第17話 テイル王国にて4
テイル王国玉座の間にて--。
「コザ・ディクトル司令官」
「は……!」
モンスターの反乱事件から二日後、ネクソン局長により勾留されていたコザは玉座の間に連行された。
「此度の件、非常に残念に思う」
「……は」
「お前はしてはならぬ事をしでかした。その認識はあるか?」
「……はい」
「そうか。経緯は全て聞いた。お前はクロード・ラストに度重なる暴言を吐き、あまつさえ抹殺しようとした。相違ないか」
「ありません……!」
「コザよ。面をあげい」
「は!」
コザは心の中で少し安堵していた、王の口調がいつもと変わらない。
それはダラスやネクソンが言うほどの事では無いのではないかと。
コザは王の次の言葉を待つべく顔を上げたが、自分の考えが間違っていた事を知る。
「この馬鹿者が!」
「がっ!」
顔を上げた途端、正面からの衝撃でコザは背後に吹っ飛ばされた。
何が起こったのかと目を白黒させていたコザだが、王の手元に浮かぶ魔法陣から、あぁ自分は王の魔法を食らったのだと理解した。
そして憤怒に染まる王の顔を見た。
未だかつて見たことの無い怒りの形相。
憤怒の王はその怒りを隠すこともなく、コザへと向ける。
「貴様は! 貴様はぁ!」
「あぐっ! がはっ!」
王の手元からは次々と人の頭部程もある氷の礫が射出され、体を丸めたコザを打ち据えていく。
玉座の間に控えているのは事情を知るダラス、アスター、ネクソンのみ。
その誰もが王の行為を止めようとはしなかった。
「はぁっ……! はあっ……! 貴様はテイル王国を滅ぼす気か! ラスト家に罵詈雑言を吐き、あまつさえ手放すとは! 愚か者が! 恥をしれ! ラスト家は子爵ぞ! 貴様のような木っ端軍人如きが何を偉そうに……!」
「クク……ククク……」
「……? 何がおかしい!」
丸くなったコザは低い声で含み笑いを漏らした。
痛めつけられて気でも触れたかと、眉を顰める王。
「ハーッハッハッハ! 王よ! そしてダラス、ネクソン、アスターよ! 貴様らはもうここで終いだ!」
「何をふざけた事を――」
コザの高笑いが玉座の間に響くと、扉が音を立てて開かれ、そこから何人もの兵士が入り込んで来た。
「貴様ら何の真似だ!」
「これはこれはダラス総司令に陛下、随分とご機嫌斜めですな」
「一体どうしたのですかな?」
「貴様らは機動歩兵大隊長のセコイ中将に騎兵大隊長のデキヌ中将……! 何の真似だと聞いている!」
「まぁまぁ、何はともあれ――総員ガイア国王ならびにダラス総司令とその他二人を捕らえろ!」
「「「はッ!」」」
「貴様ら正気か!?」
コザの号令で玉座の間に集まった兵士全員が王達に剣を向け、四人は抵抗虚しく捕縛されてしまったのだった。
「気分はどうだ? 元王よ」
「コザ……! 貴様まさか!」
「そのまさかよ。現時刻をもってテイル王国国王は退位、代わりにこの俺が率いてやる。総司令……いや、総統閣下と呼べ!」
この日、ガイア国王は様々な罪を着せられ王位を剥奪、そして第一方面軍司令官であったコザが大総統に着任した。
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