Ver1.2【※補足:ここからVer1.2から2.2までは、何も手を付けてない修正前の状態です】
それから数日後のこと、大樹はいつも通り仕事をしていたその時、電話が鳴った。
「はい、もしもし」
「あー私、レヴィナ」
レヴィナの声だ。何かあったのかと思い、心配しながら話を続ける。
「レヴィナ、何があった?」
「今すぐ来てくれ、緊急事態だ。絶対には来るんだよ」
「了解」
大樹は通話を切り、急いで準備をした。そして、中央安全処理機関本部に向かう。
「来たぞレヴィナ!」
「遅い! もう始まってるんだよ!」
着いた瞬間、レヴィナの罵声で驚く。仕事が一杯で、5分の遅刻をしてしまったのだ。中央安全処理機関本部の門の先にははウイルスの大群に襲われていた。
「敵の数は約2万5千体、そいつらを全部倒せ」
「無理言うなって……」
ため息をつきながら、武器を取り出す。
「大樹、援護してやるから頑張りな」
「ああ、分かった」
『少佐!!敵の位置特定しました!!』
一人の兵士がレヴィナに報告する。アリサの戦闘術を身に付け実戦で使う。武器は剣だけど小学生の頃剣道を習ったので武器を構える。
「よし、それじゃ始めるか」
大樹はまず、目の前にいる敵を斬っていく。すると、他の敵も襲ってくる。大樹は敵の攻撃を避けながら攻撃する。
「大樹、後ろ!!」
レヴィナが大樹に叫ぶ。大樹はすぐに避けた。しかし、背後にいた敵に気づかなかった。背中に鋭い痛みを感じる。
「ぐあっ!!」
攻撃を受けたことによりバランスが崩れ、地面に倒れ込む。
「大樹!!」
「大樹は大丈夫だ!! それより、周りのウイルスを頼む!!」
「分かった!!」
レヴィナは大樹の周りにいるウイルス達を殲滅し始めた。視界が歪む中、立ち上がり、自分の限界にかなり近いてる。結構やばいかもな……。
剣を構え、目の前の敵を倒すことに集中する。
「はぁ……はぁ……」
「大樹!! 後ろ!!」
大樹は振り向き、剣で防ぐ。しかし、威力が強く吹っ飛ぶ。
「ぐぅっ……!」
「大樹!? 大丈夫!?」
「ああ、問題ない」
大樹は起き上がり、再び構える。そして、次の攻撃を防ごうとした時、横からの攻撃が来た。
「――ッ!!」
大樹は何とか防ぎきったが、ダメージを受けてしまう。
「くっ……!!」
この攻撃を受け続ければ、大樹の体力が持たないかもしれないな……。
目の前のウイルスが吹き飛び、消え去り、そこにアリサが現れた。大樹は安心したが、アリサの姿に驚いた。
「ああ、助かった」
「あの人なら……って、え!?」
レヴィナもアリサの姿に驚いていた。しかし、その驚きはすぐに別の出来事に取って代わられた。
「あれは?!」
「お、おい!?……あれはなんだ!?」
大樹が見たのは、フードを被り、骸骨のマスクをした謎の人物だった。
「あいつがウイルスの大群を指揮しているボスだ」
「あいつが……」
ボスは大樹に話しかけてきた。
「貴様らが我が軍を倒してきた者共か?」
「そうだけど?」
「ふむ……まあよい、ここで死んでもらうか」
「そう簡単に死ぬわけにはいかないんでね」
大樹は剣を構え、ボスに向かって立ちはだかる。ボスは突然、速い動きで大樹に近づき、攻撃を仕掛けてきた。
「大樹、危ない!!」
レヴィナの警告が遅すぎず、大樹は攻撃を避けた。しかし、何かが違う。大樹が避けた攻撃は実は何ものかによって跳ね返されたのだ。
「......あれ?」
「もしかして!」
その謎の攻撃を発射したのは、アサルトライフルを手に持つ少女だった。身長は小さく、迷彩服を着ている少女兵らしい姿だった。
「ごめん、遅れてしまった」
「ハンナ!!」
みんながハンナに集まり、心配している様子だった。
「そなたは、無事か?」
「ああ、助かったよ。けど……」
アリサが地面に叩きつけられていることに気付いた。そして、ハンナが持っている武器に注目した。
「それは何だ?」
「これか? これは我の愛銃『M21』である」
「じゃあ、さっきのはあの銃で弾を跳ね返したのか!」
「そういうこと」
「すげぇな……」
