第51話 YOUは何しに魔界へ?

 夜空、星の海の中を高速で飛び去るスカイガーディアン。

 脳内に送られてくる地上と空の映像を見ながら俺はベッドに横たわっていた。

 今度戦闘機か何かで空を飛び回ってみてもいいかもしれない。

 ミーニャを連れて行ったら喜んでくれるかな。

 そんな事を思っていると、ちょうど俺とブルーリバー軍が交戦した場所を通り過ぎた。

 少し巡航速度を落とし、カメラを地表に向けてズームする。

 そのまま魔界の境界に向けて飛んでいくと、平原に大きな野営地を見つけた。

 ぽつぽつと篝火が焚かれ、いくつものテントが展開されていた。

 規模から言ってブルーリバー軍に間違いない。

 寄り道せずに真っ直ぐ帰ってくれているようだ。

 

『キュイキュイ』

「……ん?」


 スカイガーディアンが何かを見つけたかのように音を鳴らすと、脳内に別の映像が映し出さた。

 それはブルーリバー軍の野営地から二キロほど離れた地点に灯る、三つの明かりだった。


「ズーム」

『キュキュ』


 松明の明かりの上を旋回しながら、ズームで送られてきた映像。

 そこには--。


「……何であいつらがここに」


 二つのテントが展開されており、テントの前に篝火が灯り、その近くに焚き火が焚かれている。

 その焚き火を囲んでいる人達の中に、テイル王国兵士の姿があった。

 何かを話しているようだがその内容までは流石に聞き取る事はできない。

 王国兵がなぜ魔界に来ているのかは分からないし、見るからに人数が少ない。

 このまま進んだとしても、ブルーリバー軍と衝突するようなコースではないし、近くに村や集落があるわけでもない。

 魔界の調査……?

 これはクレアに報告した方がいいだろう。

 俺が勝手な行動をするわけにもいかないしな。

 だがもう遅い時間だ。

 クレアの魔王業は朝八時から夜の二十一時まで。

 それ以外の時間、クレアはどこにいるか分からない。


「仕方ない。明日まで様子を見るか。スカイガーディアン、交代だ」

『キュキュ』

「サモン:Tホーク」


 コザ達にぴったり張り付かせるにはスカイガーディアンよりTホークの方が適任だ。

 Tホークをスカイガーディアンのそばに召喚し、入れ替わりでスカイガーディアンをリリース。

 本来なら航続距離など色々と制限があるTホークだが、こちらの世界ではそんなものはない。

 

「Tホーク、また連絡するまでそいつらを見張っていてくれ」

『ミミミ』


 〇


 次の日、俺は朝一でクレアに昨日の件を報告した。

 しかし--。


「少人数で何をしにきたのか知らんが放っておいてもよいじゃろ。クロがどうしてもと言うのなら、お前さんが直接出向いてもいいじゃろうな。行きたいか?」

「……俺は……あの人達がどうなろうと知ったことではありませんが……」

「じゃが気になるのじゃろう? 顔に書いてあるぞ」

「それは……」

「よい。環境が変わった上で対話をすればまた違ったなにかを得られるやもしれん。時には嫌な事と向き合うのも立派な事じゃて」

「わかり、ました」

「じゃが一人で行かせるわけにはいかん。カルディオールを護衛につかせよう。自室でしばし待機しておれ」

「わかりました。お心遣い感謝いたします」

「かっかっか! 気にするでない、お前さんは我の大事な部下じゃ。何かあってからでは遅いからな」

「はい。ありがとうございます」


 そして自室で待機すること三十分、ノックの音と共にカルディオールが現れた。


「はぁい。緊急らしいじゃなぁい? さっさとイっちゃいましょぉ」

「よろしくお願いします」


 カルディオールは普段の服装とは違い、初めて出会った時のように四天王バージョンの衣服を纏っていた。

 全身に闇を着込んだような漆黒のドレスローブには所々金糸で紋様が編み込まれている。

 首から下げたネックレスのトップには、目玉のような小さな宝玉が付いていた。

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