ある日突然2人の義妹が出来たので、それを期に俺は全力で人生を謳歌します。
れーずん
一章 家族として
1話 衝撃の告白
俺、
そのせいで少しでも走れば胸が痛くなるほど息切れするし、走らずとも三十分程度歩けば血が回らなくなって立てなくなる。
だから、俺は病気を
この人生で一度もだ。
運動が嫌いな人には分からないかもしれないが、運動が出来ないというのはあまりにもつまらないのだ。
特に学生である今は授業で必ず運動をするし、それを主体とした行事である体育祭もある。
それらは全て他人との接点をつくる大きなきっかけであり、実際に周りはそのきっかけを使って友達をつくったり、交流を深めたりする。
なのに、俺はその全てに参加出来ない。
それだけじゃない。
長時間歩くことが出来ないから、友達と一緒に街へ出かけることすら出来ないのだ。
登下校でさえ友達と駄弁ったりすることなく、親父の走らせる車で面白みもなく学校を行き来している。
つまらないを通り越して寂しさすら覚えてしまう。
俺だって普通の学生のように体を動かし、友達と登下校を共にして、放課後に街へ出かけたい。
実際それに付き合ってくれる友達もいる。
でも、俺の心臓が小さいせいで出来ない。
そんなもどかしさと一抹の寂しさを抱えて、今日も俺は代わり映えのない日々を送っていた。
そう、今日までは……。
◆
——ホームルームが終わり教科書やノートを鞄に詰めていると「今日、部活は?」という声や「一緒にカラオケ行こうぜ〜」という声が聞こえてくる。
放課後になれば必ずと言っていいほど聞こえてくるそんな声。
はっきり言って慣れてしまったが、やはり寂しさはいつまで経ってもなくならない。
この時間になると仕事を抜け出した父さんが迎えに来ているはずだから、寂しさが大きくなる前にさっさと学校を出てしまおう。
そう思い鞄を背負おうとしたとき「きゃっ」という小さな悲鳴と共にバサバサッと何かの落ちる音がした。
見れば床にはプリントや教科書類が散らばっていて大惨事。
隣の席の
「大丈夫か?」
声をかけながら咄嗟に加勢すると、朝比奈は申し訳なさそうにしながら「あっ、うん。ごめん、ありがとう」とだけ言ってまた黙々と落としたプリントを集め始める。
周りは会話に集中していて気づいていないのか、はたまた俺が加勢に入ったから大丈夫だと思ったのか、結果二人でそれらを拾うことになった。
……気まずい。
相手は学校一可愛いと噂される程の美少女。
ゆえに授業で交流する時に言葉を交わすことはあっても、それ以外で話したことはない。
というか、マジで可愛すぎて話しかける勇気がない。
今回は頭よりも先に体が動いてしまったから仕方ないかもしれないが、よくよく考えてみればこのくらい一人でも拾える。
どうして加勢してしまったのだろう……。
「……み、見られたくないものとかはないか?」
気まずい雰囲気に耐えられなくなって思わず言葉を発してしまったが、教科書やプリントはほぼ全て拾い終わっていた。
にも関わらず今更こんな発言とか動揺し過ぎにも程があるだろ、と心の中で自分にツッコむ。
「多分、大丈夫」
「わかった……ほら、これで最後」
「ありがとう。ごめんね、手伝わせちゃって」
プリントを朝比奈に手渡しようやく気まずい時間が終わったと顔を上げれば、そこには申し訳なさそうに苦笑する彼女の姿があった。
大きな二重の瞳に整った顔立ち、綺麗な黒髪ロングからは如何にも清楚という雰囲気が感じられる。
表情も綿毛のように優しく、女子に苦手意識のない俺にすら、その全てが心を萎縮させる凶器だった。
にも関わらず意識しないと目が離せなくなってしまうほどの美貌に、突っぱねるように目を逸らす。
「あ、あぁ」
かろうじて彼女の言葉に相槌を打つと、いたたまれない気持ちを胸に抱きながらそそくさと教室を後にした。
◆
「今日は出てくるの遅かったな」
帰路の途中、車を走らせていた親父が唐突に口を開く。
「あぁ、友達を手伝ってたら遅れた」
友達と言えるほどの関係かどうかは分からないが。
「何を手伝ってたんだ?」
「教科書とかプリントとかを落としちゃったから、拾ってた」
「そりゃあ友達さん災難だったなぁ」
親父に話す中で、先程の出来事を思い出す。
高校に入学してから約半年。
朝比奈の美貌にも慣れてきたかと思っていたのだが、いざ面と向かうとダメだった。
しかもあんな近距離で目を合わせるとか、ほとんどの男子なら耐えられないだろう。
俺が彼女の美貌に慣れる日は果たして来るのだろうか。
「どうした? なんか浮かない顔だな」
思考から戻ってくると、親父が運転しながら横目で俺を見ていた。
「別に、なんでもない」
「抱え込むのはお前の悪い癖だぞ。些細なことでもいいから、父さんに話してみたらどうだ?」
「いや、今回のは本当になんでもないから」
「そうか? 隣の女子が可愛すぎてどうしようとか、そんなのでもいいんだぞ?」
「……親父の脳内はお花畑かよ」
見事に言い当てられて唖然としそうになったが、なんとかツッコミに準じられた。
親父はボケたつもりだったらしく、俺のツッコミを嬉しそうに「はっはっは」と笑い飛ばしてくれたのは幸いだった。
妙に勘が鋭いのは、相変わらず親父の怖いところである。
そんなこんなで車が止まり、家に着いたことを知らせた。
「あっ、そうだ」
同時に親父が言葉を零し、一言。
「父さん、再婚することになったから」
「…………は?」
これには流石に唖然とせざるを得なかった。
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