「ほぉ、まさか弾くとはな。少しだけ驚いたぞ」
ボスはハンナに狙いを定め、再び攻撃を仕掛けてきた。ハンナは必死に避けつつ、銃で応戦した。
「くそ、速い!」
「ハハハハ! 当たらなければどうということはない」
ボスは笑いながら、連続で攻撃を仕掛けてきた。ハンナは必死に避け続け、反撃しようとした。
「ねえ、このままだとハンナが死んじゃうよ、どうするの?」
「分かってる、ちょっと時間を……うおっ!?」
突然、大樹の後ろから警告がかかったが、大樹は後ろを振り向かずに避けた。すると、さっき立っていた場所にレーザー光線が放たれた。
「ボス!!」
「終わりだ」
「させねぇよ!! 」
大樹はボスに向かって突進し、ボスの腕を切り落とした。しかし、驚くことに切り落とした腕は再生していた。
「嘘だろ……」
「ふはははっ!! お前ら如きにこの我が倒せると思うな!!」
「おい、この戦いは大樹達が体力持たない。ここは降参だ」
「嘘でしょ、ここまで来て......」
「すまない......おい! ボス! ――降参だ!!」
ボスは突然姿を消し、戦闘は終わった。しかし、みんなの心はまだ不安だった。
「終わった……のか?」
「みたいね」
「良かったぁ……って思ったけど、これで終わったとは限らないよね?」
「確かにそうだね。まあでも、とりあえずここから出ようか」
「うん、そうだね」
「ああ……」
大樹たちは本部に向かい、歩き出した。しかし、不安な気持ちはまだ消えず、ボスの正体や所属する組織についての疑問が頭をよぎった。
「あ、そういえばレヴィナ。あのボスの特性というか所属してる組織というか、なんと言うんだ?」
「…………知らない、あのボスは知らない」
「そうなのか?」
レヴィナは答えづらそうな表情を浮かべ、首を横に振った。
本当に知らないのか、それとも答えたくないのか、それは分からなかった。
本部から帰り、レヴィナが任務に行き、大樹とハンナの二人になる。
「それで、ハンナ。あのボスはどんな能力を持ってたんだ?」
「んー、まずは自己修復機能かな」
「それって不死身みたいなもんじゃないの?」
「いや、そういうわけでもない。あくまで自己修復機能は細胞分裂によるもの。それに、自己修復能力は無限ではない。だから、必ず限界がある。その限界を超えると、細胞は増殖せず、また新たに作り直すしかなくなる」
「なるほど……。で、その組織は何て名前なんだ?」
「ジャハト組織、ジャハト型。えっと......ジャハトは高ムーア型チップで作られたAI。このAIはウイルスのボスでもあり、全ウイルス組織のボスでもある。ウイルスの組織には階級があり、幹部クラスになるとウイルスを従えることが出来る。ウイルスの幹部達の名前はコードネームで呼ばれる。ジャハトはAIで、人格プログラムによって作られてる。そしてジャハントの能力は『完全無欠』であります。このウイルスの唯一の武器はこの能力を最大限活かす事であります」
「へぇ~そうなのか。ちょっと待って、何故そんなに詳しいんだ?」
「それは、『スピジュン』っていう元イリアス組織侵入型の人から聞いた。今は出かけてるからその人に会ったら詳しく話してくれるよ」
ハンナは笑顔で言う。
「あ、名前はA56389。我は【ハンナ】であります」
なんかすごい見た目は子供なのに丁寧な大人の口調になった。
「中田大樹です」
「よろしくお願いします」
「あはい、こちらこそ」
大樹も丁寧に返す。
「ところで、ハンナって何歳だ? 見た感じ小学生だけど」
「この世界だと12歳であります」
「そうなの!? じゃあ、学校行かないの?」
「行ってませぬ」
「どうして?」
「学校は我が見た時は、ボロボロでした」
「そっか、大変だったね」
「あ、――お菓子食べます?」
ハンナはポケットから飴玉を取り出し、受け取る。
「いいんですか?」
「はい」
「ありがとうございます」
「いえ、お気になさらず。では、我はこれで」
「またな」
ハンナはドアを開け出て行った。
「……」
(一体どういうこと?)
