第30話 探し物は何ですか? 見つけにくい物ですか?
人界の各国がそれぞれの思惑を秘めて動く中で、魔界ではブルーリバー軍が進軍していた
「報告です。人間軍の進行が思ったよりも遅く各地で何かを探しているような動きを見せております」
「ふむ。変じゃのう」
魔王クレアは玉座に座り、報告書を眺めながら首を傾げる。
ブルーリバー軍の現在地は魔王城からそう近くはない。
今のままの進軍速度でいけば約四日といった所だろう。
探しているとしたら何を探しているのか。
しかも大量の兵を率いて。
クレアの記憶の中から報告のあった人間軍の旗印を思い出す。
魔界境界に隣接するブルーリバー皇国、境界で何度か魔族と小競り合いを起こしている国。
脅威だとは思っていないし、積極的にせめてくるわけでもない。
どこぞの積極的に攻めてくる国とは違って放置していても問題のない国だったはずだ。
それがなぜ--。
「そうですね。何かが変です。侵略戦争をしかけるにしても、進路周囲の砦などは無視し、ただ直進と散開を繰り返しております」
「被害はどうじゃ?」
「人間軍の進行上にあった村などは人間軍が到着する前に避難を完了しています。略奪にあってはいますが、それも食料などの軽微なものだけだという報告があがっております」
「ふぅむ……解せぬな」
略奪行為に走るのはまぁいい。
良くは無いが食料程度ならくれてやっても問題はない。
略奪された村にこちらが配給に回ればいいのだから。
魔王城には備蓄している食料が山ほどあるので、村の三つ四つに食料を渡したとて困りはしない。
魔族の命が散ったのならそれは事を構えねばならないが、向こうに敵対の意思が見えないのにこちらが仕掛けるというのは道理が通らない。
魔族の中には「そこを通ったのなら戦争だ」などと因縁をつけてくるような種族もいるが、幸いな事にブルーリバー軍が進んでいる地域にはそのような種族はいない。
「砦に詰めている兵達からも攻撃をしかけるべきでは無いと判断し、監視のみに留めているとの報告もあります」
「それでよい。無駄に事を構える必要はないからの」
「一部から上がっている戦闘行為の許可を求める声は相変わらずですが」
「捨ておけ。奴らはただ遊びたいだけじゃ。魔界でのいざこざならともかくな。魔族と人族は違うんじゃから」
「は」
「しかし何を探しておるんじゃ……?」
ブルーリバー軍の数はおよそ五万。
五万の兵というのは中々に壮観なもので、たとえ人間だといえど魔族にも多少のプレッシャーはかかる。
頑強な魔族と違い、脆弱な人間は一撃で命を散らす。
だが人間の恐ろしさはその数にこそある。
いくら頑強な魔族とて、五万の軍勢に数十人で対抗しろと言われたらそれは無理な話だ。
仮に進路近辺にある砦をターゲットにされたら増援を送らねばならないほどには、警戒しなければならない。
魔族は人間と違い、ぽんぽん子供を産めるものではない。
三、四年に一体産まれればいいほうであり、作ろうと思っても周期が違う。
毎年毎年準備万端な人間とは体の作りが根本的に違うのだ。
「接触してみるかのう」
「は。では?」
「うむ。クロードとその他、詰めている人間を集めよ」
「御意」
魔王城にはクロード以外の人間も数人存在する。
もちろんクロードのような魔族の血が混じっているものではなく、純粋な人間だ。
魔界に踏み込む人間は様々な事情を抱えた者が多い。
そういう者達は大抵一人か、多くても三、四人程度で魔界に訪れる。
魔王城に詰めている者や、魔界の村でのんびり暮らしている者もいる。
魔王城に詰めている者は本人の希望であったり、クレアの要望であったりする。
優秀な人材であればクレアが断ることはない。
「連れてまいりました」
「ご苦労。すまんな、いきなり呼び立ててしもうて」
兵が連れてきたのはクロードを含め四人、ローブを着た魔導士風の女性が二人と、筋骨隆々な戦士風の男だった。
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