【祝!20万PV突破!】ブラックな王国軍から暗殺されかけた召喚士、前世の記憶が蘇り現代兵器も召喚出来るようになったので向かう所敵無しです
登龍乃月@雑用テイマー書籍化決定!
第1話 激務
「クロードさん、書類の期日は明日ですよ」
「あ、はい、すみません。でも他の書類とか雑務とかもあって……」
「それはそれ、これはこれですよね? そんなに多い書類では無いと思いますけど」
「……わかりました」
王城の総務人事室の扉を閉めてため息一つ。
今日で何日の連勤だろうか。
ひーふーみー……二十二連勤、か。
「おい、あれ」
「あぁ、たった一人の隊長さんだろ? 給料泥棒とかいう」
「そうそう。召喚士とか言ってるけど、召喚してる所は誰も見たことがないし、軍の戦闘訓練にも出てないらしい。毎日書類の山の上で寝てるだけらしいぜ」
俺の姿を見かけた兵士達が、わざと俺に聞こえるように喋っている。
「……チッ」
相手をするのも馬鹿らしいので新しく渡された書類を手に兵士達の前を通り過ぎようとしたが――。
「おっとすいません」
「うわっ!」
綺麗な足払いをかけられ、俺はそのまま廊下に倒れ、書類がバラバラと散乱してしまった。
「すいませんね隊長さーん」
「だっさ。普通避けるだろあんなの」
兵士達は笑いながらそのままどこかへ去って行った。
くそ、陰険な奴らめ。
散らばった書類を広いながらまたため息一つ。
「軍部の素晴らしい教育の賜物だな」
自分の部署に帰り、たった一つしかない事務机に山積みにされた書類を見てさらにため息一つ。
俺が所属しているのはテイル王国第一召喚部隊。
そして隊長は俺であり、隊員は俺しかいない。
王国軍唯一の召喚士、それが俺の一応の肩書きだ。
どうして隊員が俺しかいないのか。
そんなのは簡単だ。
この国の召喚士は俺しかいないからだ。
テイル王国は世界でも珍しい、モンスターを軍に導入している国だ。
軍馬として採用されているのは、通常の馬よりも強靭で力強いモンスターのグレイトウォーホース。
索敵やトラップの発見にサイレントウルフ。
王国きっての精鋭、空戦隊に使用されているのはグリフォン。
壁となり質量兵器となるゴーレム。
などなどだ。
モンスターが加わる事で対人、対モンスター、対魔獣戦闘の質が上がり、テイル王国は比類なき軍事力を手に入れていた。
モンスターの入手ルートは極秘。
トップシークレット。
その実態は我がラスト家が親子三代に渡りモンスターを召喚し、定着させてきたというものだ。
だが悲しいかな、その事実を知るのは軍部でも極僅か、一握り、というより俺以外には国王陛下、公安局長とモンスター部隊統括司令、俺の直属の上司である将軍、この四人しかいない。
書類の山で寝ているだけ、まぁ確かに事実だ。
だが休みなくモンスターが定着しているかのチェック、運用に関する書類、マニュアル作り、フードの配合などなどモンスターに関する多岐にわたる一切合切の仕事を俺一人に押し付けられ、睡眠時間を削って頑張ってんだ。
そりゃ居眠りもするわ。
おかげで目の周りは濃いクマに覆われ、ろくに食事も取れないから頬だってちょっとこけ始めている。
暗闇で自分の顔を見たらゾンビみたいになってて笑ったよ。
残業手当もなし、毎月の給料は低い、有給もない、冠婚葬祭手当てもない、真実を知らない兵士達からは後ろ指をさされ、事務のお姉さん達からは仕事が遅いとどやされる。
祖父の代で承った子爵の位ですら今は埃を被っている。
陛下はこの現状を知っているんだろうか?
局長は部署が違うから知らないかもしれないけれど、統括指令と将軍は知っていてもいいんじゃないか?
それともただ単に人手不足とか?
数年前まではここまで酷くなかったんだけどなぁ。
「あああもう無理! やってられっか! くそ! こんなブラックな仕事辞めてぇええ!」
考えれば考えるほど、俺がこの国に貢献するメリットがない。
だったらいっそ退職して田舎で農家に転身したほうがまだマシだ。
けど親子三代に渡っての業務に俺が匙を投げてもいいものなんだろうか。
書類の海の中で頭を抱えていた時、ノックの音が聞こえ扉が無遠慮に開かれた。
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