す為に動いてたの」
「そうだったんですか」
「そうだよ。それに、お前もウイルスを倒すために来たんだろう? だから、ここで暮らすんだよ」
「ウイルス? ウイルスがここに? え、でも、ここなら安全じゃないの? だって、電脳世界でしょ、ここ」
私は、少し不安になった。レイラは煙草の灰皿に吸殻を落として、こう言った。
「ここは確かに電脳世界だけど、ここは、電脳世界の中でも特別な場所、ここは、特別、選ばれた人間しか入れない、いわば、聖域のようなところ」
すると、アルは、私の肩に手を置いて、こう言った。
「ミア、君は、選ばれて、来たんだよ」
その言葉を聞いて、私は、少し嬉しかった。
「じゃあ! 私も戦える?」
「それは無理ですよ」「どうして?」
「ミアちゃん、戦うのは、とても危険なの、死ぬかもしれないのよ」
「でも、私は、ウイルスと戦いたいの!」
レイラが、口を開いた。
「ミア、よく聞け、ウイルスと戦うということは、命懸けの戦いになるの、それに、今、ウイルスと戦っている人たちも、死に物狂いで戦っているの、あなたも、そうなりたくないでしょう?」
「それでも、戦います! 私、強くなりたいの! お願いします! 私を、仲間に入れてください! お願いします!」
頭を深々く下げると、煙草を火を消し、レイラは、私の頭の上に手を置いた。
「わかった、ミア。お前の実力がどれほどのものなのか、把握してないが、それ程の覚悟があるのなら仲間になってもよい」
「本当!? ありがとうございます!」
「ただし!――お前が想像してるより、遥かに過酷で、残酷で、苦しい戦いになる、それに、ウイルスを倒せるかどうか、わからないぞ、いいのか?」
「はい! 大丈夫です! 頑張ります!」
頭をもう一度深々く下げる。レイヤは立ち上がると、アルが慌てて、レイラの腕を掴んだ。
「いいのですか? お母様、もし、ミアが死んでしまったら、レイラ様に責任がありますよ? それに、ミアはまだ、子供、こんな子に、ウイルスと戦わせるなんて、あまりにも、無謀すぎやしないですか? 私には、理解できません」
「アル、お前はずっと昔から、そうやって、甘やかし過ぎた結果ウイルスに譲られてしまったではないか、あの時、私が助けに行かなかったら、お前は死んでいたのだぞ」
「うっ、しかし、それとこれとは話が別では?」
「違う、同じだ、それに、彼女は、もう、立派な大人、自分の意思で行動できる、それが、どういうことか、わかるか?」
「わかり……ました」
「よし、それで良い」
そう言葉を説明し、ドアを開けて、外に出てしまった……。
「ミヤさん、それでは施設内を案内しますね」
「はい」私は立ち上がり部屋を出た後、アルとすれ違った瞬間、アルは小声でこう言った。
「ミアさん、気をつけて下さい、お母様はとても厳しい方なので」
私は笑顔でこう言った。
「はい! 分かりました!」
「ふふっ、元気な子ね、まるで昔の新人さんと大違いな人ね」
「新人さん?誰のこと?」
「えっと、その、あ、あなたと同じ、新人さんですよ」
「へぇーそうなんですねぇ」
「は、はい、そ、そうなんですよぉ」
新人さん……。此処に居たのかなぁ、会えるといいけど。
ミアの部屋を出て、廊下を歩くと奥には看板に貼ってある骸骨マークに、赤い血の色で書かれた、【chemical products】の文字。
ここでアルは立ち止まり、指を指して、説明してくれた。
「あれが、元々ウイルス対策の薬品を取り扱っている場所です、今は薬品が散乱して入ることができない状態になっているのです。何時になったら入れるようになるかしら」
と、アルはため息をついた。私も同じように、はあっと、ため息をつき、アルと一緒に歩き出した。
しばらく歩いていると、また、扉があった。
アルはその扉を開けると、そこは、広い、倉庫だった。
そこには、様々な武器や、弾薬など、沢山の物が、置かれていた。
すると、アルは倉庫の段ボールを漁り始めた、そして、何かを見つけたらしい。懐かしそうに見つめ、気になった私はアルの側に立ち止まる。
「懐かしいな、極秘資料にあの人のサインが入ってるわ、まだ、あったなんて……」
と、独り言を言いながら、私に渡してきた。
サインには、【Spijun】と書かれている。
一体誰なのか分からない。
中を開いてみると、変な暗号で書かれていた。
全く分からない、これじゃ読めないよ……。
そう思いつつ、私は本を閉じようとした時、アルが慌てて本を取り上げた。
アルは私の耳元で小声でこう言った。
「ダメですよ、勝手に見ちゃ、この方は、凄い方なのですから」
そう言い、私は素直に謝った。
アルは微笑み、こう言った。
「まあ、良いでしょう、では、次に行きましょうか」
そうして、アルの後について行った。
しばらく歩いていると、アルは立ち止まった。
目の前には、床に寛いで酒を飲んでいる女が一人居た。
その女は、アルの姿を見ると、手を振った。
「おっすー。久しぶりぃー、元気にしてたぁー?」
「ええ、おかげさまでね、今日もお酒ですか?」
「うん、そうだよぉー、あー、昔はもっと働いてたのに今は仕事が無いからねぇ、暇すぎて、こうして、アルの家で、毎日、晩酌をしてるんだよぉー」「へぇ、そうなんですねぇ」
「あのー、この人って誰なんですか?知り合いの方なんですかアルさん?」
アルは、呆れた表情をし、こう言った。「彼女は、私の上司です、名前は、アリサです」
「ふぅん、そうなんですねぇ、よろしくお願いします、アリサさん!」私は挨拶すると、アリサさんは、私を見つめるが、また酒を飲もうとする。
アリサは、私に指を指して、アルに聞いた。「あの子さ、何処の子なの?なんか、見たことないんだけど、新人さんかな?」
アルはため息をつき、「新人ですよ、今、研修中で色々教えてるんですよ、まだ、全然、戦力になってませんが、これから、強くなると思いますよ」
アリサは、話を聞いておらず、酒をガブ飲みしていた。しかも、シッシと追い払うような仕草をした。
私は、アリサの態度を見てムッとした。アルも察したのか私の手を引っ張りアリサから離れた。
「アル、また手開いたらお願いね」
アルは、はいはいと、返事をする。
そして、アルと私は、歩き出した。
扉が開くと人は誰も居らず、静まり返っていた。
そこには、パソコンが沢山置いてあった。ここは、ウイルス対策やセキュリティ強化など行う場所だ。私は辺りをキョロキョロと見渡すが、特に変わった様子は無かった。すると、アルは、パソコンに近づき、何かを探しているようだった。
アルは、パソコンを弄り始めた。何かを見つけたらしく、それを私の方に持ってきた。それは、一枚の写真だった。写真には、二人の人物が写っている。一人は、アルで、もう一人は、赤色の髪にコートを着た女性だった。
私は、写真をじっくり見ながら、アルに聞いてみた。「これは、何ですか?アルさん」
アルは笑顔で答えてくれた。
「これはですね、昔の写真です、私が、まだ、この組織に入る前の頃の思い出の一つですよ。この子は元々スクラップから作られたアンドロイド、仲間で、家族のような存在でもありました。この子が居なければ、今の私は、ここにはいませんでしたからね」
アルは懐かしむような顔をしながら、そう言った。アルは更に続けた。
「今は居ませんけどまた会えたら良いなって思ってますよ、それに、この本を読んでくれたあなたにも感謝してるんですよ。ありがとうございます」
アルは、頭を下げて礼を言ってきた。
私は照れ臭くなり、顔を背けた。
アルは微笑み、こう言った。
「では、そろそろ、行きましょうか」
アルは、部屋を出て、私も後について行った。しばらく歩いていると、豪華な木の扉が目の前にあり、アルが開けてくれるとそこは食堂だった。中には、様々な料理が置かれており、食欲を唆る匂いが漂っていた。テーブルには、既にアリサとソアラさんが座っており、私達が来るまで待っていたようだ。
ソアラさんは、私を見ると、目を輝かせていた。
ソアラさんは、席から立ち上がり、私の前に立ち止まった。
ソアラさんは、満面の笑みで私に話しかけた。
「うわぁー! 新人さんが来てくれた! どうぞどうぞ、ここに座って!」
ソアラさんは、自分の隣の椅子を引いて、ここに座りなさいと言わんばかりに手招きしている。
アルは、呆れた表情をしていた。
私は、言われた通りに、隣に座った。
ソアラさんは、ニコニコしながら、料理を食べ始めていた。しかし、アリサさんは私には興味なく、料理を口に運んでいた。アリサは、食べ終わると、食器を置き、立ち上がった。
アリサは、私の方を向き、「新人ちゃん、訓練所に行くわよ」と言い、私の腕を掴み、引っ張っていく。
アルは、「新人に怪我させないでね」と心配していた。
