第19話 ガーデニングのお仕事

 食堂で三日間の勤務を終え、今日は大地のゴリアテがいる緑化推進部でのお仕事だ。

 今日も花壇の世話をして水をあげて、というサイクルかと思えばどうやら違うようだ。


「今日から本格的に指導を行う」

「はい」

「緑化推進部の基本的な仕事として、草花や樹木の世話があるのはこの前やったな」

「はい」

「クロードにはこれから魔王城敷地内にある植物の名前を全て覚えてもらう」

「……まじですか」

「まじだ」

「ちなみに何種類ほどあるのですか……?」

「なに、たったの二百ほどだ。さして多くない」

「二百ですか。それなら覚えられそうです」

「うむ、目録や用途、管理に必要な事はこのマニュアルに書いてある。時間を見つけて読み進めていくといい。掛け持ちは大変だろうが、なるべく早く覚えてくれると嬉しい」

「わかりました。頑張ります」

「無理はするなよ? 睡眠時間はきっちり取り、食事もしっかりとだ」

「心得ています」

「では仕事に取り掛かろう」


 一日目はこの前周った花壇や生垣などを再度巡っていき、より細かい説明がされていった。

 俺はそれを逐一メモに書き殴っていく。

 どうやら魔王城敷地内に植えられている植物はほぼ全て侵入者用の対人トラップなんだそうだ。

 可愛らしい寄せ植えの花壇は幻惑効果のある花々だったり、大きな多肉植物は人を飲み込む食人植物だったりする。

 樹木は生きた木、ツリーマンが植えられていて触手のような蔓が侵入者を絡めとって絞め殺してしまう。

 夜になればマンドラゴラやキラートマト、ポイズンエッグプラントなどの植物系モンスターが徘徊。

 実に様々な品種が植えられているために、土の配合やら肥料やらもそれぞれ違ってくる。

 ここらへんは王国にいた時にやっていた、個体別に作るブレンドフードに似た所があるので案外すんなり覚えられそうだ。

 それにどれも俺一人でやる仕事じゃないし、他のスタッフさんと協力してやっていけるから全然苦じゃない。

 けど慣れないとトラップに引っかかったり、食人植物に頭をかぷっとやられたりするらしいので、注意が必要だな……。

 研修期間のような三日間の勤務を終え、次は闇のカルディオールの職場だ。

 色々な所から回ってくる書類を捌いたり、経費精算に人事異動書類、有給発行などなど。

 息が詰まってきたらジムでトレーニングしてリフレッシュも出来るので座りっぱなしということもない。

 コーヒーは飲み放題だし。

 失礼かもしれないが、もしかしたら一番楽な仕事なのではとすら思う。

 スタッフは日頃トレーニングに励んでいるせいなのかみんなマッチョだし、マッチョな魔族がペンを握ってカリカリと書類作業をしているのはどこか微笑ましい。

 ゴリアテと同じく最初の三日間は研修のような説明と簡単な書類作成などをやらされた。

 繁忙期になると書類の量が倍になるらしいけど、魔王城の繁忙期って一体何がどうなったら繁忙期になるのだろう、とは思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る