第13話 テイル王国3
「あーあ……まぁそうなるよなぁ」
魔王城自室にて、テイル王国の軍事施設に飛ばしたスカイガーディアンから送られてくる映像をのんびりと見る。
もちろん送られてくる映像は脳内だ。
至る所で煙があがり、至る所が破壊されている。
モンスター達の姿は既にどこにもなく、送られてくる映像はモンスター達と兵士達との激しい戦闘の爪痕だけ。
だけだが、かなりの被害が出ている事が容易に想像できる。
「だから言ったのにな。ま、自業自得だろ」
スカイガーディアンに王都上空を旋回させるよう指示を送る。
『キュイッキュイッ』
「いやだから絶対そんな鳴き声しないだろって……カメラの音かな?」
王都の各所からも煙は上がっていて、大通りや路地裏、家屋や商業施設、あちこちに被害の跡が見える。
「あ、ゴーレム活動停止してるわ……完全に像になってるな」
『キュッキュッ』
歩く姿勢のまま止まっているゴーレムや、段差に座り足の上に手を置いて考えるようなポーズのゴーレム、仁王立ちしてどこかを指差し「大志をいだけ」といわんばかりポーズで固まっているゴーレムなど様々だが、見える範囲で動いているゴーレムは一体もいない。
ゴーレムの活動源はあの宝珠なのだから当たり前なんだが、よく三日も持ったな。
「ん? 土煙……あぁ、グレイトウォーホースの群れか」
土煙をあげながら大通りを爆走しているグレイトウォーホース達はレースさながらに王都市街地を周回している。
先頭集団と後続集団の差はそこまでない。
おっと先頭集団から二頭飛び出した!
その差は一馬身、二馬身、三馬身、ぐいぐい離していく!
トップ争いはこの二頭、トンデモネーヤとソレミタコトカの二頭だ!
激しいぶつかりあいだ!
なんだよ。あいつら随分楽しそうにやってるな。
グレイトウォーホースは走る事が大好きな種族だ。
戦闘や演習がない限り、ずっと厩舎に繋がれる生活を続けてきたあの子達からすれば、今が一番最高に幸せな瞬間だろう。
『ぎょあ、ぎょあ』
「ん? なんだ? カメラに羽……あぁ、グリフォンだな?」
王都上空高度約七千メートルを周回するスカイガーディアンに近付けるといったらグリフォン以外考えられない。
元々高高度を飛びまわるグリフォンだが、人間がその高度に耐えられるわけもなく飛行高度を制限していた分、伸び伸びと羽ばたく事が出来るだろう。
カメラを移動させると実に楽しそうに空中遊泳をしているグリフォン達が見えた。
サイレントウルフ達の姿が見えないが……あの子達は元々ひっそりこっそり、人目のつかない場所で暮らす種族だし、どこかにあるサイレントウルフのベストプレイスを見つけに旅立ったのだろう。
元気でやれよ。
『アォーーン』
どこからともなく聞こえてきたサイレントウルフの遠吠えに、自然と口角が緩む。
街のそこかしこに、軍で使役されていたモンスター達が元気そうにしている。
人で賑わったテイル王国の栄華は既に無く、今は野生にかえったモンスターが遊びまわる巨大なアスレチックに変貌してしまっていた。
ま、どうにか仲良くやってくれよな。
コザ司令官殿。
これはあんたがたが招いた結果だ。
親子三代に渡り尽力してきたラスト家を手放した結果だよ。
アスター将軍やネクソン局長、ダラス司令にはちょっと悪いことしたなとは思っている。
けどアスター将軍には辞めることも伝えたし、なによりあの現場にいた。
きっと便宜を図ってくれるだろう。
グレイトウォーホースを使用していた騎兵隊やグリフォン空戦隊は事実上壊滅、解散だろうし、ゴーレムをベースに展開されていた砲術部隊も強固な壁を失い弱体化。
サイレントウルフとバディを組んで作戦を遂行する歩兵部隊も相方がいなくなり弱体化。
それ以外の部隊もそうだろう。
なんせ軍の全部隊に用途別に召喚したモンスター達が寄り添って、いや、手を貸していたのだから。
それをコザ司令は放り投げたのだ。
コザ司令や俺の事を散々コケにしてきた連中がどうなるかなんて知ったこっちゃないが……強く生きろよ。
「スカイガーディアン、おつかれさん。もういいぞ」
スカイガーディアンをリリースし、ゆっくりと目を開ける。
寝る前にシャワー浴びないと。
明日からは休み返上の修復作業がまっているのだから。
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