俺の絶対エンペラーは全てのエイチをツラヌく

嘘付本音

1章

第1話 俺の絶対が暴発する

 徐々に意識がハッキリとしてくる。

 どこかの丘の上の草原。

 寒空の下、ローブ一枚で地へ突っ伏していた。

 体が震える。

 寒さからではない。

 体の一部分が異様に熱い。

 熱源の原因を確かめるため、即座に体を起こしローブを捲くる。

 これは……。

 俺のモノが圧倒的存在感を醸し出し、力強く硬く起立していた。

「ぬおおおおおおおおおおお!」

 状況を頭で理解すると共に、体中の血液が騒いでいるのを感じる。

 熱い、痛い、苦しい。

 心臓が早鐘を打ち続け、湧き出る汗が止まらない。

 たまらずそれを握り、溜まっている力を放出させようとした。

「ぐはっ!」

 すぐに大量に熱のこもった粘液を放出することに成功するが、それは衰えることもなく堂々と立ち上っている。

 のたうち回り、無心で握り擦り続ける。

 何度も何度も放出を繰り返した。

 それでも折れいく気配はみえない。

 それには、絶対の意思でもあるかのように。


 どれほどの時が経っただろうか。

 ようやく熱や動悸が比較的マシな状態へと戻ってきた。

 それでも俺のモノは依然として臨戦状態だ。

「ハァハァ、なんなんだよこれ」

 汗だくとなった俺は、疲れ果て一人呟く。

 一体俺の身体になにがあった。

 っていうか気づけば、ここはどこ? 私はだれ? だ。

 なにも思い出せない。

 そんなやばい状況でシゴいていたのかよ。

 なんだかやるせない気持ちになる。

 どうしてここまで至ったのか、自身と辺りを見渡す。

 真っ白なローブに身ひとつだけの自分。

 特に外傷はなさそうだ。

 異常にアレが主張し続けているだけで。

 辺りは一面、陽の光に照らされた草が生い茂るだけの草っぱら。

 俺が汚しに汚してしまった箇所だけが目立つ。

 雑草たちすみません、良ければ栄養にでもしてください。

 謝罪の気持ちを心に、視線を遠くへと向ける。

 下方に小さな村が見えるが、見覚えはない。

 とにかく向かってみるしかないか。

 ダルい体を起こし、俺は歩きはじめる。

「ふぐうっ!」

 主張し続けるモノは俺を苦しませ続ける。

 記憶とかよりまずこれ、どうにかなんねえかな。


 ぎこちない歩き方で、俺はなんとか村まで辿り着いた。

 丘の上で見た通り小さな村で、特に目を惹かれるモノがあるわけでもなかった。

 診療所らしき建物が見えると、とりあえず今はそこへ駆け込んだ。


「見ない顔だ」

 白髪交じりで白衣を着たおっさんが俺の顔を見て言った。

 こっちもおまえを見たことがない、とか言っている余裕もない。

「体を診てください」

 俺はそそくさと、向かい合うように置かれた椅子へ座る。

「どこか痛むのか?」

 なんとも言い難いが、

「股間です」

 医者相手に隠していても仕方がない。

「ふーん、最近性行為は?」

 大袈裟にたじろがれても困るが、ふーんはなんか腹が立つな。

「記憶にないです」

「ふーん」

「記憶にないと言っても本当のやつですからね。記憶を失ってるほうのやつ」

「……」

 言葉を失われた。

「とりあえず、股間の異常だけでもどうにかしてください」

 記憶のことはとりあえず置いておこう。

「じゃあ診るから、脱いでみろ」

 おっさんの前でいきり立った状態の全裸はキツいものがあるが、相手は医者だ。四の五の言わず心を押し殺してローブを脱ぐ。

 姿を現したモノが、元気よく上下した。

「……元気じゃねえか」

「元気すぎて異常なんですよ。この状態から収まる気配がずっとなくて」

 未だに存在感を失わないモノは、羞恥心もなく堂に入ったものだ。

「あーなにか変なものを食べたりは?」

「記憶にないです」

 医者の問診に、不祥事を起こした権力者のような返事をしつつ脈を計られたりなんやかんやされたりして体を調べられた。


「異常はないな、健康体だ」

「異常じゃないですか!」

「あー、気持ち落ち着けるお薬出しとくから」

 結果ひとつもわからなかった。

 どうなるんだ、時が解決してくれそうもないくらいに萎える気配はない。

「もしかしたら潜在ポテンシャルの方かもな」

潜在ポテンシャル?」

「なんだ、そんな記憶までないのかよ」

 常識みたいに言われてもないものはない、仕方がない。

「うち出て右にまっすぐ行った所にでかい黒い建物あるから、そこで調べてもらいな」

「はあ、わかりました」

 とりあえずは原因を確かめる方法があることに希望をかける。

 教えてもらった通り黒い建物へと向かおう。

「待て待て、診察代がまだだ」

「あー、はいはい」

 俺はローブを着込んで懐を探る。

 ポケットを探る。そもそもこのローブ、ポケットなどついていない。

「ハハハハ」

「……」

「誠に申し訳ございません!」

 全力で土下座した。

 モノは頭を垂れる気配すらみせないというのに。

 こっちはおまえのせいで苦労しているっていうんだよ。

 物言わぬモノは、返事代わりのようにビクンと陽気に跳ねてみせた。

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