アリサは、「分かったか分かったか」と自信たっぷりに言うと、私は、引きずられていく形で、連れて行かれる。
ソアラは、手を振り、バイバーイと、笑顔で見送ってくれた。私は、手を振り返すと、ソアラは嬉しかったのか、手をブンブン振っている。なんだか子供に見えてきた。
私は、ソアラさんに心の中で、ごめんなさいと謝りながら、連れていかれた。
訓練場に着くと、そこには沢山の人が居り、皆、思い思いの訓練をしているようだった。射撃訓練や、格闘術、他にも沢山あり、見ているだけで、飽きなさそうだ。すると、アリサは、何かを見つけたらしく、それに向かって、走り出した。
アリサが向かった先には、一人の男性がいた。その男性は、白髪のオールバックで、体格が良く、顔立ちはかなり整っていて、身長は180cmはあるだろう。アリサはその人に、声をかけた。
「久々ね」
すると、アリサのお兄さんはこちらを見て、近寄ってきた。
「おっ上司、久しぶりです、お元気でしたか?」
お兄さんの笑顔は、とても眩しく、太陽のように感じられた。彼は、私の方を見るなり、不思議そうな顔をして、首を傾げた。
「この人は誰ですか?新しい部下ですか? でも、俺の部下は、もう居ないはずじゃあ」
「馬鹿野郎、こいつは新人だ、お前の後輩だ」
アリサは、怒りのこもった声でそう言った。
お兄さんは、納得してくれたようで、自己紹介をしてきた。
「俺は、ジェネットだ、よろしく」
お兄さんは、握手を求めてきたので、私もそれに応じた。
「ほんじゃ、こいつを頼んだ」
「り、了解です」
アリサはお兄さんの肩を置き、去っていった。私とお兄さんだけが、取り残された。
お兄さんは、私の目を見つめ、こう言った。
「新人、まずは、体力測定からだ」
お兄さんは、私に手を差し伸べた。私は、その手を握り、握力、背筋力などの身体能力を測定していった。結果は、全て、基準値以上だった。
「ふむ、中々やるじゃないか」
「え!? 凄っ!」
私は、嬉しくなり、思わず叫んでしまった。
私は、次は何をすればいいのか聞いた。
お兄さんは、「次は戦闘訓練だ!」と言い、訓練場の奥へと歩き出す。私も後について行くと、そこは、体育館よりも広く、かなり広い場所に出た。
お兄さんは、訓練用の木刀を手に取り、私に差し出してくる。私はそれを素直に受け取った。そして、構えて、戦闘準備をした。
私は、お兄さんに、戦闘開始の合図を出す。屈強そうな男の相手を見ると手が震えて、まともに戦える気がしないし、自信がない。でも結局やるしかないのだから、覚悟を決め、戦うことにした。すると、お兄さんは、こちらに走って向かってくる。どうやら先手必勝らしい。
私は、慌てて、剣を構える。すると、お兄さんは、目の前まで来ており、そのまま、剣を振り下ろしてきた。私は、剣を握りしめ、決死の覚悟で剣を振った。すると、なんと、偶然にも、相手の攻撃を防ぎ、攻撃を弾くことが出来たのだ。だが、その後すぐに、腹部を蹴られてしまい、後ろに飛ばされてしまった。でも不思議と痛くない。きっと手加減してくれているからだろう。
お兄さんは、余裕そうな態度でこちらを見て笑っている。
お兄さんは、こちらに向かって走ってくる。今度はさっきより早く感じる、が、隙だらけだなと思い、お兄さんの首元めがけて、剣を振るう。高速で振るわれた剣は、お兄さんの首元に止まり、風圧で髪が揺れる。お兄さんの表情は、先程とは打って変わって、とても真剣なものになっていた。
「新人、お前、何者だ?」
お兄さんは、私の目をじっと見ながら聞いてきた。
「私は、ただの新人ですよ?」
私は、おどけた様子でそう答えた。
「本当か?なら、なぜ、俺の攻撃を避けれたんだ? お前は本当に新人なのか? お前の実力を疑ってしまうぞ」
お兄さんは、まだ納得していないようだ。
「いや、ほんとですって」
「嘘をつくんじゃない」
お兄さんは、私のことを疑いの目で見てくる。
お兄さんは、私のことを信じてくれなかった。
何も超能力とか使ってないし、普通の新人なんだけど、どうして信じてもらえないのだろうか。
私が困り果てたその時、後ろの方から、誰かの声が聞こえた。
「ジェネット、新人のミアは、確かに新人だ、それは間違いない」
声の主は、アリサだった。アリサは、ジェネットの隣に立つと、ジェネットは、アリサの顔を見つめる。
「ほう、アリサ、何故、そんなことが分かる?」
アリサは、冷静沈着にこう言った。
「勘だ」
「まじか」
お兄さんは、唖然としている。私も、正直、驚いた。アリサ、恐ろしい子!
「でもこいつは、はったりとかイカサマとかしてないぜ、私もこいつと戦いを見て分かった、こいつはかなり強い、だから、大丈夫だと思う」
お兄さんは、アリサの言葉を聞いて、安心したのか、「ふぅー」と息を吐いた。そして、こちらに向き直ると、また、話し始めた。「すまない、ミア、少し取り乱してしまった、俺は、君を信じるよ、君は、紛れもない新人だ、これからよろしく頼む」
私は嬉しくなって、「はい!」と返事をした。お兄さんは、微笑むと、訓練場を出ていった。どうやら、今日は、これで終わりらしい。すると、アリサが、こちらに向かって歩いてくる。私は、緊張しながらも、アリサのことを待った。すると、アリサは、私の目の前まで来て立ち止まる。すると、顔を近付き、睨んできた。
「お前、何処から来た?出身はどこだ?」
いきなりの質問に戸惑ったが、すぐに答えることにした。
「日本です」
アリサは、さらに、問い詰める。
「本当の出身地は?」
本当の出身地なんて分からない。だって、ここが現実なんだから。「東京です」
「全員分からん」
「日本人」
「日本人は皆、同じ顔に見えるから、分からん」
アリサは、私の目を見ながら、何かを考えている様子だ。
「お前、何歳だ?」
「14歳です」
「誕生日は」
「7月13日」
「近いな」
私は、この会話に違和感を感じた。なんだろう、凄く嫌な予感がする。
「お前、親はいるか?」「はい」「兄弟や姉妹は?いないのか?一人っ子なのか?両親は健在なのか? ―――」
アリサは、早口でまくしたてるように聞いてきた。私は、答えられずにいた。
「答えられないのか?なら、答えられるようになるまで、聞いてやる」
アリサは、私の胸ぐらを掴み、壁に押し当てる。
「ぐっ……」
苦しくて声が出てしまう。アリサは、そんなことはお構いなしだ。
「言っておこう。何故この世界が一度崩壊したのか。それは、お前のような奴がいるからだ。お前みたいなクズがのうのうと生きているから、人類は滅びかけたんだよ。お前は、人の命を軽視している。お前は、他人に興味がない、だから、平気で見捨てることが出来る。
それに、お前は、人を傷つけることに躊躇しない、だから、殺人鬼と呼ばれる」アリサは、私のことを睨みつける。
私は、アリサの目を見た。その目は、とても悲しげだった。まるで、昔の自分を思い出してるかのように……。
アリサは、続けて話した。
「どんなに実力があっても天才でも、そんなんじゃ、意味が無い。仲間を守れないぞ。そんなことで、よく、今まで生きてこれたものだ」
私は何も言い返せなかった。確かにそうだと思った。
私が、黙っていると、アリサは手を離してくれた。そして、私から離れていった。私は、その場に崩れ落ちた。そして、アリサの言ったことに、心当たりがあった。私は、いつも、一人で何でも出来ると思って、人の力を借りず、なんでも、解決してきた。その結果、私は、周りの人達を見下すようになってしまった。私は、自分のことが嫌いになった。こんな私は、もう、生きる価値なんて無い。そう思った。
訓練場を出ると、アリサは、私に、「明日、また来い、それまでに、答えを用意しておくことだ。」と言って、去っていった。
その時丁度アルが廊下を通りかかったので、事情を説明した。すると、アルは、「アリサの言う通りだよ、君は、他人の気持ちを考えたことがある?君の行動は、いつか、君自身の身を滅ぼすことになる」と言った。
アルは、私の手を取り、立ち上がらせた。
「まずは、アリサと話し合ってみて、それでも、君の気が済まないのであれば、もう一度、ここに来るといいよ」
と、微笑んでくれた。
「うん、ありがとう」
私は、お礼を言うと、部屋に戻った。ベッドの上に横になると、今日一日の出来事を振り返ることにした。ミアの過去。
ミアは、昔、両親と姉の4人で暮らしていた。しかし、ある日、姉は、何者かによって殺された。犯人は、まだ、捕まっていない。姉は、ミアが、10歳の時に、死んだ。何も悲しさとか寂しさとか感じなかった。姉が死んだ日も、ただ、学校に行って帰ってきたぐらいにしか思わなかった。姉が死んでからというもの、両親は、姉のようになれと、厳しくなった。姉は、頭が良く、運動神経抜群で、皆から好かれていた。姉がいなくなった今、両親は、姉が、どれだけ素晴らしい人だったかを語り始めた。
