まだ、どこへ

@ishuunow

第1話

高校2年。夏。


「ちょっと!まだ寝てんの!?早く降りてきな!」

お母さんの声で飛び起きる。スマホの画面を見ると6時20分と表示されていた。

「やばい!電車間に合わないじゃん!」

滑るように階段を降りる。朝食を食べる暇はない。

「いってきます!」

「いってらっしゃーい」

駅についたら電車はもう私を置いて行っていた。ふと横を見ると

「神崎?」

「あ、森本じゃん」

隣の席の男子がいた。神崎裕也。なにかと一緒になることが多い。小学、高校が同じで今はクラスと班が同じだ。帰る方角も、電車も、同じ。だけどあまり話さない。お互いシャイではない。ただ、お互い興味がないだけ。

「おい、何してんの?次の電車乗んないと」

「あ、ほんとだ。行かないと」

神崎が教えてくれなかったらだいぶ遅刻するところだった。ピンチのときはちゃんと助けてくれる。

「ねえ、もう遅刻は確定?」

「当たり前だろ」

冷たい。多分彼は、こういうところがモテない原因。

「どうする?ニセの遅延証明書でも見せる?」

「アホか」

返答に無駄が無さすぎる。ていうか、なんで彼は自分から話を始めないのよ。きまずいでしょ。学校につくまでこの沈黙?耐えられない。何を話せばいいのか…。困ったときはこれを聞くしかない。

「彼女いるの?」

「うん」

え!?いるの!?初耳…。よし、話が盛り上がりそうだ。

「誰?」

「言わない」

「なんでよ。じゃあ当てるね。晴菜?蓮歌?」

「他校」

 他校かいな。わかるわけないじゃん。

「森本は人脈狭いから誰かわかんないだろうな」

むかつく。モテないと思っててちょっと下に見てたのに私より上だったんかい。あ、私に冷たいのは彼女がいるからだったからなのね。


「やば、斎藤先生だ」

「見つかっちまったよ。走るぞ」

そのスピードについていけるわけなくない!?ちょっとくらい待ってよ!

「おい!遅刻だーー!!!」

そんな声は無視して教室に入る。担任がこっちを見て口を開く。

「遅延かー?」

「いえ、電車に乗り遅れました」

「そっかー、次から気をつけろよー」

生徒に理解があるのか興味がないのかわからないけどうちの担任はなにかと甘いから気が楽だ。もし斎藤先生が担任だったら寒気がする。

「梨華ー、なに神崎と一緒に遅刻しちゃってんのさ。怪しいなあ」

「なわけ」

「なによ、私達は友達だから~とか言っちゃうの?」

「友達でもないよ」

夢那はニヤニヤしながら私のそばを離れた。

恋愛。しばらくしてない。中学2年生のときに彼氏ができたけど幼かったこともあって、恋愛らしい恋愛はできてない。彼のことは今もそれなりに思い出しはする。会いたいとは思わない……ことも、ない


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