「ただいま。帰ったわ」
「おかえりなさい」
レヴィナが任務から帰ってくる。ちょうど帰ってきたのでハンナの事を聞いてみた。
「レヴィナ、聞きたい事があるんだけど」
「何ですか?」
レヴィナは大樹の目を見て返事をする。
「ハンナの事なんだけど、どうして学校に行かなかったのかなぁって」
「……そう、やっぱり気になるよね」
「うん、まあ」
「実は、ハンナは貧乏なの」
「ふむ」
「それで、両親がいないらしいの」
「うーん……」
「だから私達が親代わりとして面倒見てるの」
「……なるほど」
「でしょ」
「そうだな。でも、一つだけ分からないことがある」
「ん?」
「どうして、レヴィナが面倒を見てるんだ?」
「……ハンナは昔、極悪犯罪者で、殺人、強盗、窃盗とかもやってる。しかも証拠も残さないから全部未解決事件としてお蔵入りにしてるの。とても危ない人物だと思うけど、ハンナは別に犯罪をしてる訳じゃないわよ。だから私が引き取って面倒を見てる」
「なるほど、確かにただ、ハンナは人を殺したりする様な人間じゃないな」
「そういう事。今はリハビリして心も入れ替えてるから安心して」
「分かった」
「うん」
「ところで、レヴィナはどこに行くんだ?」
「えっと、まずはウイルス対策室に行って、その後管理室でセキュリティチェックする」
「なあ」
「何?」
「大樹いつまでこの部屋にいるんだ?」
「――え? あ、忘れてた」
「おい!」
「ごめん、ちょっと待って」
レヴィナが大樹の部屋に入り、参考書を複数取り出す。
「何やってんだ?」
「ウイルス対策の本とプログラムの本と......」
「いや、多いな! そんなに必要なのか!?」
「だってウイルスを防ぐにはこの本が重要なの、それに、これを覚えないとずっとこの部屋で過ごすことになるけど」
「あ~もういいって。ほら、早く行ってくれ」
レヴィナが部屋を出て扉を閉め、やっと一人になった。
――ここの部屋、なんかパソコンやゲーム機とかがあるけど、どれもつまらないゲームばかりだ。早くここから出たいのでテーブルに置いてある参考書を読まないといけない。
朝、七時三十分。気付いてたら読みながらソファーで寝てた。睡魔に襲わられながらも必死に読んでたんだ。
「おはようございます」
ハンナの声だ。
「おはよ」
「七時五十分から朝食であります」
「ありがとう」
「いえ、これも一様仕事ですので」
「じゃあいくか……」
ハンナと一緒に食堂に向かう。
着いた時かなりの人の行列ができてた。皆トレーを持ちながら待機してる。そこにはレヴィナがいた。
「お待たせしました」
店員さんが、料理を置くと同時にハンナが席に着く。そして、向こうにいるレヴィナは手を合わせてた。こっちも手を合わせる。
「いただきます」
ハンナも同じ様に手を合わす。
「では食べましょう」
やはり、ここの定食はうまかった。この前は量が多すぎて歩くのが嫌になるくらいだったけど、今日はゆっくりと食事が出来る。
「――うん美味しいね」
ハンナの言葉を聞き流しながら食べる。
「そうですね」
ハンナは自分の皿を見ながら答える。その言葉を聞いた後、また食事に戻る。
「――あのさ」
ハンナに向かって話しかけるが無視されてるのか聞こえないのか分からない。
「ハンナって犯罪者だったのって本当か?」
今度は聞こえるぐらい声を大きくして、伝えたい事を聞きたいが、それでも反応がない。仕方なく、自分の口に運ぶ事にした。
その時だった。
カチャッという金属音が聞こえた。目を向けるとフォークを床に落としてた。
ハンナの顔を見ると顔が青ざめてる。まるで何かあったかのように……。体調が悪いのか心配そうに声をかける。
「大丈夫?」
「......っつ!!」
ハンナは、大樹の首の方にナイフを向ける。
速すぎて、気付いた時には素早くナイフを向けられて一瞬の驚きと恐怖だった。
何事だと思って、皆こっちの方に視線を向ける。
ハンナは震えている。一体なんなんだ。
「これ......言うな......」
小声で呟いてたけど何も聞こえなかった。もう一度聞き直す。
「何て?」
「これ以上言うな!!!!」