さほど興味ないのに、姉が、いかに素晴らしかったかを聞かされた。それから、姉みたいになれと毎日言われ続けた。まぁ、そこまで苦痛ではないけどね。だって、姉は、凄く優しい人だし、それに、姉が亡くなった時、葬式にも、顔すら出さなかった。そんな親と暮らすより、今は、アリサ達と一緒にいる方が楽しいし、安心できる。でも、アリサ達は、私のことを、いい目で見てくれない。ミアは、ため息をつくと目を閉じた。
ミアの部屋では、ミア以外の全員が集合していた。ミアが、いない中、ソアラのこと、ずっと、考えていた。
あ、そうだ。ソアラなら何か知ってるかもしれない。
ミアは、バーに居たソアラに話しかけた。
「ねぇ、ソアラ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
ソアラは、振り向いた。
「ん?なに?」
ミアは、ソアラに質問をした。
「私のことどう思ってるの?教えて」
ソアラは、少し考えて、こう言った。「とても素晴らしい人だと思うよ」
ソアラは、ミアの肩に手を置いて、笑顔でそう言った。
「えへへ、そっか、ありがと」
私は、嬉しかった。やっぱり、私は、間違っていなかった。そう思った。
次の日、私は、アリサの部屋をノックした。すると、アリサが出てきた。そして、私を見るなり、睨みつけてきた。そして、「入れ」と一言。
私とアリサは椅子に座った。そして、私から口を開いた。
「昨日の答えだけど」
アリサは、話を聞かず、酒を飲んでいた。そして、グラスを机に置くと、私に、「帰っていいぞ」と言った。私が立ち上がろうとすると、アリサは、私に、「待て、まだ話は終わっていない」と言った。
アリサは、話を続けた。
「お前が、ここに来た理由は何だ? ミア」
私は、答えた。
「あなた達が、どんな人達なのか知りたかった、それだけよ」
アリサは、鼻で笑った。「ふん、まあいい、それより、お前は、ここに来て、何をしたいのだ」私は、考えた。私は、ここに、来るべきではなかったのだろうか。でも、来たからには、やりたいことがあった。
「アリサ、あなたの過去を教えてほしい」
「新人にあたしの過去を教える気はないね」と、また、酒を飲み始めた。しかし、今日は、すぐに、飲むのをやめた。そして、真剣な表情で、こちらを見つめた。「じゃあ、あんたのことも、話しなさい」
私は、迷わずに、答えることができた。
「分かったわ」
全ての過去と現在、未来を話した。アリサは、黙って聞いていた。
全てを聞き終わると、アリサは、こう言った。
「それはあんたがただ単に悪いだけだ。それに、その姉っていう奴も、あんたのことをいい目では見ていないだろうよ」アリサは立ち上がり、私の横を通り過ぎようとした時だった。
「でも、そんなこと、どうだって良いじゃない」と、アリサの方を振り向いた。アリサは、立ち止まり、振り返らずに、「まぁ、そうだね」と、そのまま部屋を出て行った。
ミアの部屋では、ミア以外の全員が集合していた。ミアは、バーに居たソアラに話しかけた。
「ねぇ、ソアラ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
ソアラは、嬉しそうに振り向いた。
「はい! 何でも聞いてください!」
ミアは、アリサの愚痴を言いまくった。
「何で私がこんな目に合わなければならないのよ。何言っても全て否定されるし、もう、最悪よ」
ソアラは、うん、うん、と相槌を打ちながら、私の話を聞いた。
「あ、あと、アリサの子供の頃も聞きたくないって言うし」
「……それ、嫌われてるんじゃ……」
ミアは、ソアラに、アリサのことを聞いてみた。
すると、ソアラは、少し考えてから、話し始めた。
「アリサさんのことはよく知らないですけど、でも、多分、ミアさんのそういう態度が気に食わないんじゃないかと思います」
ミアは、「え?」と言った。
ソアラは、「あの人は多分、人を嫌ってますよ」と真剣に答えた。そして、「私も……?」
「恐らく、そうですね」と、悲しげに答えた。
ミアは、ソアラに礼を言うと、アリサを探しに行った。
アリサは、自室で酒を飲んでいた。
私は、アリサの隣に座った。
アリサは、こちらを見ずに、酒を飲んでいるだけだった。
私は、アリサに質問した。
「仕事無くなったのですか?アリサ」アリサは、酒を飲むのをやめて、グラスを置いた。
「うるさい、新人のくせして、生意気なこと言わないで」と、また、酒を飲み始めた。
アリサは、酒を飲み終えると、私を見て、「帰れ」と言った。しかし、ここで引き下がるわけにはいかない。私は、帰らずに、アリサに、真剣に話した。
「仕事無く、ずっとここに暮らしてる原因は私達ではないのです! だから、人を責めないでください!」
アリサは、私の方を睨みつけていた。
アリサは、しばらく黙っていたが、急に、笑い出した。
そして、立ち上がり、こちらを見下ろした。
「お前分からんのか? あのクズのせいでコアを破壊されたんだよ。プラス、CRSに工作ウイルスと認定されて、信頼落ちと本部の解雇、おまけに、借金まで背負う羽目になったのよ!」と、怒鳴りつけた。
それでも、怯まずに、「じゃあ、何でこんな所に居るんですか!?」と、言い返した。
アリサは、一瞬、言葉に詰まった様子だったが、すぐに、「ここしか住めないから」と、言った。アリサは、また、酒を飲み始めた。
ミアは、アリサの部屋を出て、自分の部屋に戻った。ベッドの上に寝転がった。
ミアは、ため息をついた。
アリサ、どうしてあんな奴が、良い人なのかしら。そんなことを考えているうちに眠ってしまった。
翌日、いつも通り、バーに向かった。バーに入ると、アリサが居た。
私は、アリサに話しかけようとした時だった。
アリサの後ろの席に座っている3人の男達を見た時だった。3人は立ち上がり、手帳を見せてきた。
「CRSの調査官だ。お前は何故ここにいる? 不法侵入により、監視と退去を余儀なくする」
私は、「え?」と、驚いた。アリサは怒りを露わにし、問い詰めた。
「ふざけんな、出てけよ、この犯罪者共が」
調査官達は、アリサの言葉を無視して、私に、銃を向けた。
私は、怖くなり、震えながら、その場に座り込んだ。
アリサは、私を庇い、両手を広げた。
「こいつは関係ねぇだろ?それに、私が何をしたっていうんだよ」と、叫んだ。私は、アリサの服を掴み、「やめて、アリサ」と言った。アリサは、私の手を振り払い、前に出た。そして、胸ぐらを掴んだ。
「てめぇ、いい加減にしろ、あたしを誰だと思ってるんだ?」と言った後、手を離して、床に倒れこんだ。アリサは、苦しそうに咳き込み始めた。
「中央安全処理機関の特別管理戦闘班。A46825だろ?」
調査官の一人は、アリサに、「その女達を連れて行け」と言った。アリサと私は、必死に抵抗したが、振り払われ、連れていかれた。
アリサは、調査官達に、「おい、待ってくれ、そいつは、関係ない!」と、叫ぶも、無視され、そのまま、連れて行かれてしまった。
ミアは、アリサが連行されるのを見て呆然としていた。
暫く車に乗せられ、窓から景色を見ると、煙が複数立ち昇る危険地帯にやって来た。
車が止まり、降りるよう促されたので降りた。そこは、廃墟のような場所だった。辺りを見渡すと、大きな建物が見えた。
建物に入るように指示されたので、入ると、地下に連れて来られた。そこには、地下鉄のような場所だった。ホームに降り、停まった電車や線路にポスターと鉄の破片が落ちていた。
歩き続けて数時間。駅に辿り着くと、駅員室があり、中に入った。中には、沢山の壊れたロボットの遺体や無惨に貫かれた複数の剣がロボットを苦しめさせてる事を物語ってる。
「ウィルスが荒らした場所……」 アリサが、呟いた。
『そう。君達がここの最後の場所である。君達はここで暮らして貰う』
男はそう言うと来た道に戻り、兵士は銃口を向き、後についてく。
姿が消えると、アリサは柱の壁を殴り、拳から血が流れた。
「くそ!! ふざけんなよ!! せめて酒を置いてけこの○○○が!!」
と、罵詈雑言しながら叫び、私は、怯え、アリサの裾を握った。
私は、アリサに、「ごめんなさい……
私のせいで、こんな事に巻き込んでしまった」と、謝った。すると、アリサは、「ミアのせいじゃねぇ」と、アリサは怒りで力尽き、座り込んだ。私は、怖くて泣きそうになった。
アリサは、そんなミアを見て、舌打ちをする。
ミアは、ビクッと肩が震えた。
アリサは、そんな姿を見て、ため息をついた。
すると、ポケットをゴソゴソと探り、取り出すと私に投げて来た。
小さい箱を受け取ったが、この箱は、何?
