第22話 戦争こそ人生
司令官室でクレイモアと二人、資料に目を通しているとふと気になる資料を見つけた。
それには魔界での紛争や内戦、領地争いが時系列と発生地ごとにまとめられているものだった。
魔族には好戦的な種族が多いのだけど、それにしては戦争をしている箇所が多すぎる。
半年に一回は複数箇所で戦争が起きている。
「気になるか?」
「はい。いくらなんでも争いすぎじゃないですか?」
「それが魔界なのだよ」
「どう言う事ですか?」
「魔界はな、簡単にいえば戦いの絶えない所だと言うことさ」
「戦いの絶えない……所」
「そう。どこそこの領主が気に入らない。どこそこの奴が畑を荒らした。どこそこのやつの目が気に入らない。どこそこのやつに騙された。そんな理由で戦争が始まる」
「まさか……!」
「私が嘘を言うとでも?」
「そうじゃないですけど、目が気に入らないとかチンピラみたいな理由で……」
「だからそれが魔界なのだよ。しかし絶えず戦争が絶えない事により経済は周り、血気盛んな奴らの血抜きになってる。犯罪も少ないしな」
「そうなんですか……? でも戦争ばかりだと疲れて国力も……」
「魔界はクレア様が統一している。国力が下がるなどはありえんよ」
「でも、たくさん死ぬのが戦争じゃないですか」
「ふふ、クロード。魔族は簡単に死ぬか?」
「あ……いやでも」
クレイモアの言いたい事はわかる。
魔族の体は人間なんかとは比べ物にならないくらいタフで強靭だ。
でも強靭な肉体同士がぶつかり合えば必ず傷はつくはずじゃないのか。
「それと、期間をよく見てみろ」
「期間……あ」
確かに戦争は至る所で起きているのだが、その期間が驚くほど短い。
中には長い期間争っているところもあるが、大体の戦争が一、二ヶ月で終わっている。
そして死者数がめちゃくちゃ少ない。
三ヶ月の戦争で死者二十人て……どういうことだよ。
「それにな、殺さないほうがまた、戦えるだろう?」
「は?」
俺の疑問に答えるようにクレイモアが言った。
「好敵手と戦って、殺して決着をつけてどうする。次にまた好敵手と巡り逢えるとは限らない。ならば殺さずに負けたと言わせればいい」
「な……なんですかそれ」
「言ったろう? 魔族は戦いあってこそだと」
「むちゃくちゃですよ……」
「そう、無茶苦茶なのだよ。だから頻繁に領地争いをしても領主が切り替るだけ、その時の戦いに勝った者が領主となる。なので三代前の領主が再び領主の座を奪い返す、と言ったこともざらにある」
なんだそれは。
意味がわからないぞ。
下克上や謀反がまかり通る戦国時代のような有様じゃないか。
織田信長もびっくりだよ。
「だから戦場での相手の顔が顔見知りだということもざらにある。戦いを求めて戦場から戦場に渡り歩く狂戦士のような輩もいるしな」
「うへぇ……」
「だから魔王城もよく襲撃を受けるぞ? 今は平穏だがな。クロードが来る一週間前までは戦争してたしな」
「魔王に喧嘩売る人いるんですか」
「いるいる。大勢いるよ。それこそついこの前まで戦争していた領主達が手を組んで攻めてくる事もある」
「えええ」
「だがそれを凌いでこその魔王軍だ。魔王軍は魔界一であらねばならない。ゆえに私達は常に争いを求めているのだ」
「マジ魔界ぱねぇっす」
「はっはっは! そうだろうそうだろう! ぱないだろう!」
「ある意味尊敬しますよ……ほんと」
まじでどういう神経してるんだよ。
昨日の敵は今日の友、みたいなスタンスなんだろうか。
「それは反逆にはならないのですか?」
「ならないな」
「なんでです?」
「強い者が正義だからだ」
「えっと?」
「強ければ勝ち、弱ければ負ける」
「まぁ、そうですね」
「魔王軍を、四天王を、クレア様を倒そうとしている輩は多い。だがその者らを裁くことはない」
「何でですか?」
「敵は多い方が面白いだろう?」
あーだめだこりゃ。
完全に戦闘狂ですわ。
魔王城の、というより今まで知らなかった魔界の裏側を知ってしまった。
下克上に失敗しても裁かれる事はなく、それゆえに何度も下克上を繰り返す。
負ければ「出直してこい」ですむ戦争。
平和すぎるだろ。
いや、争いだらけの魔界を平和だ、というのは違うと思うけど……死者が限りなく出ない戦争。
理想的ではあるが、なんかなぁ。
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