そう叫ぶとナイフを机に刺し、両手で頭を抱え込むように押さえる。かなり苦しんでるように見えてるだろう。周りを見ると、他の人も目を逸らすようだ。誰も助けようとしない、むしろ大樹を睨む奴もいる。これは異常事態だと分かるとすぐに行動に移した。大樹は椅子から立ち上がろうとしたら
「来るな!! 切るぞ!!」と言われてしまった。
「お、落ち着け」
「うるさい!!!!」
食堂内に響く声だった。
どうしたら機嫌良くなるかと思った瞬間、誰かが近づいてきた。
「おいおい、てめぇ、またハンナに変な事言ったな」
イケメン男性が大樹の前に立つ。耳はピアス、首は宝石のネックレス。髪型は耳の方だけ刈り上げていてTシャツ姿のちょっと肉が付いてるぐらい。目付きは悪く大樹の方を睨んでくる。
「いや、変な事言った訳じゃないんですけど」
「嘘つけ! てめぇのせいで飯が不味くなっだろ!」
怖い男性に胸ぐらを掴まれた。それは関係ないと思った。
どう謝ればいいのかどうしていいのか分からず、頭真っ白になった。
――目が覚めた。
「うぅ……」
辺りを見回すと横はカーテンが付いてる。すぐ病室にいることが理解した。
確か大樹は、男性に殴られて気絶してしまったはず。体中痛いし、それに、起き上がると激痛で体が動かない。
「起きましたか?」
声の主を見てみると、目の前にはさっきのハンナだ。
「ハンナ!? 無事なのか?」
「はい、我は元気であります」
笑顔を見せてくれた。良かったと思う反面少し気になる。全部の事をハンナに聞く。
「何故あんなに怒ってたんだ? それにあの男性は?」
「ちょっと言いたくなかった事を言っててついカッとなってしまってしまって申し訳ありません。それと、大樹さんが我に対して失礼な態度を取ってたのと勘違いして、我が切れる時にその男性も切れちゃったんですよ」
えへへと笑いながら話す。
「でも、それなら大樹も悪い所あったし」
「そうですね。後、大樹さんの言い方は悪かったかもしれませんね。我は別に気にしてないので、大丈夫です。それより、体は大丈夫ですか?」
ハンナは大樹の体を触り、怪我の場所を探す。その時だった。急に素早く手を離した。
「あ......」
ハンナは急に何かを思い出したかのように暗い顔をする。
「どうした?」と聞く。
「いえ……なんでもありません」と言って部屋を小走りにして走り、出て行った。
「一体なんだと言うのだ?」と思っていると、ドアの方からノック音が聞こえた。
そして、レヴィナが慌てて入ってきた。
「大丈夫でしたか!?」
「あぁ、なんとか生きてるよ」
「それはよかった。私はこれから任務があるのですが、大樹の側にいられなくてすみません」
「そんなに気を使わなくても良い。それよりも、ハンナを呼んでくれないかな。話したい事があるんだけど」
「分かりました。では、お大事にしてください」と言い、急いで出て行ってしまった。一体なんだというのだろう……。大樹は、ベッドから降りようとした時、「いてぇ!!」と叫んでしまった。足を見ると、包帯巻かれていた。あとは、顔と頭が痛い。多分、ボクシングみたいに大樹は、顔面を殴られられたんだろう。
加減を知らないのかなあの男性は。
大樹はとりあえず、痛みに耐えつつ、ハンナが来るのを待つ。すると、またハンナが来た。
「はい……御用でしょうか?」
「いや、話が聞きたいなと思って」
「なんでしよう?」
首を傾げている。
「まず、君は犯罪者なのか?」
「なんの質問だ?」
少しハンナの優しい表情が怒りの表情に変わる。ただ大樹は諦めなかった。全てを知りたい。
「とぼけないでくれ、大樹はただそれを聞きたいだけだ」
「......三年前、この世界で連続殺人事件が起きた。その犯人は我だけど未だに捕まっていない。被害者は皆同じ事を言うんだ。『T』ってな。我だって最初は、皆ふざけてるのかと思った。だけど、最近になって分かったんだよ。皆敵だっていうことを」
大樹は黙っていた。
「窃盗や強盗は生活費に困ってたけど、殺人は快楽ではなくストレスで殺した。何かバカにされてるように聞こえるから」
「……」