「【ニュートリタブレット】だ。甘味と酸味、塩味、苦味、旨み、辛みの五つの機能がある。糖分補給に使え、栄養満点だ」と、アリサは言った。
私は、箱を開け、取り出すと、錠剤から甘い匂いがした。
私は、恐る恐る、口に含み、噛むと、口の中で溶け、甘さが広がった。
刺激は控えめで、優しい味わい。
まるで、アリサみたい。
ミアは、思わず笑ってしまった。
アリサは、ミアの笑顔を見て、安堵のため息をした。
暫く歩くと、ドアがあった。
ドアを開けると、中に入ると、そこは、大きな機械に、無数の千切れたコードやケーブルが張り巡らされ、大きなモニター画面が壁に埋め込まれていた。
その部屋の中心に、カプセル型のベッドが、あり、その横には、椅子と机が置いてあった。
その証拠にビデオカメラ置いてある。テープが飛び出てプラスチックの破片も、今もげそうな状態で傷ついてる。
アリサはビデオカメラを観察するが、再度戻した。
「駄目だ、直らない。壊れてる」
と、呟いた。
そんなぁ……
心の中が、どんよりして、泣きたくなった。
なにか方法はないかと考えてると、無性にビデオカメラを直せる自信が湧いてきた。
何故だろう。
不思議と直せそうに思えた。
なんで、そう思うのか、わからない。 そう思った途端、自然と体が動き出し、戻してるビデオカメラを手に取り、器用な手で直そうとした。
「お前、直せるのか?」
「はい」
何故か、出来る気がする。
直したい。
分解していくと基盤とテープは無事で安心した。
しかし、肝心のコードがやられてた。
すると、脳内で、何かが、閃いた。
コードは、どこにあるの? 私は、この、カプセル型のベッドを見る。
そして、確信を得た。
私は、カプセル型ベッドに近づくと、横の、絡まった細いコードを発見。
「アリサ! ナイフ!ありますよね!?」「あぁ、あるぜ」
アリサは、懐から、折り畳み式のサバイバルナイフを取り出し、渡してくれた。
ミアは、受け取ったナイフを、コードに当て、慎重に切っていく。
すると、コードが切れ、基盤に繋げる。あとは、はんだごてだが、ここには無い。
「アリサ、溶かすものない?」
アリサは、ポケットを探ると、ライターを取り出す。
「これでいいか? 」
私は、「ありがとう」と言って受け取ると、アリサは、「まさか、それで、やるつもりじゃねぇよな? 」と、アリサは、私を疑うような目で見つめる。
私は、微笑みながら、大丈夫です、と言うと、アリサは、不安そうな顔を浮かべた。
私も少し不安だった。ライターを間違えて基盤に触れたら焼き切り、二度と使えないからだ。
慎重に、基盤をギリギリに鉛を当てると、すぐ溶けていく。
溶けた鉛に、基盤のコードを繋いでいき、繋ぎ終えると、電源を入れてみる。すると、画面が起動した。
成功だ! やった!
心の中でガッツポーズした。
私は、ビデオカメラにテープを入れると、映像が流れ始めた。そこには、沢山の人が映っていた。皆私達と同じ私服姿だ。
私は、思わず、息を飲む。
これは、一体何なんだ……
画面が切り替わると、今度は、黒い背景に、白い文字が現れた。それは、【ようこそ】と書かれていた。その瞬間、画面は真っ暗になり、中央に、数字が表示された。00:25.00 と、表示されている。
画面は、00:00に変わると、突然、カメラを回転し、画面上に、黒髪ロングの女性が映し出された。その女性は、画面に向かって、話し始めた。
『どうも、CSPAの戦闘部隊です。ここは、ウィルス基地の近くで撮影しています』
と、女性の声が聞こえた。
画面は、その女性の後ろ姿を写す。
カメラが、右下に向くと、そこに、大きな建物があった。
建物は、赤と白のストライプ柄で、大きな門があり、門の前には、武装した兵士達が、立っているのが見える。カメラが、ズームアウトしていくと、兵士が、一人こちらに気付き、手を振った。カメラは、もう一人の兵士の顔に近づくと、兵士は、笑顔でピースサインをした。
カメラは、ズームアップしていくと、一人の男が、門の前に立っていた。男は、茶色のコートを着ており、金髪で、眼鏡を掛けていた。カメラが、男の顔に近づき、男の顔を、拡大して写し出すと、口元が、ニヤリと笑っているのが見えた。
そこで、画面は暗転した。
そして、ビデオは、再生を終えた。
ミアは、ビデオを止め、ビデオデッキから取り出し、元の場所に、戻すと、椅子から立ち上がり、部屋を出た。
廊下を歩いていると、ミアの視界の端に、何かが横切った。
ミアは、視線を横にずらすと、壁に寄りかかって座る、アリサの姿が、あった。アリサは、目を瞑り、腕を組み、眠っていた。ミアは、アリサに近づくと、アリサの頬を指で突いた。すると、アリサは、ゆっくり目を開けると、ミアを見て、欠伸をしながら、「おう、ミアか。」と言った。ミアは、アリサに、質問を投げかけた。「ねぇ、この、ビデオの人達、知ってる?」すると、アリサは、首を傾げ、「知らねぇな」と、答えた。ミアは、アリサに、「じゃあ、ここの施設にいる人なら、誰か、わかる?」と聞くと、アリサは、「あぁ、多分、ソアラか、アルか、それと、レイラじゃねぇか?」と答えた。
ミアは、「ありがとう」と言って、アリサに背を向けると、その場を立ち去った。
ミアは、階段を上り、改札口へと出た。改札口に向かった理由は生存者を探す為だった。誰でもいい、誰か生き残りがいるはず、そう思いながら、改札口を出ると、目の前に、人影が見え、咄嵯に身構える。しかし、よく見ると、人ではなく、人型のロボットだった。人型ロボは、ミアに気づくと、近づいてきた。
ミアは、人型ロボに、話しかけてみた。
「こんにちわ」人型ロボは、機械音で返事をする。
『こんにちは』
人型ロボは、しばらくすると、去って行った。
人型ロボが、去っていくのを見届けると、ミアは、周りに誰もいない事を確認し、歩き出した。
辺りは静まり返っており、広場にも大量のロボットの残骸が散らばっていた。丁度、偶然さっきの人形ロボットが、広場で残骸の破片を採取している所だった。
人形ロボットに近付き、話しかける。
「何してるの?」
人型ロボットは、こちらを見ると、
『データの収集をしているのです』
と、答えた。
私は、人型ロボットが持っている破片を、覗き込むと、それは、ロボットの装甲の一部のようだった。
人型ロボットは、こちらを見ながら、話し始めた。
『貴方は、何故ここにいるのですか? ここは、崩壊後の世界なのに』
私は、少し考えてから、答える。
「私も、分からないの。気付いたら、ここにいて、それで、生存者を探してるの」
人型ロボットは、私の方へ向き、言う。
『そうなんですね。僕は、ここのパーツの回収をしていただけです。では、これで失礼します』と、言い残して、去っていった。
何のパーツを拾ったのか、見てみると、その部品は、細かい電子機器やネジなどの、小さな金属片を外した跡だった。
ミアは、再び、歩き出す。暫く歩いていると、大きな扉が見えた。扉に近づき、開けようとするが、開かない。今度は、ドアノブに手を掛け、引っ張るが、ビクともしない。
どうしようかと考えていると、突然、背後から、声を掛けられた。振り向くと、アリサが立っていた。アリサは、不思議そうにミアを見る。ミアは、アリサに、「ねぇ、この扉、どうやって開けたらいいか、分かる?」と聞くと、アリサは、「こうだよ」
ドアに足を蹴ると、大きな音が響き、同時に扉は吹き飛んでいた。アリサは、「よし、開いたな」と言うと、ミアは、「すごい!」と、目を輝かせていた。
「おい、そんな事より、生存者を探すぞ」と、ミアの手を引き、先へと進んだ。
ミアは、アリサに手を引かれながら、歩いていた。そして、アリサは、ある場所で立ち止まると、「ミア、お前の出番だ」と言った。アリサが立ち止まった場所は、エレベーターの前だった。
ボタンを押しても扉や階の表示がなく、故障してるようだ。
「出来るか?」と、アリサは、ミアに聞いた。ミアは、首を縦に振ると、エレベーターに近寄り、ボタンの蓋を開けた。コードや基盤が埃と錆だらけだ。すると、ミアは、ポケットから、ペンライトを取り出し、スイッチを入れた。光に照らされ、ミアの顔が浮かび上がる。ミアは、ペンライトを口にくわえ、指で機械を弄り始めた。アリサは、その様子をじっと見つめている。
ミアは、機械の配線の一本を引き抜き、それを、床に置く。すると、バチッと火花が出た後、煙を上げ、壊れた。ミアは、また別の線を抜き取り、同じように置くと、やはり、同じ様に火花を出し、煙を上げる。その後、同じような作業を何度か繰り返した後、遂に、全ての線が抜けた。それと同時に、ガタンと、音を立て、扉が開く。
アリサは、感心していた。
「凄っ!? 失敗したかと思ったわ!」
「コードが駄目になってる。だから、一度、リセットする為に切ってもう一度ハンダしたの」
「へぇー! やるじゃん」
アリサは、ミアの頭を撫でた。
「えへへ」
「褒めてないんだけどなぁ」
アリサは、そう言いながらも、満更でもない様子だった。
二人は、中に入ると、中には、大量のケーブルや電子基板があった。しかし、電源は落ちてもなく、問題なく作動しているようだった。
アリサは、「よし、行くよ」と言い、ボタンを押すと、エレベーターは、下に向かって動き出した。
地下に行くと、そこには、沢山のモニターがあり、そこに映っているのは、砂嵐や虹色の羅列だった。
「全て直せそうだね」
ミアは、嬉々として言うと、アリサは、無言で、ミアを見つめ、ミアは、何か変なこと言ったかな? と、不安になっていた。
ミアは、作業に取り掛かると、黙々と作業を始めた。
一方、アリサは、暇なので、部屋の探索を始める。部屋の中には、無数の棚があり、その中には、沢山のディスクが置いてあった。その中の一つを手に取ると、それは、データチップの様で、その表面には、【MZ001】と書かれていた。アリサは、不思議そうに、そのチップを眺めていた。
チップに書かれてた暗号は、アリサの知らない言語で、アリサは、少し考えた後、諦め、元に戻した。暫く歩いていると、奥の方から物音が聞こえてきた。何の音だろうと、音の聞こえる方へ向かう……。
「あれ? 全部壊れてる……」
ミアは、愕然としながら呟いた。
目の前には、大きな画面があるが、それが、全く反応しないのだ。ミアは、肩を落としながら、その場を後にしようとした時、アリサの姿が見えない事に気付く。広い中アリサを探し回っても見当たらなかったので、ミアは、一旦、地上に戻ることにした。
エレベーターに乗り込むと、エレベーターは、再び、上へと上がっていった。
エレベーターは、ゆっくりと上昇すると、やがて止まり、扉を開く。
扉の向こうには、大きな空間が広がっていた。見たことない場所だったので、辺りをキョロキョロと見渡していると、後ろから、トカゲのようなぐぁあという鳴き声が響き渡る。
ミアは、慌てて振り返ると、そこには、緑色の肌をした怪物が立っていた。
ミアは、腰を抜かし、その場に尻餅をつくと、その怪物は、ミア目掛け、飛びかかってきた。ミアは、咄嵯に目を瞑り、死を覚悟したが、いつまで経ってもその瞬間が来ないので、恐る恐る目を開けると、周りにバリアが張られていて、怪物はその壁に阻まれ、こちらに近づけず、悔しそうな声を上げている。
全く能力なんて発動してなく、状況混乱中のミアだったが、ふと、自分の腕を見ると、青い電気のような物が纏わりついており、そこから、電撃が放出されている事に気付いた。ミアは、その手を前へ突き出すと、電撃は、真っ直ぐと伸びていき、壁を貫いて、怪物に命中した。すると、その衝撃で、怪物は、倒れ込み、そのまま動かなくなった。ミアは、その様子を呆然と見ていると、背後から、また怪物の声が響いてくる。今度は複数いるらしく、ミアは急いで、走り出した。しかし、すぐに追いつかれてしまい、複数の敵に囲まれてしまう。そして、怪物達は、一斉に襲いかかってきた!
その時、急に、身体の周りの電流が激しくなる。すると、怪物達が、苦しみ出し、次々に倒れた。ミアは、何が起こったのか分からなかったが、とりあえず、その場を離れた。
しばらく走ると、そこは、行き止まりで、ミアは、引き返そうとすると、突然、ミアの周りに煙が立ち込め、視界が悪くなり、ミアは、慌てふためく。すると、何者かが、剣を飛ばして来て、危機一発避けた。煙が晴れ、相手を確認すると、そこには、仮面を被った赤いフードの人物がいた。ミアは、相手が、自分を狙って来たことに驚きつつも、冷静に分析していた。相手の武器は、恐らく、剣と呼ばれる物だろう。だが、問題は、何故、攻撃してきたかということだ。
ミアは、相手に話しかけようとすると、相手が先に口を開いた。
「お前は誰だ?」
ミアは、どう答えようか迷ったが、素直に答えることにした。「私は、ミアです。」それを聞いた途端、仮面の人物は、笑い出す。「ミア? 嘘だろ? あの女と同じ名前じゃないか!」ミアは、その言葉を聞き、この人物が、何を言っているのか理解出来なかった。すると、相手は、剣が刺さった銃を構え、戦闘態勢に入る。ミアは、焦る気持ちを抑えつつ、構えるが、戦闘経験がない為、恐怖心で、足が震える。そんな様子のミアを見て、男は、「安心しろ。殺しはしない」と言うと、銃のトリガーを引いた。銃弾は、ミアの頭のすぐ横を通り抜け、後ろの壁に当たる。ミアは、ほっとすると同時に、疑問を抱く。何故なら、今の攻撃は、明らかに、ミアを殺しに来ており、もし、当たっていたらと考えると、ゾッとした。ミアは、勇気を振り絞り、男に向かって、拳を振るうが、あっさり避けられ、逆に、男の蹴りをくらい、吹き飛ばされる。ミアは、起き上がると、すぐさま、攻撃を仕掛けたが、簡単に受け止められ、投げられる。
「くっそー」ミアは、悔しそうに呟きながら、立ち上がると、再び殴りかかるが、それも軽くかわされ、反撃を受ける。その後、何度か攻防を繰り返すと、ミアの方が息切れし始めた。ミアは、諦めずに攻撃をするが、全く当たらない。とうとう、ミアは、地面に膝をつくと、呼吸を整え始めた。すると、男が近づいてきて、銃口を向ける。ミアは、必死に抵抗しようとしたが、全く動けなかった。男は、ミアの頭に狙いを定め、トリガーを引くと、ミアは、死を覚悟した。
ミアは、ゆっくりと目を閉じると、銃声が鳴り響く。しかし、痛みはなく、不思議に思い、目を開けると、目の前には銃弾が転がってた。
「何だ?」
仮面の人は、驚いた表情を浮かべる。
ミアも、困惑していると、仮面の人は剣を突き刺した。
ミヤは咄嗟に蹴りを入れ、距離を離す。
仮面の人が、剣を構えると、ミアは、両手を握りしめ、電気を纏わせる。
すると、ミアの体中から電流が流れ始める。
ミアは、その電流を右手に集め、仮面の人に放つ。
電撃は、一直線に伸びていき、手応えはあった。しかし、真上から剣が落ちてきて、電撃をかき消される。ミアは、慌てて上を見ると、仮面の人の姿が消えていた。ミアが辺りを見回しながら警戒すると、急に背中を蹴られ、ミアは、地面を滑っていく。ミアが起き上がり、仮面の人の姿を確認すると、仮面の人は、ミアの後ろに立っていた。ミアは、振り返り、仮面の人を見る。すると、仮面の人は、ミアに向かって、剣を振るってきた。ミアは、それを受け止めると、蹴りを入れ、体勢が崩れたところで、拳を叩き込むが華麗に避けられ、後ろに距離を置いた。
「なかなかやるじゃん。でも、これで終わりだよ」
仮面の人は、そう言うと、もう一丁銃を取り出し、ミアに向ける。ミアは、それを避けようとすると、上空に爆弾のような物が飛んでくる。
仮面の人の動きが止まると、ミアは、一気に間合いを詰め、回し蹴りをくらわせようとする。
だが、その瞬間、仮面の人は、足を掴み、そのままミアを壁に叩きつける。
ミアは、壁に当たった衝撃で座り込むお、仮面の人は、ミアの足を放すと、銃口を向けてきた。ミアは、逃げようとするが、体が動かない。ミアは、死を悟った。
「あれ? その顔……」
仮面の人は銃を下ろし、背を向くとゆっくりとドアに歩き出した。
「待って!」
ミアは、必死に立ち上がって叫ぶが、仮面の人は、止まらない。
ミアは、急いで追いかけるが、追いつけない。
そして、ミアが外に出た時、そこには誰もいなかった。
ミアは、周りを探すが、どこにもいない。
ミアは、呆然と立ち尽くしていた。
しばらくすると、後ろから物音が聞こえてくる。ミアは、恐る恐る振り向くと、そこには、仮面の人がロボットの遺体を漁って何かを探していた。
ミアは、声をかけようとしたが、何故か言葉が出なかった。
ミアは、仮面の人に近づくと、仮面の人は、ミアの方を振り向き、口を開いた。
「なんでここにいるの?」
ミアは、驚いた表情を見せる。
「えっ!? 覚えてないの!?」
ミアは、驚きながら聞くと、仮面の人は、首を横に振る。ミアは、少し考えるような素ぶりを見せ、仮面の人に近づき、話しかける。
「私の名前はミア。あなたは誰ですか?」
仮面の人は、無言でミアの顔を見つめる。ミアは、笑顔で話を続ける。
「ここはどこでしょうね」
仮面の人は、ミアの言葉を無視し、その場から去ろうとする。ついてこいって事かな。ミアは、そう思い、仮面の人の後を追いかける。すると、仮面の人が突然止まり、こちらに振り返った。
「ここはなんの場所か分かるか?お前が知ってるかと思って聞いただけだ」仮面の人がそう言うと、ミアは、辺りを見回す。そこは、見渡す限り瓦礫と死体だらけだった。
「いえ……」
ミアが、小さく呟き、下を向いた。
「――ここはかつて、避難所だった。人々は、安全な場所を求めて、この地下シェルターに逃げ込んでしまった。しかし、ウイルスによって、街は壊滅状態になり、ここも安全とは言えなくなった。だから、ここで生きていく為に、武器を取り、仲間を集めたのであある。だが、ウイルスが蔓延して、感染する奴らが増えていき、どんどんと減っていったのだ……残酷だろ?」
