勇者と魔王

 暗い城の奥深く、勇者と魔王が戦っていた。


「ふふふ……人間にしては中々やるではないか」

「今日こそ貴様を倒してやる!」


 勇者は剣をかまえて踏み込み、必殺の一撃を叩き込んだ。


「ヒーロースラッシュ!!」

「ぐおおおお!?」


 勇者の一撃は魔王の腹部をえぐり、吹き飛ばした。


「お、おのれ……」


 魔王は断末魔と共に床に倒れ、動かなくなった。

 膝をつき、剣を床に立てて肩で息をする勇者。


「やったのか……?」



 その時、ありえない声が背後から聞こえた。


「ふははは、馬鹿め!」

「何!」


 勇者が振り向くと、そこには魔王が無傷で立っていた。


「何だと……、おまえは今確かに……」

「馬鹿め! それはワシの弟だ!」

「くっ……」


 魔王は口元を吊り上げるように邪悪な笑みをうかべた。


「今のおまえにはもう一度必殺剣を使うだけの力はあるまい……終わりだ!」


 大きな力が魔王に集まっていく。勇者は覚悟を決めて剣を構えて踏み込み、必殺の一撃を叩き込んだ。


「ヒーロースラッシュ!!」

「ぐおっ! ……馬鹿な!!」


 勇者の一撃は魔王の胸部をえぐり、吹き飛ばした。


「お、おのれ……」


 魔王は断末魔と共に床に倒れ、動かなくなった。

 膝をつき、剣を床に立てて肩で息をする勇者。


「やったのか……?」



 その時、ありえない声が背後から聞こえた。


「ふははは、馬鹿め!」

「何!」


 勇者が振り向くと、そこには魔王が無傷で立っていた。


「何だと……おまえは今確かに……」

「馬鹿め! それはワシの父親だ!」

「くっ……」


 魔王は口元を吊り上げるように邪悪な笑みをうかべた。


「おまえにはもう必殺剣を使うだけの力はあるまい……終わりだ!」


 大きな力が魔王に集まっていく。勇者は覚悟を決めて剣を構えて踏み込み、必殺の一撃を叩き込んだ。


「ヒーロースラッシュ!!」

「なっ……あうっ!」


 勇者の一撃は魔王の頭部をえぐり、吹き飛ばした。


「そんな……」


 断末魔と共に魔王は床に倒れ、動かなくなった。

 膝をつき、剣を床に立てて肩で息をする勇者。


「やったのか……?」



 その時、ありえない声が背後から聞こえた。


「ふははは、馬鹿め!」

「何!」


 勇者が振り向くと、そこには魔王が無傷で立っていた。


「何だと……おまえは今確かに……」

「馬鹿め! それはワシの妻だ!」

「くっ……」


 魔王は口元を吊り上げるように邪悪な笑みをうかべた。


「いくらなんでも必殺剣を使うだけの力はもうあるまい……終わりだ!」


 大きな力が魔王に集まっていく。勇者は覚悟を決めて剣を構えて踏み込み、必殺の一撃を叩き込んだ。


「ヒーロースラッシュ!!」

「痛いよー!!」


 勇者の一撃は魔王の全身を吹き飛ばした。


「痛いよ、ぐす……パパ」


 断末魔と共に魔王は床に倒れ、動かなくなった。

 膝をつき、剣を床に立てて、肩で息をする勇者。


「……?」



 その時、ありえない声が背後から聞こえた。


「ふははは、馬鹿め!」

「何!」


 勇者が振り向くと、そこには魔王が無傷で立っていた。


「何だと……おまえは今確かに……」

「馬鹿め! それはワシの息子だ!」

「………」



 魔王はふとまわりを見わたした。


「これでワシは一人か……」


 魔王の攻撃力が下がった。

 魔王の防御力が下がった。

 魔王の魔法攻撃力が下がった。

 魔王の魔法防御力が下がった。

 魔王は床に膝をついた。


「好きにしろ……」


 世界に平和が戻った。

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