「でも、我もお前らと同じ人間だ。 だから殺す必要なんて無い」
「......それが本当だとしたら、君には生きる価値がないんじゃないか?」
ハンナの顔が真っ赤になった。急に大樹の首を締めようとしてた。絞め殺さないように優しく握ってることが分かる。
「貴様に何が分かる!?」
「分からないさ。でも、大樹が生きてるのは事実だし、大樹みたいな奴もいる。それに、君の気持ちも分からなくはないけど、それで人を殺したんじゃ元も子もないじゃないか!」
ハンナは、大樹の言葉を聞いて涙を流した。
「でも、我は……くそ!!」とハンナは大声で叫び、泣きながら、扉を強く開け部屋を出て行った。
「どうしたんですか大樹さん?」とレヴィナが入って来た。
「ハンナの過去を知ってしまって」
「そうですか。大樹さんは優しいですね」
「えっ?」
「大樹さんの言った言葉は正しいです。でも、ハンナがやった事は許されません。もし、ハンナに同情してるなら大樹さんの心は弱いです。ハンナは人を殺めた罪を背負って生きていくしかないのです。例えどんなに苦しくても」
「そう……だよな」確かにハンナは犯罪者、レヴィナの通り罪を償わなきゃあいけない。
「今はそっとしてあげてください。ハンナも悪気があって人を殺してるのじゃないから」
「あぁ……」
レヴィナは病室から出ていった。
ハンナの過去の話を聞いた時、心が変わったのか何故か可哀想になった。何かしてあげればよかった。心が弱くてもいいから。
怪我は三日間治り、レヴィナに案内された場所に来た。そこは、会議室だった。
「今日の貴方の席はここ......え!?」
なんと作業用に使うパソコンが壊れていた。
「まじかよ、誰がこんなことを」
「ざまぁー」
振り返ると、この前、こいつに殴られた男性がいた。「あっ!あの時の」と大樹は指差していた。
「久しぶりだね。元気にしてたか? 大樹は、あれからずっとここで働いてる。あの時は災難だった。殴ったりしたら、あの後、上司にこっぴどく叱られたんだぜ、この傷跡どうしてくれるんだ? ああ?」
怖い男性の頬には殴られた跡があった。
「すいません......」
「すいませんで済む話かよ、雑魚が」と殴りかかろうとした瞬間、
「おい、何やってんだ?」と男性の背後に肩を掴む。この声はアリサだ。
「あんた、こいつに手を出すとどうなるか分かってるんだろうな」
「あ? 後ろのてめぇ誰だよ、邪魔するな」
すると腕を掴み、背負い投げをされる。男性は受身を取れないまま背中が床に激突し、気絶した。
「え? 大丈夫?」とレヴィナが心配してきた。
「んな奴はほっとけ、後で賠償請求されてここに来る事はないから」
レヴィナと大樹は唖然とした。
「――はーい、お前ら仕事仕事」
アリサは皆の視線がこっちに向いてることに気付き、無かったことにする。
仕事で使うパソコンが、壊れたためその隣のパソコンを使う。
「大樹さんは、ここの席ね」
「あの、さっき気絶した男性の人あの人は誰ですか?」
「さっき気絶した人は、うちの隊員で一人で、名前はヤジンワフ。まぁ気にしないでください。また何か分からないことがあったら聞いてくださいね。では、仕事に戻ります」と言ってレヴィナは自分のデスクに戻った。
大樹の目の前には山積みの資料があった。その資料の中にはウイルスについて書かれていた。
「なんだよこれ」
「それはウイルスの弱点や特徴が書かれた紙です」と隣に座ってたハンナが言った。
「ハンナ、ちょっとここの資料教えてくれないか」
「しようがないですね。これは、ウイルスの特徴と対処法が書かれているものです」
「ウイルスはどんな形をしてるのか、特徴は、ウイルスのタイプによって違い、ウイルスのタイプは、大きく分けて3つあります。
1つ目は、感染型ウイルス。
2つ目は、寄生型ウイルス。
3つ目は、増殖型ウイルス。
「ウイルスは、人の体内に入るとまず、身体の細胞に入り込み、そこから分裂して増えていく。そして、体液を通して全身に行き渡り、人間の生命エネルギーを吸い取り、人間を乗っ取るウイルスだ。サーバーもその人間と同じ行動するよ」
