試験放送
〇
マシンガン大名
「殿ーッ! 殿ーッ!」
塵一つ無い廊下を、家老の
「ご家老、いかがなされぐあッ」
流れ弾で
武器に意思は無く、行く手を阻む物を区別したりしない。
それは扱う人間のやるべき事だ。
「殿ーッ!」
家老の斎藤太郎左衛門はマシンガンを乱射しながらひたすら走る。
「騒がしい! 何事であるか!」
城主の
「殿ッ! 大変でござぐおッ!」
前田九郎兵衛知房のマシンガンが放った弾丸が、斎藤太郎左衛門の身体をえぐり、家老であった人間を肉塊に変えた。
そこへ
「殿ッ! 敵襲です!」
「何い! 者どもであえッ! であぐあッ!」
引き続き火を吹いていた大野継之助秋儀のマシンガンの弾が何発か前田九郎兵衛知房に命中した。
廊下を赤く染めるおびただしい出血。重態の前田九郎兵衛知房はそれでもなおマシンガンを乱射しながら城主としての勤めを果たそうとしていた。
「ぬうう、皆の者……守りを、守りを固めよ!」
前田九郎兵衛知房の号令で、家臣達がマシンガンを乱射しながら城主の下に集まった。
「ぎゃあ!」
「ぐあッ!」
「ぬぐッ!」
「があッ!」
狭い空間にマシンガンの発射音と命中音がこだまする。
城は未曾有の大混乱におちいり、命脈は早くも尽きようとしていた。
前田九郎兵衛知房は大量の失血で蒼白となった顔を上げると、決意をこめた目を生き残った臣下に向けた。
「もはやここまで……介錯をせい!」
「はっ」
前田九郎兵衛知房はしっかりとした動作でマシンガンを掴むと、いつものように引き鉄を引いて引いて引きまくった。
「それでは殿……介錯つかまつぐあッ」
最後の臣下も力尽き、前田九郎兵衛知房は一人生き残ってしまった。
「うぬう……ならば私一人だけでも戦い、前田家の意地を見せてくれよう!」
前田九郎兵衛知房はよろけながら立ち上がると、城門に向かって歩きながら景気付けにマシンガンを乱射。庭の石に当たって跳ねかえってきた弾が命中して死んだ。
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