仮面の人は、淡々と喋り始める。でもこの人はあんまし説得力がない。嫌なオーラが半端なくやばい。ミアがそう思っていると、仮面の人は、また話し出す。
「そして、ウイルスが沈静化した後、残ったのは、感染者と私達だけだったっと」
仮面の人は、そう言うと、ミアに銃を向ける。ミアは、慌てて、両手を上げる。
「ま、待ってください! まだ何も聞いてませんよ!」ミアが、慌てると、仮面の人は、銃を下ろした。
「ミア、お前は、どうしたい? これから先、何をするか、何が出来るのか、考えてみろ。そうすれば、答えが出るはずだ」
仮面に伝わる真剣な顔で、ミアに問いかける。ミアは、しばらく考え、仮面の人を見る。
「じゃあ、あなたの事をもっと教えてください。あなたは、私の味方になってくれるんですか?」ミアが、尋ねると、仮面の人は、首を横に振った。
「いや、君の味方でもないし、敵でもないし、どちらにもならない」仮面の人は、そう言い放つと、ミアの横を通り過ぎ、出口に向かって歩き出した。ミアは、その言葉の意味を考え、しばらく立ち尽くしていた。
「あれは一体……どういう意味なんだろ」ミアは、仮面の人が歩いて行った方向を見ながら考えていた。しばらく考えていると、背後から物音が聞こえてくる。
後ろを振り向くと、そこには、仮面の人が立っていた。
ミアは、安心した表情を浮かべ、声をかける。
「もう行っちゃうんですか?」
仮面の人は、ミアの方を振り向き、口を開く。
「ミア、君はどうする?」
ミアは、その言葉を聞いて、しばらく黙り込む。すると、仮面の人は、ミアの目の前まで来て、ミアの目線に合わせるように屈む。
「君はまだ若い。未来は無限大だ。今なら引き返せる。だが、進む道は、茨の道だ。時には、後悔する事があるかもしれない。でも、もし、それでも、進みたいと思うのであれば、俺について来い」
仮面の人は、そう言うと、立ち上がり、出口に向かう。ミアは、仮面の人の背中を見つめながら、何かを考えていた。ミアは、意を決したかのように、仮面の人に声をかける。「あのっ! 名前を教えてくれますか!?」仮面の人は、ミアの方に振り返り、少し間を空けて、口を開いた。
「ジャハト。正体は秘密だ」
仮面の人=ジャハトは、そう言うと、そのまま、去って行く。ミアは、その後姿を見て、小さく呟いた。
「ジャハトさん、ありがとうございます」
ミアは、深々と頭を下げた後、ジャハトの後を追いかけた。
ミアが、ジャハトを追い掛け、しばらく歩いていると、ある建物の前で、ジャハトが立ち止まった。
「何故ついてくる? ついてくる理由は何だ?」
ジャハトが、振り向いて、ミアの顔を見ると、ミアは、少し俯き、申し訳なさそうな顔をする。
「私は、この世界の事を知りません。だから、この世界で生きていく為に、色々教えて欲しいのです」ミアが、そう言うと、ジャハトは、呆れたような顔で、ため息をつく。
「ミア、俺は、お前に、何も教えるつもりはない」ジャハトは、ミアの方を睨みつけ、威圧するように、言い放つ。
ミアは、一瞬怯んでしまうも、すぐに、ジャハトに向かって、反論をする。「そんなのずるいです。私には、あなたしか頼れる人がいないんです!」
ジャハトは、ミアの言葉を聞くと、再び、ため息をつき、口を開く。「じゃあ、お前は何が出来る?」
ジャハトが、そう聞くと、ミアは、少し考え込み、しばらくして、顔を上げる。「えっと、多分、何も出来ないと思います」「だろうな」
ミアは、肩を落とし、落ち込んでしまった。
ミアが、落ち込み、少しの間、沈黙が続くと、ジャハトが話を続けた。
「ミア、これから、どうするつもりだ?」
ミアは、しばらく、考えた後、答えを出した。
「ジャハトさんの手伝いをして、強くなって、この世界を生きていきたいと思っています」
ジャハトは、その言葉を聞き、しばらく、黙った後に、口を開いた。
「そうか、まぁ、せいぜい頑張れよ。でも、俺に付いて来るなら、覚悟しろ。この先、辛い事もある。苦しい事も、悲しい事もある。でも、立ち止まる事は許されない。例え、どんな事が起ころうと、前に進み続けろ。それが、生きるということだ」
ジャハトは、それだけ言うと、その場から歩き出した。
ジャハトさん……
ミアは、ジャハトの後ろ姿を見ながら、心の中で、そう思った。
ミアは、ジャハトの背中を見て、ジャハトの言った事を、思い返していた。
ジャハトさんは、きっと、今まで、ずっと、戦い続けて来たんだろう。
そして、今も、ジャハトさんは、戦っているんだ。
私が、出来ることは、ただ一つ、ジャハトさんの隣に立って、一緒に戦う事だ。ミアは、決意を固めると、ジャハトの後を追いかけた。
ミアは、ジャハトに追い付くと、ジャハトの横に並び立つ。ジャハトは、ミアの方を見る。
「この先は気を付けろ。奴らが待ち構えている」
ミアは、ジャハトの視線の先に目を向けると、そこには、巨大な屋敷があった。
凄い屋敷……
ミアが、そう思っていると、ジャハトが口を開いた。「ミア、今から、あの屋敷に行く。準備はいいか?」ミアは、ジャハトに、そう聞かれ、大きく、うなずいた。
すると、ジャハトの足を蹴った衝撃で門の扉を吹き飛ばそうとした。しかし、ジャハトは、それを手で止めた。
ジャハトは、そのまま、門に向かって、走り出す。
ミアも、ジャハトの真似をするように、ジャハトの後ろに続いて走る。
巨大な扉を吹き飛ばし、手を広げ、急に司会者を演技してた。
「レディースアンドジェントルマン!! 我がジャハト財団最高責任者、ジャハト・ボブ、以後お見知りおきを」
ジャハトが、右手を体に添え、左手を横方向へ差し出す紳士的な御辞儀をする。そう言うと、周りにいた、黒い服の人達が、一斉に青ざめた顔になり、慌てふためく。
何これ?
ジャハトは、そんな周りの様子に構わずに、話を続ける。
「皆様、お忙しいところ恐縮ですが――口封じするため、この場で、死んで頂きます」
ジャハトが、その言葉を言うと、一斉に騒ぎ出し、パニックになる。ジャハトは、それを見ると、笑いながら、話を続けた。
「ご安心下さい。あなた方の命は保証しますよ。まぁ、この私に歯向かったら、分かりませんけどね」
ジャハトは、そう言い終わると、両手を大きく広げ、大声で叫んだ。
「さぁ、始めようか! システムエンジン、【イズリストゥレイント】!」
ジャハトの駆け声と同時に、黒い服の人達を動かなくした。
ジャハトは、そう言うと、ミアの方に振り返り、話しかける。
「ミア、行くぞ」「はい!」ミアは、ジャハトの後ろを付いて行き、屋敷の中に入った。
ミアとジャハトは、屋敷に入ると、すぐに、戦闘態勢に入り、警戒しながら、辺りを見渡す。
ミアは、戦闘経験無しなので、ジャハトの指示に従う事にした。
まずは、階段を探して、上へ行こう。ジャハトは、そう言うと、ミアを連れて、屋敷の奥へと進んだ。
ミアは、その言葉を聞き、ジャハトの後ろを付いて行った。ミアとジャハトは、屋敷の2階まで上がると、廊下に出て、右か左のどちらかに進むか悩んだ。
「分かれ道か……メインコード【クレアヴォイアンス】」
ジャハトは、そう言うと、何かを唱えた後、辺りを見渡した。
すると、ジャハトは、不思議そうな顔をして首を傾げる。
「何だか廊下の奥に複数人の謎の人影が見えるような気がするのだが……まぁ、行って見るか」ジャハトは、ミアの方を振り向き、ミアの手を引っ張り、左の廊下の方に走り出した。ミアは、ジャハトの手を引っ張られ、ジャハトの後について行く。
すると、廊下の先に黒い兵士達が待ち構えていた。ジャハトは、ミアの方を見て、口を開く。「ミア、下がってろ」
ジャハトが、そう言った瞬間、ミアの後ろに回り込みミアを守る様にして立った。
ミアは、ジャハトの背を見ながら、後ろに下がる。何度も連射してきて銃弾がジャハトの方に飛んでくる。
「冷やかしか?」
ジャハトは、そう呟くと、右手を横に振り払う。すると、見えない壁のようなものが現れ、全ての弾を防いだ。ジャハトは、そのまま、銃を取り出すと横に回転して、銃弾を放つ。すると、敵兵達が、次々に倒れていく。
ミアは、ジャハトが、敵の兵士を倒したのを確認すると、ジャハトに駆け寄り、声を掛けた。「ジャハトさん、大丈夫ですか?」
ジャハトは、ミアの質問に答える。「どう見ても、問題無い。だが、この先は、何があるのか分からない。気を引き締めていけ」
ジャハトは、そう言うと、ミアの肩を叩き、先に進んだ。
すると、目の前に巨大な扉が現れる。ジャハトは、その扉に近づき、扉を開けようとすると、扉に鍵が掛かっている事に気付いた。ジャハトは、扉の前で立ち止まり、考え込む。
すると、ミアが、ジャハトに話掛ける。「あの、その扉なら私が何とか出来ると思います。」「本当か?それは助かる」
ジャハトは、そう言うと、ミアに扉を開けるよう指示をした。
ミアは、ジャハトの言葉を聞くと、すぐに、ジャハトに聞いた。「この扉を開けたら、どうなるんですか?」 ジャハトは、ミアの問い掛けに対して、少し考えてから答えた。「多分、この中に、ボスがいると思う」
ミアは、ジャハトの話を聞いて、少し不安になる。「この中に入るの止めませんか?危険だと思うのですけど……」
ジャハトは、ミアの言葉を遮る。「いや、ここで逃げてもいずれは戦う事になるだろう。それに、俺には勝算はある」
ミアは、ジャハトの発言を聞き、驚く。「えっ!?そうなのですか!」
ジャハトは、ミアの驚いた表情を見ると、微笑みながら、「まぁ、見ていろ」と言うと、両手を広げ、何かを念じるようにして、目を閉じる。
すると、大きな音が鳴り響き、扉の鍵が開いた。ジャハトは、目をゆっくり開くと、また、微笑む。
待ち構えてたのはタレットだった。
ジャハトは、その光景を見るなり、ニヤリと笑い、こう言い放った。「やはりか……予想通りだな」赤外線をターゲットに捕らえると、タレットの赤いランプが点滅した瞬間、ジャハトの周りに、大量の弾丸が放たれ、ジャハトは、ミアを抱え、周りにバリアを張る。バリアを跳弾した弾丸は壁を突き破り、屋敷の2階を破壊し、瓦礫が飛び散った。
弾丸の雨は止むことを知らないかのように降り続ける。
ミアは、この状況で、何が起こったのか分からず、戸惑っていた。
ジャハトは、そんなミアの様子を見て、安心させる為に、口を開いた。「ミア、大丈夫だ。俺は死なないし、お前も殺させない」そう言うと、ジャハトは、ミアの頭を撫でる。ミアは、ジャハトの顔を見つめる。
ジャハトは、少し笑うタイミングで、タレットはカチッと音がし、弾切れを知らせる。ジャハトは、ミアを地面に下ろすと、ミアは、ジャハトの方を見て、心配そうな顔をする。ジャハトは、ミアに笑顔で話しかけた。
ジャハトは、ミアの方に振り返り、口を開く。「ミア、少しの間、此処で待っていてくれ」
ミアは、ジャハトに、そう言われると、首を縦に振った。
ジャハトは、ミアの反応を確認すると、扉の方に向かって歩き出した。
ミアは、扉の前で立ち止まっているジャハトの後ろ姿を見ていた。
扉の方は荒らされた痕跡や生痕などは見当たらない。ジャハトは、気になる奥の扉の取っ手に手をかけると、ゆっくりと扉を開けた。扉を開けようとした瞬間、目の前に黒い球体が現れ、ジャハトは、それを避ける。ジャハトは、後ろに下がり、扉から離れる。ジャハトは、黒い球を睨みつけると、その球体は、人の形になり、徐々に人の姿へと変わっていく。そして、完全に人の姿になると、ジャハトに話しかけてきた。
「久しいのう、ジャハトよ」
ジャハトは、声の主を知っていた。
「イリアス組織特殊型ウイルスのトラッパーか。昔は『荒らし者』って言ったっけ?確か」
ジャハトは、そう呟くと、右手を前に出し、銃を構える。すると、トラッパーは、笑い始めた。ジャハトは、その態度に怒りを覚え、ヴェスに質問をする。
「笑うな。そして作戦の邪魔だ。今すぐ消え失せろ」
すると、トラッパーは、ジャハトに近づき、こう言った。
「まぁ落ち着けジャハト。私達の目的は同じはずだ」
ジャハトは、トラッパーの話を黙って聞いていた。
「我々、ウイルスは、神の秩序を守る為に戦ってきた。だが、我々の敵は、人間ではない、この電脳世界を牛耳ろうとする者だ」ジャハトは、話を聞きながら、辺りを見渡していた。
周りには、沢山の死体が転がっていた。
死体の中には、ミアと同じような子供もいた。
ジャハトは、それを見てしまうと、冷静さを失い、トラッパーの話を中断させた。
「止めだ止め。貴様と話す事はもう無い」
ジャハトが、そう言うと、トラッパーは、微笑みながら、話を続ける。
「君はあの時と同じだね。何も変わっていない」
ジャハトは、その言葉を聞くと、舌打ちをした。
「うるさい、お前はただの足止めだろう」
すると、トラッパーは、微笑むのを止め、真剣な表情になった。
「いや、違うな。わしは、お前の手助けに来たのだ。神の秩序を守る為、この世界を支配する者を始末すれば我々は自由に……」
「shut up!! 俺は神の配下でもなければ、貴様に力を貸すつもりはない!」
ジャハトは、トラッパーの言葉を遮り、怒鳴った。
トラッパーは、ため息をつき、ジャハトに話し掛けた。
「なぜそんなに拒む?」
「昔のことを思い出せ。あの時、コアを傷つけ、この世界は終わるところだった。俺がこのコアを止めてれば、こんなことにはならなかった」
ジャハトは、そう言うと、トラッパーは、呆れた顔で、「何を言っている。お前がやった事じゃないか」
「顔を洗ったんだよ。あの時コアを破壊されクソでけえ巨大なおもちゃが暴れてるのを俺は今も忘れねぇ」
「コアを破壊された?」
「そうだ。あの時お前はなぜ止めなかった? コアを破壊されるとどうなるか知ってたはずだ」
トラッパーは、ジャハトにそう言われると、頭を掻き、少し困った顔をした。
トラッパーは、少し考えると、口を開いた。
「あれは、仕方がなかった。君も見ただろう。奴の暴走を止める方法が見つからなかった。私は、この世界の秩序を守りたかっただけだ」
ジャハトは、その言葉をきくと、ため息をついた。
「なら、なぜ、あいつを殺さなかった。あいつは、ウイルスを作った主だ。貴様なら止められたんじゃないのか」
トラッパーは、黙り込むと、また、口を開いた。「奴の強さは見た目では計り知れない強さを持っていた。我々、ウイルスの力が通用しなかった。私も必死に戦ったが、歯が立たず、逃げるしかなかった。そして、私の仲間達は、次々に殺されていった」
トラッパーは、悲しげに目を伏せると、ジャハトは最後に伝えた。
「なら秩序やら支配者やらという考えを捨てろ。これは幹部の命令だ。貴様らは、ウイルスの使命を全うしろ」
トラッパーは、その命令を聞くと、微笑み、ジャハトに話しかける。
「やっと、分かってくれたか。ジャハトよ」
ジャハトは、トラッパーに背を向けると、扉の方に向かって歩き出した。
外に出るとミヤは気になってた事を質問する。
「ウィルスの幹部なのですか?ジャハトさんは」
ジャハトは、答えようとはせず、ただ黙って歩いていた。
ミアは、ジャハトの顔を見ると、ミアは慌てて、謝った。
「ごめんなさい。言いたくないですよね」
ミアは、落ち込んでしまった。
ジャハトは、ミアを見つめていると、ミアは、ジャハトの目線に気付き、慌て、俯く。すると、ミヤはその仮面の中が気になり、ダメ元でお願いした。
「その仮面、外してもらってもいいですか?」
ジャハトは驚いた。悩んで、ミヤに伝えた。
「何故だ? 今傷跡が治らなくて、醜い顔なんだが」「構いません」ジャハトは、それを聞くと、仮面に手を掛け、ゆっくりと仮面を外す。すると、ミアは、驚いて、声を上げる。
顔の傷跡は痛々しく焼けていた。青年のような顔で、碧い瞳で、ハーフのように整った顔立ちをしていた。ミアは、驚くと、ジャハトは、恥ずかしそうに顔を赤く染めていた。
ミアは、申し訳なさそうに頭を下げ、謝った。
ジャハトは、ミアにこう言った。
「あー気にしないでくれ。俺が悪いから」
ミアは、ジャハトに近づき、手を握ると、ジャハトは、驚き、手を離そうとするが、強く握られていて、離れなかった。ミアは、ジャハトに優しく語りかける。
「私は、あなたを信じます。私は、あなたの素顔を見て、とても綺麗だと思いました。だから……」
「は、はぁ……こんな傷跡でも、お前はそう思うのか?」
ジャハトは、ミアの言葉を聞くと、動揺していた。
ミアは、ジャハトの目を真っ直ぐに見ながら、返事をした。
「はい、私は、そう思います。ですが、他の人は違うかもしれません。でも、私だけは、絶対に、そんな事を言いません。なので仮面を外してもその姿は、誰にも見せないでください。私の願いを聞いてくれますか?」ミアは、ジャハトにそう言うと、ジャハトは、嬉しさと、恥ずかしさが入り交じった表情を浮かべ、ミアに話し掛けた。「ありがとう。ミア。俺は、お前を信じるよ」
ミアは、微笑むと、ジャハトに話掛ける。
「良かった。これからもよろしくお願いします。ジャハトさん」
ジャハトは、ミアに名前を呼ばれると、少し、照れくさそうな顔をした。
ミアは、ジャハトに話しかける。
「あの、ジャハトさん。何でずっと仮面を付けてたんですが? 」
ジャハトは、ミアに質問されると、黙り込み、何か考え込んでいたが、やがて、口を開いた。
「それはだな、俺の顔には、大きな火傷の痕があって、それで、その傷跡を見られるのが嫌だったからだ。あとは顔バレしたくなかったから」
ミアは、それを聞くと、ジャハトの手を握り、笑顔を見せた。
「なら、私が、その傷跡も消してあげます。安心して下さい。私なら、できます」
ジャハトは、ミアの手を振りほどき、後ろに下がると、距離を取り、叫んだ。
「やめろ! この顔は、俺にとっては、大事な物なんだ。頼むから、やめてくれないか? 」ミアは、その言葉を聞くと、俯いた。あまりの怒りによりミアは、泣き出し、ジャハトに謝った。
「ごめんなさい。ジャハトさん。私のせいですよね。ごめんなさい」
「あ、いや、ミア。悪いのは、全部俺だ。ミアは悪くない。謝らないでくれ」
ミアは、涙を流すと、俯いて泣いていた。
どうすればいいか分からないジャハトは、ミアに近づくと、ミアを抱き締めた。
ミアは、ジャハトの行動が分からず、混乱していると、ジャハトは、ミアの耳元で囁いた。
「とりあえずすまん」ミアは、ジャハトが何故、自分を抱き締めているか、理解できなかったが、ミアもジャハトを抱きしめた。
ジャハトは、ミアが抱きついてきた事に驚き、慌てて、離れようとしたが、ミアは、ジャハトの背中に腕を回し、離そうとしなかった。
ジャハトは、困惑しながらも、ミアの頭を撫でると、ミアは、ジャハトにこう言った。
「ジャハトさん。私は、あなたを信じます。だから、私も、あなたの事を信じてもいいですか?」
ジャハトは、ミアにこう言った。
「え? ああ、いいぞ」
ミアは、ジャハトから離れると、ジャハトを見つめながらこう言った。「じゃあ、私の事を信じてください」
ジャハトは、少し、困った顔をすると、ミアにこう言った。「分かった。信じよう」
ジャハトは、ミアにそう言うと、ミアに、手を差し伸べ、ミアはその手を掴むと、握手をした。
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