「ウイルスは、この三つのパターンがある。でも、たまに違うタイプのウイルスもいるけど、基本はこの三つだから覚えといて」
「はい」
「じゃあ、早速始めましょうか。最初は、この紙を見せて」
そう言って一番上の紙を取り、ハンナに見せる。
『ウイルスの倒し方とその方法』だった。
「ウイルス退治する時は、基本的に倒す方法は二種類ある。一つはウイルスの本体を倒すこと」
「二つはウイルスを駆除すること」
「ウイルスの本体ってどこにあるんですか?」
「うーん……それは分からない。このウイルスの本を読んでみても、どこにいるとか書いてないし」
「まず、やる作業は、主に三つの作業をするよ。一つはウイルスの本体を見つけ出して倒すこと、もう一つはそのウイルスを解析して二進数で入力すること。最後はサーバーに入らないようにウイルスを阻止することで、特にコアは絶対に侵入を許してはダメ」
「二進数は知ってるけど使い道はなんだ?」
「武器の生成とかウイルスを見つける為に使う。でもウイルスが本部から十六キロメートル圏内で勝手にスキャンしてくれるから見つかったらそれを駆除するだけ。もし二進数とかスキャンしてもウイルスが見つからなかったら、ウイルスに感染した人を特定して、対策プログラムをダウンロードする。今回は我が使ったソフトを送るけど慣れてきたら自分のプログラムでソフト作ってね」
「分かった」
「じゃあ、次はウイルスの種類を教えようかな」
「お願いします」
「まずは主に、感染型のウイルス。人やロボットなどを感染するのが特徴」
「次に寄生型ウイルス。本体のウイルスは人を接触して感染する。人体に侵入すると血液を通って血管を辿り心臓の近くにある臓器に入る。そこで、心臓の栄養分を吸ったりして成長する。成長して大きくなったウイルスの核みたいなものが心室細動を起こして、心臓発作を起こす。ウイルスが成長しきった時、心臓の中に入った後で血流に乗って体中に流れる。他の人にウイルスが移り、また他の人に移る。そして、最終的に全ての人が死ぬ。これが、寄生型ウイルスのやり方。ちなみに、寄生虫もロボットも感染すると人と同じ症状になる。
「次が増殖型ウイルス。ウイルスが増殖する時は、分裂する。分裂する理由は、ウイルスの遺伝子を増やすため。ウイルスは、ウイルスのゲノムを持っているけど、そのウイルスのゲノムをコピーする能力が増殖型ウイルスにはあって、それで増えることが出来る。増殖型ウイルスの特徴は、増殖するスピードと感染力がとても速い。増殖する速度はとても速く、増殖する速さはウイルスのゲノムをコピーする速度で決まると言われている。例えば、Aという病気を治す為にBの薬を使うとしよう。その時、ウイルスのゲノムをコピーする速度が速ければ、早く治せる。つまり、ウイルスが増える速度は、ウイルスのゲノムをコピーする速度によって変わる」
「なるほど……」
「最後に特殊型ウイルス。言ってなかったけど説明するね。これは、ウイルスの突然変異した姿だ。このウイルスの特徴を言うなら、ウイルスの繁殖は遅い。ウイルスが進化する時は、ウイルスのDNAが変異する。ウイルスのDNAが変異すると、ウイルスの性質が変わってしまう。ウイルスが特殊な能力を身に着けたり、知能が高くなったりする。ウイルスの寿命は長くても数年。ウイルスが進化した場合、新種のウイルスが生まれる。このウイルスは普通より強く、厄介な相手となる。ウイルスのコアを破壊しない限り、ウイルスは永遠に生きる」
「ウイルスの種類はこれで全部か?」
「いや違う。ウイルスのタイプはまだある。でも、これ以上説明すると長くなっちゃうからここで終わりにする。なんか質問はございますか?」
「子供なのになんでこんなに頭いいんだ?」
「生まれた頃から独学で学んだ。父は偏差値八十の名門校と、母はギャングの幹部」
「父の遺伝で天才なのか?」
「はい、そうであります」
「すごいですね」
「ありがとう。では説明はこれで終了です。ご清聴いただき感謝申し上げます」
「あ、はい。こちらこそありがとう」
ハンナが丁寧口調でお辞儀をしたためお辞儀を返す。
「じゃ、早速だけど、ウイルス退治しに行きましょう」
「はい」
「じゃあ、地下に行くよ」
「え? ウイルス退治するんですか!?︎」
「そうだよ、何か?」
「どこですか?」
「目の前にあるじゃないか」
「目の前……って、これエレベーターじゃないですか!」
「そうだね」
「ここ地下何階ありますか?」
「把握してません」
「ああ、そうか……」
大樹は諦めて乗った。しかし、大樹は映画のような実験体にさせられるのは嫌だった。
「ちょっと待って!大樹まだ心の準備出来てないんだけど!!︎」
「そんなこと言ってる場合じゃない。ほら行きますよ」
「うわぁー」
ハンナに引っ張れながらエレベーターに乗り、下に降りた。
「着きました」
着いた階が地下五十二階だった。ハンナに案内され、狭い通路に進み、目の前の頑丈そうなドアを自動で開くとそこは、尋常ではない広さだった。壁は厚いコンクリートで覆われてて、高さはと広さは野球ドームと例えていいだろう。
ライトが、無数に照らされてて眩しくて少し暑苦しく感じる。
「さっきの説明通り、この階にいる。大輝さんにはこの階のウイルスを倒してもらう」
「分かりました」
「私はここで見張るから、頑張ってください」
そう言うと窓ガラスで見れる場所に入り、マイクのスイッチを入れる。それを見た時大樹は言い、歩き出した。
「では、行ってくる」
「頑張ってください」
「あれがウイルスだな」
そこには、黒い球体があった。
大きさは直径五メートルぐらいあって、形は丸い球にトゲが何本も生えてる感じ。
「まずは攻撃しよう」
大樹は銃を構えた。
「これで撃とう」
引き金を引いた瞬間、銃弾は消えてしまった。
「これは、ただの拳銃じゃダメだな。よし、この剣で斬ろう」
剣を取り出し、構えながら走る。
「はああああっ!!」
振り下ろすと、スパッと切れた。
「やったか?」
しかし、ウイルスは生きていた。
「マジか……」
「こうなったら逃げるしかないな」
大樹は走った。
「逃げてると余計、体力消耗しますよ」とハンナは、お菓子食いながらアドバイスをする。
「分かってるけど……」
「時間です。このウイルスは進化します。食われたら胃袋の中でスムージーになりますから死なない様にしてください」
「それは嫌だな……」
適当に呟いてたら、丁度ウイルスが進化した。その姿はとても気持ち悪くなっていた。全身真っ黒になって目が複数あり、顔も身体と同じ真っ黒の物体に口が付いていたりする。その無数の目は赤くなってて血走っているように見えた。触手みたいな物も出て来ててウネっている、まるで化け物の様になっていた。
「あーあ、決着つきましたね」
そのウイルスが大樹を襲う為にジャンプして向かってきた。
大樹は怖さのあまり固まってしまった。
しかし、ウイルスがジャンプする速度が遅く見える。
大樹は冷静に、ウイルスが着地してくるのを躱した。
その隙に攻撃に入った。その時、ウイルスの触手攻撃をまともに喰らい、吹き飛ばされ壁に激突してしまったのだ。しかし、大樹は無傷だった。大樹はアリサの訓練で鉄の身体になってるお陰でダメージはなかった。
ウイルスの猛攻はまだ続いた。大樹はくらいながらも避け続けた。そして、隙をついた大樹はウイルスに向かって走って行った。ウイルスは触腕を出してきてガードしようとしたが遅い、大樹が斬りつけるとその腕は斬れた。大樹は次々と触腕を切断していき遂に核のところに来た。
「あとちょっと……いける!!︎」と思い核を斬った。そして、ウイルスは消え去った。どうやら勝利したようだ。
「やっt……うぐぅ……」
大樹は体力の限界で床に座る。
「お疲れ様。負けそうだったから我が処理しようと思ったけど、正直まさか勝てるとは思わなかった。
とお菓子食べてながら棒読みするハンナは言った。褒め言葉はないみたい。
「ありがとうございます」
「じゃ、これからよろしく頼みます。我のパートナー」
「はい、こちらこそお願いします。ハンナ」
この瞬間に大樹たちの戦いは始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます